日産 ノート e-POWER NISMO Sを速攻試乗&解説|この高次元なバランスがノーマルのノートにも欲しい(2/2)

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もはや3リッター車並み! ノート e-POWER NISMO Sの高性能を堪能

概要が分かったところで、いよいよノート e-POWER NISMO Sの試乗だ。今回はテストコース内のみで試乗を行っている。

ノート e-POWERの標準グレード、あるいはノート e-POWER NISMOでも、発進時の動力性能は十分と感じさせるが、ノート e-POWER NISMO Sはそれ以上に力強い。最もパワフルなBレンジのSモードを選ぶと、アクセルペダルを30%程度踏み込んだ程度でも、高い駆動力が瞬時に立ち上がる。これは反応の素早いパワフルなモーター特有の加速感だ。

ノート e-POWERの標準グレードやノート e-POWER NISMOの動力性能は、ノーマルタイプのガソリンエンジンに当てはめると2.5リッタークラスだが、ノート e-POWER NISMO Sはもはや3リッタークラスに匹敵する。ノート e-POWER NISMO Sの車両重量は1250kgに収まるから、加速の立ち上がりは相当に機敏だ。

発進後もアクセルペダルを踏み続けると、速度は直線的に上昇していく。一般的にモーター駆動の場合、その特性として高回転域になると速度上昇が鈍るが、ノート e-POWER NISMO Sは少なくとも法定速度の範囲ではこの不満が生じない。停車状態から時速100キロに達するまでの加速タイムは8秒以下で、ノート e-POWER NISMOに比べて1.7秒短縮された。

フル加速の最中は、発電用1.2リッター3気筒エンジンが、ノート e-POWER NISMOとは違う回り方をする。高い出力とトルクを発生させるため、エンジン回転も高めて発電能力を向上させるから相応に騒々しい。「ここまで回るのか」と思うが、加速に見合ったノイズだから不快ではない。

6種類も用意されたドライブモードの使い方を解説

ノート e-POWER NISMOの4種類に対し、6種類に選択肢を増やしたノート e-POWER NISMO Sのドライブレンジ(シフト)とモードの使い方について紹介しよう。

市街地や高速道路の巡航では、Dレンジでエコモードを選ぶと良い。燃費性能を向上させる走り方が行えて、アクセルペダルを戻すと同時に回生充電が積極的に開始されるから、ブレーキペダルを使わずに速度を自由に調節する走りも味わえる。

峠道などを積極的に走る時は、DレンジでSモードを選ぶ。ノート e-POWER NISMO Sならではのスポーティな運転感覚を満喫できる。

そしてフルパワーを発揮させる時は、積極的に発電アシストを用いるBレンジのSモード(今回新設定された)を選択するのが最適な使い方だ。

優れた走行安定性と快適性が高次元に実現される

ノート e-POWER NISMO Sの足まわりの設定や走行安定性は、前述のようにノート e-POWER NISMOと共通だ。タイヤサイズは16インチ(195/55R16)で、銘柄はヨコハマ DNA Sドライブが装着される。指定空気圧は前輪が230kPa、後輪が210kPaで常識的な範囲に収まる。

走行安定性はバランスが良く、4輪のグリップ力を上手に高めた。それでも優先させたのは後輪の接地性で、危険を回避するために下り坂のカーブでアクセルペダルを戻したりブレーキペダルを踏む操作をしても、挙動を乱しにくい。

また高い駆動力を与えた状態でカーブに入り、同様の操作をした時も安定性が下がりにくい。このようにノート e-POWER NISMO Sは動力性能が高い割に、運転が難しくなる欠点を抑えた。

カーブの手前でハンドルを切り込んだ時の反応も、軽快とはいえないが、鈍さを感じさせず自然な印象だ。後輪の接地性を優先させた上で、適度に良く曲がる運転感覚は、安全性を優先させる今日のトレンドになる。

乗り心地は少し硬いが、路面の段差など大きなデコボコはしなやかに吸収する。快適性まで含めてバランスが取れている。

良く出来たボディ補強と足回り、いっそ標準のノート e-POWERにも欲しい

ノート e-POWER NISMO Sのボディ補強と足まわりは、スポーツモデルではないノートe-POWERの標準グレードにもぜひ施して欲しい。その理由だが、標準グレードのe-POWERを運転すると、1.2リッターのノーマルエンジン車に比べて、ボディが200kg近く重いことを意識させるからだ。乗り心地はボディが重い分だけ粗さが抑えられる傾向にあるが、標準グレードの走行安定性は限界に近い。NISMOと同様のボディチューニングを施し、サスペンションは乗り心地を重視した設定にすると、安定性と乗り心地を高い次元でバランスできる。

冒頭で触れたとおり、今の日産は車種の数を実質的に減らしている。コンパクトカーはノート、ミニバンはセレナ、SUVはエクストレイルしかないのとほぼ同じ状態だ。そう割り切るのであれば、いっそ各カテゴリーで商品力のナンバーワンを目指したい。特に日本のクルマが手を抜きやすい走行安定性と乗り心地で1位を目指す。

昨今の日産はノートがコンパクトカーの販売1位だと宣伝するが、ひとたび他メーカーから新型車が発売されれば、イッキに追い越される可能性も高い。走行性能と乗り心地をしっかりと造り込み、宣伝文句で終わらない「技術の日産」を確立させるべきだ。少なくともノート e-POWER NISMOと、ノート e-POWER NISMO Sではそれが出来ている。

あとは日産に、国内市場に対する思い入れがあるか否かだ。

[レポート:渡辺 陽一郎/Photo:茂呂 幸正]

日産ノートe-POWER NISMO S 主要諸元

日産ノートe-POWER NISMO主要スペック
主要諸元e-POWER NISMO

価格(消費税込み)

2,671,920円(レカロシート装着車:2,941,920円)

全長

4165mm

全幅(車幅)

1695mm

全高(車高)

1535mm

車両重量

1250kg

乗車定員

5名

ホイールベース

2600mm

最小回転半径

5.2m

駆動方式

前輪駆動(FF)

発電用エンジン

HR12DE型直列3気筒DOHCミラーサイクルガソリンエンジン

排気量

1198cc

エンジン最高出力

83ps(61kW)/6000rpm

エンジン最大トルク

10.5kgf-m(103N・m)/3600-5200rpm

燃料タンク容量

41L

使用燃料

無鉛レギュラーガソリン

モーター種類

交流同期電動機

モーター定格出力

95ps(70kW)

モーター最高出力

136ps(100kW)/2985-8000rpm

モーター最大トルク

32.6kgf-m(320N・m)/0-2985rpm

動力用主電池

リチウムイオン電池

サスペンション形式

(前)独立懸架ストラット式(後)トーションビーム式

タイヤサイズ

195/55R16 87V

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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