マツダ アテンザ(2018年大幅改良モデル)│スポーティなクルージングが愉しめるマツダのフラグシップセダン

『マツダのフラグシップはアテンザなのだ』という強い意思表示

マツダのフラッグシップモデルであるアテンザが、ビッグマイナーチェンジを受けてお披露目された。

そのプレゼンテーションの冒頭に述べられた言葉が、とても印象的だったのでお伝えしたい。

「市場の要求がSUVに移行していることにまず危機感を抱きました。我々はセダンやスポーツワゴンでしか持ち得ない価値を再定義し、お客様に運転したい、所有したいと思ってもらえるようなクルマを作りたかったのです」

あくまでもマツダのフラグシップはアテンザなのだ、と、ピシャリと断言したかのように受け取られるこれは、開発主査・脇家氏の口から述べられたものだ。

確かに同社内でのシェアを見ても、マーケットを見ても、SUVが幅を利かせていることに疑いの余地はない。そして傍から見ればそれ自体は、会社にとって決して悪いことでもないように思える。だって数売れてるんなら、収益的にはオールOKなはずだもの。

しかし、自動車メーカーが自ら定義付ける“フラッグシップモデル”という存在は、流行モデルに左右されるほど薄いものではない、ということなのだろう。

事実、新型アテンザのマイナーチェンジの変更幅は、フルモデルチェンジと見まごうほどだ。その気合いの入りよう、半端ないって。あいつ半端ないって。モデル末期のマイチェンやのにサスシステムの構造変えたりしてるもん。そんなんできひんやん、普通。

・・・すみません、時代に乗っかろうとしすぎました。

しかし、冗談抜きに、このマイチェンはマジ半端ないって(以下自粛)。まさにこれこそがフラッグシップだからこそ施せる改良だ。

詳細は以下に綴るので、ご確認いただきたい。

踏み代に応じてトルク特性が抜群にリニアなSKYACTIV-G 2.5

まず、新型アテンザは、走りがあらゆる意味で洗練された。

特に顕著なのはペダル類の踏み心地=加速感が、劇的に向上している。これはガソリン/ディーゼルともに即、実感するに至った。

試乗会場に用意してあったのは、FFの2.5リッターガソリンエンジン(SKYACTIV-G 2.5)と4WDの2.2リッターディーゼルエンジン(SKYACTIV-D2.2)だったのだが、ラインナップには2.0リッターガソリンエンジン(SKYACTIV-G 2.0)も設定される。この3種類すべてのパワートレーンにトルク改善など改良を加え、さらにSKYACTIV-G 2.5には気筒休止システムを採用して燃費の向上も図っている。

SKYACTIV-G 2.0のみ試乗には至らなかったのでこの限りではないのかもしれないが、SKYACTIV-G 2.5では踏み代に応じてのトルク特性が抜群にリニア。トルクバンドの盛り上がり方が実にスムーズなのだ。かといって演出が過剰すぎないので、まさにマツダの言う「人馬一体」「意に添う」というところが叶えられている。先代では踏みはじめ、踏み込みに対してほんの少しのラグがあってからトルクが生まれて来るイメージだったので、このスッキリ感はハッとするほどだ。

狙いは“エフォートレス・ドライビング”

今、ファッション界では“抜け感”という意味のワードが盛んに使われているのだが、まさに新型アテンザのドライビングの狙いが、そんな流行ワードに符号するかたちになっている。

“エフォートレス・ドライビング”というのがそれで、“エフォートレス”とは“努力を要しない”とか、“肩の力を抜いた”ということを示すのだという。

つまり、どんな人でもしゃかりきにならずともサラっと運転出来る、という意味だ。さらにアテンザは、ステアリングを握る運転手だけでなく、他のすべての乗員にもこの“エフォートレス”を感じられるようなドライビング・フィールを叶えたかったのだという。

事実、そういう視点で乗ってみれば、ペダルの踏み感自体も先代よりも軽く味付けされたようにも感じられて、確かに“エフォートレス”だ。

ディーゼルエンジン搭載のSKYACTIV-D2.2にはもっと過激な味付けがされていて、踏み代よりもトルクが多めに生まれて来る感じ、すなわちややスポーティな印象を受けた。

