レクサス 新型ES 海外試乗｜日本にも導入予定！ LEXUSが志す走りの質を具現化させた最新高級セダン(2/2)
- 筆者： 山本 シンヤ
- カメラマン：レクサスインターナショナル
標準仕様とFスポーツ、実際に乗った印象は随分と異なる
標準仕様のESはレクサスが志す“すっきり奥深い”乗り味を実現
では、実際に乗ってみたらどうだったのか？
まずは標準仕様のレクサス ESだが、心地よいダルさを持ちながらも正確性の高いステアリング系や操作に対して忠実な応答性、ビシーッとした直進安定性と素直なハンドリングのバランスなど、基本素性の良さはシッカリ感じられる。しかしLS／LCのように運動性能の良さを声高らかにアピールをしていない。そう、あくまでも「内に秘めた」と言う乗り味なのだ。そういう意味で言えば、全てのレクサスモデルの中で最も「すっきりと奥深く」が実現できているモデルかもしれない。
一方、快適性の部分はESが声高らかにアピールしている部分で、足の動きのスムーズさや段差を乗り越える際の衝撃吸収のいなし方、そしてストローク感を活かした乗り味は、語弊を恐れずに言えばLSよりも優れていると感じる部分もあったほど。
ただ、荒れた路面のザラザラした部分などは吸収しきれない部分も。レクサスでは価格的な問題から標準車はコンベンショナルサス、FスポーツはAVSと使い分けているが、性能を考えると標準車にもAVSを採用するべきだと思う。
Fスポーツは明確に異なるキャラクターに
一方、Fスポーツは標準車よりもステアリングはダイレクト感が引き上げられ、サスペンションはストロークを抑え引き締められたセットアップとなり、走りの良さを明確にアピールした乗り味だ。GS／ISのFスポーツがダルく感じてしまうくらい精緻なハンドリングと、硬めだがカドがないすっきりした乗り心地のバランスだ。と言っても、突出した物ではなく標準車の45度線上にシッカリと位置しているイメージだ。
ちなみにドライブモードで乗り味は変化するものの、モードが多すぎなのとモード毎の変化代（しろ）が少ないのが残念な部分でもあった。
実はLSを含め従来のレクサスは標準車とFスポーツの乗り味が拮抗しており、グレード選びは悩み所だったが、ESは標準車とFスポーツで明らかに乗り味は異なる。快適性を重視するなら標準車、ハンドリングを重視するならFスポーツだが、従来のような二律背反ではなく二律創生の乗り味なので、どちらを選んでも我慢する事はないと思う。
2.5Lハイブリッドの乗り味は好印象、しかしV6 3.5L版の国内導入を切望する理由とは
パワートレインは、先行搭載されているトヨタ 新型カムリと同じ印象。力強いモーターと低中速トルク＆レスポンスがアップしたエンジンとの相性もよく、ラバーバンドフィールもかなり抑えられているため、日常走行の多くの領域でハイブリッドを意識することはほとんどないはず。燃費を意識することなく走らせても省燃費なのは嬉しいポイントの一つだ。
標準車との組み合わせは問題ないが、個人的にはFスポーツとの組み合わせについてはやや官能的に訴えるモノが足りないような気がした。例えば、LS／LCのようなステップ制御やエンジンサウンドを付加するようなプラスαが欲しい。
ちなみに北米仕様にはV6-3.5リッターがラインナップされている。日本では台数的に厳しい事は承知だが、ESが大きく変わったことを象徴とするリーダーとして、V6 3.5リッターモデルをFスポーツ限定で設定してみてはどうだろうか？ レクサスのようなプレミアムブランドには、“選択と集中”だけでなく“無駄”も必要だと思っている。
レクサス ESは乗れば乗るほどジワッと良さがにじみ出る“優しいクルマ”
新型ESの静粛性だが、前後左右の会話明瞭度を含めて非常に高いレベルだ。シンプルなシステムながらもLS並みの音場を実現させる「マークレビンソン・ピュアプレイ」も心地よい音を聞かせてくれたが、その一方でアクセルペダルの戻し音やバッテリー冷却ファンの音なとの今まで気にならなかった音が気になってしまったのも事実である。この辺りはぜひとも正式発売までに改善を期待したい所である。
結論、新型ESはインパクトと言う意味ではLS／LCにはかなわないが、LS／LCにはない“優しさ”があるのと、乗れば乗るほどにジワっと良さがにじみ出てくる一台だと思う。例えるならば「静かなエキサイティング」と言った感じだろうか。
発売価格は未定だが、実は個人的にはこの価格設定こそが日本でESが成功するかしないかの非常に重要なファクターだと思っている。「高すぎず、安すぎず」を期待したいところだ。
[Text：山本 シンヤ／Photo：レクサスインターナショナル]
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自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る
自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。
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