ベントレー ミュルザンヌ 試乗レポート(3/3)

ベントレー ミュルザンヌ 試乗レポート
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クルマと呼ばれるものの範疇を超えている

ベントレー ミュルザンヌ

走行中のミュルザンヌの車内はとても静かだが、何も聞こえないわけではない。スロットルペダルを踏み込んで加速する際には、エンジンの唸り声が明瞭に聞こえてくる。世間には、もっと静かなクルマもある。

512馬力のエンジンは強力だけれども、そのハイパワーはよく躾けられている。軽くないボディと相まって、加速はジンワリと上品そのものだ。

6.75リットルもの大排気量をふたつのターボチャージャーで過給しているから、1200、1300回転ぐらいの極低回転域からも太い力で押し出されるような感覚は、先代にあたる「アルナージュ」を思い出す。

ベントレー ミュルザンヌ

ミュルザンヌはアルナージュよりもATが8速に多段化され、DCC(ドライブダイナミクスコントロール)というダンピング&ステアリングコントロールが付き、走りっぷりが洗練された。

コーナリング中のロールも穏やかになり、アイドリング時も含めてエンジン音は相当静かになった。ベントレーのフラッグシップは、大幅に近代化されたのだ。

静謐なミュルザンヌの車内から、忙しない都内を眺めると、お互いが別の世界にいるようだ。

ベントレー ミュルザンヌ

ミュルザンヌの存在は、機械式の高級腕時計のことを思い浮かべてもらえば、うまく想像してもらえると思う。パテックフィリップやブランパンなど、安くても一個百万円は下らないスイス製の腕時計のことだ。ほとんどハンドメイドで、限られた数しか造られない。

機械式だから、精度ではデジタル時計には絶対にかなわない。それだけでなく、何日かに一回リューズを巻いたり、いつも腕に巻いて使ってゼンマイを巻き上げておかないと、停まってしまう。

デジタルなら、電池がなくなるまで停まらない。複雑な機構のものは天文学的な価格になるが、デジタルだったら同じ機能は100分の1以下の価格で手に入る。

性能は及ばなくて、停まることもある時計なのに、なぜ、そんなものに100倍以上もの値段が付いて、喜んで買う人がいるのか?

それは、時刻を知るため以外のものを求めているからだ。工芸品のような加工技術の見事さだったり、ネジひとつ金属の塊から削り出されるクラフトマンシップだったり、その時計メーカーの歴史や伝統などだったりする。

繰り返すけど、時刻を知るには、それらは全く必要ない。一番シンプルなスウォッチを買わなくたって、携帯電話を取り出せば済む話だ。

携帯電話では人と荷物を運ぶことはできないが、ミュルザンヌがもはや現代でクルマと呼ばれるものの範疇を超えていることがおわかりいただけると思う。

カタログに載っている標準設定のボディカラーは114色あり、それ以外のスペシャルオーダーにもいくらでも応えてくれる。(もちろん、値段と納期もスペシャルになるが)

イギリスで新車のベントレーを購入する8割の顧客は、ディーラーではなく、直接クルーの本社工場に足を運び、シートやダッシュボードに加工される前の段階の革や木材を選び、外装色や内装、装備等についてじっくりと相談しながら、注文する。

よく話し合う「ビスポーク」(besporkenが語源)という注文方法によって、購入されるのがベントレーだ。

どちらが良くて、どちらが良くないという話ではない。文化なのだ。

ベントレーとはそういうクルマで、それがベントレーの流儀なのだ。だから、ベントレーのフラグシップ、ミュルザンヌはクルマであってクルマではない、のだ。

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金子 浩久
筆者金子 浩久

モータリングライター 1961年東京生まれ。 自動車と自動車に関わる人間について執筆活動を行う。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』など。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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