開発陣に話しを聞いたところによると、パワートレーンで乗り味に差をつけたつもりはないというが、フィーリングとして明確に違いがある。

まだまだ走りを楽しみたい!と望む層にはきっとドンピシャ

さて、ある程度の速度に乗ると、フラッグシップセダンというイメージからすればやや締まったアシが、マツダらしいスポーティなクルージングをもたらしてくれる。

そう、あなたが愛車にもし、“絶対的に静かでフラットなセダン”を求めるならば、きっとそれはアテンザではないと思う。しかし、まだまだ走りを楽しみたい!と望む層にはきっとドンピシャだ。

特にSKYACTIV-G 2.5のFFは、ステアフィールも軽くて挙動自体も軽快だし、さらに後席までもがエフォートレス、というにはちょっと及ばないくらい、サスペンションは硬め。だからこそ、コーナリングなんかではカチっと決まったハンドリングを叶えてくれるし、路面のインフォメーションもしっかり拾う。

先述の通り、アクセルレスポンスは抜群なので、そのキャラクターとは味付け的によくマッチングしている。日頃からたくさん走りたい人には、きっと響くと思う。かといって、ガチガチすぎてコーヒーも飲めないほどでは決してなく、上質なセダンとしての品位は失っていないのでご安心いただきたい。

この、コシがあるけどカタすぎないという落としどころがもたらすオンザロード感も、先代からの進化著しい。

先代はもう少し突き上げがあったし、制振も低かったからだ。改善の理由として、タイヤとサスペンションの変更が挙げられる。

サスペンションに関して、具体的にはストローク感(ふわふわ方向)と減衰感(ゴツゴツ方向)の両方を改善するため、前者にはフロント・リアともにコイルばね定数特性変更、スタビライザーブッシュ接着、バンプストッパー特性変更、ストローク干渉低減が、後者にはフロントにはダンパーの大径化および飽和特性の採用、リアにはダンパー飽和特性採用とトップマウントウレタン材の採用が行なわれている。

それに伴い、電動パワステ制御の最適化もなされた。

どうしてここまでの変更をサスペンションに行ったかといえば、タイヤが変わったからだ。

新開発タイヤは、ヨーロピアンタイヤのような“体感的にソフト”を実現

今回、アテンザはタイヤメーカーとがっぷり四つに組んで新開発したタイヤを装着している。地面と接地するのがタイヤだけである以上、ある程度の性能発揮の部分をタイヤが担うのは当然のことだ。

従来モデルの装着タイヤは、簡単に言えば“硬かった”という。

新型ではそのアタリを柔らかくし、いわばヨーロピアンタイヤのような“体感的にソフト”を実現することで、タイヤがひとつの減衰部品と出来るくらいに初期の入力を飲み込むことができるようになった。そこで、実数として先代よりも縦ばね定数を下げることができた。こうして硬くてしなやか、という今のアシまわりを実現することが可能になったそうだ。

制御で余計な仕事をさせなくても、ドライバーが自然に操作

ちなみに試乗中、「Gベクタリングコントロール」の効果を感じ辛かったことが気になった。

導入以来、ループ橋のように連続したRを通過する際などに、抜群の効果を感じていたGベクタリングコントロールは、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させて接地荷重を最適化してくれる運転支援機能だ。

これまではもっとこの介入を感じるようなものだったのだが、新型アテンザのそれは至極消極的に抑えられている。

それもこのタイヤとサスペンションシステムによって受けた恩恵で、これまでGベクタリングコントロールで抑え込まざるを得なかったフロントのフワフワ感が、タイヤ&サスの改善により収まるようになったため、制御で余計な仕事をさせなくても済むようになったのが理由だという。

たしかに、制御で不自然に曲げられるより、ドライバーが自然なドライブで操作出来た方が良い。ここにも“エフォートレス”が生きている。

さらにもう少し落ち着いたクルマが欲しいなら、モデル内でも断然SKYACTIV-D2.2の4WDという選択肢がオススメだ。

車重自体もガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは約100kgの差があって、文字通りドッシリしているうえ、さらに4WDを選べばリアも物理的にFFより重くなる。その接地からハンドリングもカチっと固まり、結果的に重厚感あふれる質感が産み出される。

美麗内装が創り出す上質な世界観にうっとり

最後に。

ここまで走りを熱弁しておいてアレだが、実は今回のアテンザの一番のオススメポイントは内装の質感の高さにこそあると思うので最後に触れておきたい。

とにかく綺麗。美麗内装なのだ。

特に最上級グレード(L Package)には感激してしまった。身も蓋もないが、「この値段でコレ!?超オトクやん!」となること請け合い。ここはもう、先代が比較対象にならないくらいだ。

