BMW 535i 試乗レポート/小沢コージ(3/4)
- 筆者: 小沢 コージ
- カメラマン:オートックワン編集部
官能性とエコロジー性を両立させた3リッター直6ターボ
さてインプレッションだが、とにかく「静けさ」「乗り心地の良さ」は圧倒的だ。乗って僅か10mで7シリーズベースになったことがよくわかり、路面の無駄な衝撃を伝えてこない。
ただ、逆に言うと旧型で持っていたダイレクトさ、スポーティなフィールが減ったとも言えるが、これは賛否両論かもしれない。ステアリングフィール自体も電子制御が介入していることが伺え、ある種の振動は以前より遮断されている。
しかし、そこはBMW。駆けぬける歓びは損なわないようケアしたようで、切ったら切った分だけ曲がる正確さや、路面を正確にトレースしている感触が伝わってくる。
旧型にも用意されていたが、低速時にはクイック、高速時にはゆったりと切れる「アクティブステアリング」の効果は絶大で、街中ではそれこそハンドルを90度も切らないで済む。
そして、なんと言っても驚きは535iの「3リッター直6直噴ターボエンジン」だろう。
これはまさに現在最高レベルで官能性とエコロジー性を両立させたユニットであり、まず気づくのは普通に街を走ってる限りでは、エンジン回転が2,000rpmも回らないことだ。
直噴により可能になった、ターボとしては破格に高い10.2という圧縮比と、低回転から効くタービン特性により、踏みはじめからドカンとトルクが立ち上がり、1,000rpm辺りからグイグイと進んでいく。優秀でダイレクト感の強い8速ATの恩恵もあって、ゆっくり走っていく限りでは1,500rpmぐらいでシフトアップしてしまい、その調子で時速80kmぐらいまでは楽勝だ。
高速に入ってようやく2,000rpm以上を使う感じで、この感覚は非常に新鮮だ。
今の直噴低回転ターボ路線に先鞭を付けた、VWのTSIも凄いが、あれは2,000rpm程度まで普通に回る。BMWの直噴3リッターはそれをさらに研ぎ澄ませたものであり、それでいて直6だから滑らかさは確実に上。
ゆっくり走っていても気持ちいい。
そして、さらに凄いのは踏めば踏んだだけ気持ち良く回ることだ。
従来はツインターボだったものをシングルターボにし、その分BMW自慢の高効率スロットルシステム「バルブトロニック」を搭載しているわけだが、2,000rpm以上の伸びが落ちているわけじゃない。
旧型は確かに“二番底”という感じで、3,000~4,000rpm辺りから「まだ上があるの!?」というほど回ったが、新型はその変化がスムーズになった印象を受ける。
さすがはBMWの6発ターボだ。そして驚きはメーター読みとはいえ、実燃費が高速巡航でリッター16kmは行くことだ。
街中も含めると7~8km台に下がるのだが、高速では、いかに効率良くエンジンパワーを引き出しているかがわかる。そこはモーターで走るハイブリッドカーとは確実に違い、味は残しつつもカロリーを見事に減らしたという印象だ。
この記事にコメントする