86枚の木製パネルから成るクルマ「SETSUNA」へのトヨタの“こだわり”とは?
“木製のクルマ”の全容を公開
4月12日~17日にイタリア・ミラノで開催される『ミラノデザインウィーク』にトヨタが出展するコンセプトカー「SETSUNA」は、クルマを新しさだけを追い求める工業製品として捉えるのではなく、「愛」が付く工業製品として愛着を持って労り手をかけて受け継いでいくことで、家族だけの新たな価値のある財(=時間財)になっていくとの考えを具現化したものである。
そんな「SETSUNA」には、このクルマの開発責任者である辻賢治氏らの想いが至るところに詰め込まれている。
【こだわり その4】用途に応じた木材の選定
コンセプトカーとは言えクルマとしての基本である、走る・曲がる・止まるといった性能を装備している。
そのため構成部品でもある木材も適材適所の樹種を選択した。木目の鮮やかさや趣き、材質の柔らかさから、外板は「杉」を採用した。フレームは、高い剛性を保つ「樺(かば)」、フロアは強度が高く、耐久性に優れた「欅(けやき)」、シートには、木肌がなめらかな「栓(せん)」を使用している。
さらに、SETSUNAは木目の美しさを表現すべく、「杉」の外板は、丸太の中心に向かって切断した柾目(まさめ)、丸太の中心から適度にずらして切断した板目(いため)の2パターンを製作している。柾目はほぼ平行に、木目が均等にはっきりと並ぶフォーマルな印象を与える一方、板目は木目が柔らかで、1本の木でも同じ木目はなく、趣きのあるフレンドリーな印象を与えてくれる。
【開発責任者 辻賢治氏からのメッセージ】
「SETSUNAは、幾世代にも亘って家族が『愛』を注ぎ込むことで、そのクルマが他の何にも替え難い価値あるものになっていく、クルマと家族の年輪のような持続的成長を願う、私たちのそんな想いを託したクルマである。木の魅力を活かしたクルマづくりの開発を進めるにあたり、宮大工・船大工など多くの知見を持った方々に直接お話を伺いに行ったほか、本コンセプトに共感いただいた住友林業(株)様には、木の構造等知識の共有はもとより、木材選択、加工技術・組み付け方法の提案など、早い段階から共同開発に加わっていただいた。また、木を材料にしながらも、運転フィーリングや乗り心地などクルマとしての基本性能を有するために、試作車を製作し評価していくなど、仲間とともに多くの時間と情熱をかけた。今回、こうした想いを込めてつくったSETSUNAを出展し、広くご意見を頂くことにより、本コンセプトをさらに昇華させることができると信じている。また、これらの中で特に共感いただけた考えや想いについては、未来のクルマづくりに織り込んでいけたらと考えている。」
【SETSUNA主要諸元】
全長×全幅×全高:3,030×1,480×970mm
乗車定員:2人
パワートレーン:電動モーター
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