ダッシュボードにまで張り巡らされたアルカンターラのようなスウェード風素材は東レ株式会社による新素材で、量産車初搭載となるもの。これがドアパネルにまで張り巡らされて、シートに身を埋めたとき、上質な世界観にうっとりしてしまう。

また、前席にはシートヒーターだけでなく、ベンチレーションまで備えられ、これがまた力強く熱気を吸ってくれパワフルさで大変満足なことこの上ない。

ナビも1インチ大きくなり、まさにフラッグシップにふさわしいおもてなしを手に入れている。

個人的に気に入ったのはピュアホワイトのレザー内装。きっとこの世界観、とくにこの女性にウケると思います。奥様におすすめしてみて!

安全系もまたフラッグシップらしく、レーダークルーズコントロールを含む今のマツダが備え得る最高級のものが導入され、こちらも守備範囲を拡げている。

確かな走行性能に加えて、内外装の質感も高め、商品力は抜群。

悩ましいのはガソリン?ディーゼル?2.0リッター以外はさらに、FF?4WD?そしてAT?MT?

そう、選ぶ楽しみがあるのもマツダならでは!

是非最高の自分の一台を見つけて欲しい!

[TEXT:今井 優杏/PHOTO:茂呂 幸正]

マツダ 新型アテンザの主要スペック

マツダ アテンザ(2018年大幅改良モデル)の主要スペック
車種名アテンザ(セダン)

グレード

20S など

25S L Package

XD など

駆動方式

2WD

2WD

2WD

トランスミッション

6EC-AT

6EC-AT

6EC-AT

価格(消費税込)

2,829,600円~

3,542,400円

3,240,000円~

WLTCモード燃費

15.0km/L

14.2km/L

17.8km/L

市街地モード燃費

11.7km/L

10.6km/L

13.9km/L

郊外路モード燃費

15.4km/L

14.5km/L

17.6km/L

高速道路モード燃費

17.2km/L

16.8km/L

20.8km/L

全長

4,865mm

4,865mm

4,865mm

全幅(車幅)

1,840mm

1,840mm

1,840mm

全高(車高)

1,450mm

1,450mm

1,450mm

ホイールベース

2,830mm

2,830mm

2,830mm

乗車定員

5人

5人

5人

車両重量(車重)

1,510kg

1,540kg

1,620kg

エンジン

直列4気筒

直列4気筒

直列4気筒直噴ターボ

排気量

1,997cc

2,488cc

2,188cc

エンジン最高出力

156PS/6000rpm

190PS/6000rpm

190PS/4500rpm

エンジン最大トルク

20.3kgf・m/4000rpm

25.7kgf・m/4000rpm

45.9kgf・m/2000rpm

燃料

無鉛レギュラーガソリン

無鉛レギュラーガソリン

軽油

マツダ アテンザワゴン(2018年大幅改良モデル)の主要スペック
車種名アテンザワゴン

グレード

20S など

25S L Package

XD など

駆動方式

2WD

2WD

2WD

トランスミッション

6EC-AT

6EC-AT

6EC-AT

価格(消費税込)

2,829,600円~

3,542,400円~

3,240,000円~

WLTCモード燃費

15.0km/L

14.2km/L

17.8km/L

市街地モード燃費

11.7km/L

10.6km/L

13.9km/L

郊外路モード燃費

15.4km/L

14.5km/L

17.6km/L

高速道路モード燃費

17.2km/L

16.8km/L

20.8km/L

全長

4,805mm

4,805mm

4,805mm

全幅(車幅)

1,840mm

1,840mm

1,840mm

全高(車高)

1,480mm

1,480mm

1,480mm

ホイールベース

2,830mm

2,830mm

2,830mm

乗車定員

5人

5人

5人

車両重量(車重)

1,530kg

1,560kg

1,630kg

エンジン

直列4気筒

直列4気筒

直列4気筒直噴ターボ

排気量

1,997cc

2,488cc

2,188cc

エンジン最高出力

156PS/6000rpm

190PS/6000rpm

190PS/4500rpm

エンジン最大トルク

20.3kgf・m/4000rpm

25.7kgf・m/4000rpm

45.9kgf・m/2000rpm

燃料

無鉛レギュラーガソリン

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今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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