新世代タクシー対決! 先行したはずの「NV200タクシー」はなぜ「JPN TAXI」の陰に隠れつつあるのか!?

同じ新世代タクシーであるはずの両者になぜこんなにも差が付いてしまったのか?

2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下東京オリンピック)を控え、東京都内では、これまでのセダンタイプのタクシーから、乗降性と使い勝手に優れた新世代のタクシー車両へと切り替えが進んでいる。

そんな中、東京都内で見かけるのはトヨタ JPN TAXIばかりで、同じく新世代のタクシーとして販売されている日産 NV200タクシーの姿をあまり見ることがない。どちらの車種も総じて良い出来栄えであることは、MOTAの記事でもたびたびご紹介しているが、なぜここまで両者の間に差が開いてしまったのだろうか。

>>日産 NV200タクシーとトヨタ JPN TAXIの違いを写真でチェック

東京オリンピックの開催に合わせた戦略

JPN TAXIがここまで急激に台数を伸ばした要因として考えられるのが、いよいよ来年に迫った東京オリンピックの開催を見越したタイミングで発売されたこと。

JPN TAXIは、ユニバーサルデザインの認定を受けていることで得られる国からの補助金に加え、東京都からもオリンピック・パラリンピックに向けた補助金が上乗せされ、1台あたり合計100万円近い補助金を受け取ることができるのだ。

NV200タクシーもユニバーサルデザインではあるものの、HVやEVではないため、タクシー会社が得られる補助金は少ない。車両の購入費用が営業利益に大きく影響するタクシー会社にとって、補助金の金額が非常に大きな問題ということは容易に想像できる。

日本の美を感じるボディカラーの統一の裏にはトヨタの戦略も

日本の美を取り入れたJPN TAXIと従来のタクシーらしさを残したNV200タクシー。

従来のタクシーと言えば、タクシー会社独自のイメージカラーに彩られていた。しかし、現在都内を走るJPN TAXIのほとんどは、黒に近い“深藍”ばかりで、遠目ではどこのタクシー会社なのかを判別することができない。

都内には、3万台を超えるタクシーが登録され、2020年にはその3分の1にあたるおよそ1万台がJPN TAXIになると言われているが、それでも他車種の方が多い。だが、各社のイメージカラーで塗られた他車種と比べて、同色にカラーリングされたJPN TAXIばかり目に付くのは当然。深藍というボディカラーが多いのには、トヨタ側からの要請もあったと聞く。つまり、JPN TAXIが一気に増えたように感じるのは、ある意味トヨタの戦略でもあるのだ。

日本人にとってなじみ深く高級感のある“深藍”

また、深藍というボディカラーが多いのには、この色が日本人にとってなじみ深い色でもあることにも関係する。東京オリンピックの公式エンブレムは、日本の伝統的な紋様である市松をモチーフに藍色で描かれており、藍色はジャパンブルーとも呼ばれ、日本を彩ってきた伝統的な色なのだ。

そして、黒や藍色といった濃色系のボディカラーには高級車というイメージがあり、さらに、格子にも似た水平基調のフロントグリルをはじめとしたエクステリアにも高級感が漂う。また、合成皮革を使用した “黒琥珀”(上級グレード 匠)や、“琥珀”(標準グレード 和)と名付けられインテリアも、これまでの味気ないタクシーらしい内装から一転、高級感のある落ち着いたインテリアになっている。

決して派手ではないものの、日本らしい凛とした美しさを内外装のデザインにうまく取り入れたことも、JPN TAXIが人気の理由と言っても良いだろう。

タクシーらしさを感じるも高級感には乏しい

対して、都内で見かけるNV200タクシーはと言うと、従来通り各社のボディカラーにペイントされ、一目でどこのタクシー会社なのかを判別することができる。

色で言えばいかにもタクシーであることが分かりやすいのだが、JPN TAXIのような日本らしい高級感に乏しい。また、タクシー専用ではなく、商用バンである既存のNV200をベースにしていることも、高級感という点で、JPN TAXIに溝を開けられてしまっているのも否めない。

燃料費のかからないLPG車はJPN TAXIのみ

NV200タクシーとJPN TAXIでもっとも違うポイントが、使用する燃料だ。

JPN TAXIが従来のタクシーと同じLPGを使用するハイブリッドであるのに対し、NV200タクシーは、ガソリン単一かガソリンとLPGを併用するバイフューエル。

上記では、車両購入に関わることとして補助金の話をしたが、もう一つタクシー会社にとって重要な問題が燃料代である。レギュラーガソリンの平均価格が1リッターあたり130~140円だが、LPGの価格は70~80円と安い。燃料に掛かる経費が利益に直接影響するタクシー会社にとって、LPG車を選ぼうとすると、JPN TAXIしか選択肢がないのだ。

実用性に優れた商用バンベースのNV200タクシー

このように書いてみると、なんだかんだJPN TAXIの優位ばかり目立ってしまうが、NV200タクシーにも十分魅力的な点は数多くある。

高級感に乏しいと言ってしまったが、四角い商用バンベースのボディはスペース効率に優れ、乗車時の解放感は素晴らしい。

また、もともと3列シートが設置できるだけの空間がある広いラゲッジスペースは、LPGのタンクがあっても大型のスーツケースを立てたまま4つ積むことができる。

そして、何よりも優れているのは、車椅子がリアゲートを開けて乗込めることだろう。JPN TAXIは、車椅子をスライドドアから乗せるため、場所によってはスロープが展開できないことや、乗せるための作業工程が多いなど、利用客だけでなく乗務員からも不満の声が出ている。

乗務員の手間が無く、何よりリアゲートから乗りこむことに慣れている車椅子の利用客にとって、NV200タクシーの方がより利用しやすいのは明らかだ。

日産の持つ技術をタクシーにこそ活かしてほしい

このように、ユニバーサルデザインという言葉が持つ“誰にでも使いやすいデザイン”で言えば、むしろNV200タクシーの方が優れているとも言える。

代表的なモビリティであるタクシーにおいて、日産は東京オリンピック開催というタイミングを逃してしまった感は否めない。しかし、日産の持つEV技術や自動運転技術などをうまくに取り入れれば、タクシー会社にも利用客にも支持されるタクシーが作れるはず。

特に日産贔屓をするつもりはないが、JPN TAXIばかりを目にしていると、つい、「もっとやれるはずだよね? 日産さん!」と思えてしまうのである。

[筆者:増田 真吾]

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増田 真吾
筆者増田 真吾

和太鼓とROCKを愛する自動車ライター。国産車ディーラー、車検工場でおよそ15年自動車整備士として勤務したのち、大手中古車販売店の本部業務を経験。その後、急転直下で独立しフリーの自動車ライターに転身。国家資格整備士と自動車検査員資格を保有し、レースから整備、車検、中古車、そしてメカニカルな分野まで幅広い知見を持つ。昔の彼女が付けた肩書は「熱血太鼓車バカ」。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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