悪路を走る性能を備え、なおかつ舗装路の走りも上質な先進の輸入SUV3モデルを比較チェック(3/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
ていねいに造り込まれた上品な内装にはレンジローバーの伝統とプライドを感じる
イヴォークがレンジローバーの一員だと実感したのは、運転席に座った時だった。「プレステージ」の内装色は、シートを含めた下側がアイボリー、インパネの上部などはダークチェリーになり、センスがとても良い。
特に注目したのが本革仕上げのインパネ。上面と運転席から助手席の前側まで伸びる部分には「オックスフォードレザー」が使われ、ダブルステッチも入る。デザインは先進的でも、昔から変わらない上質な持ち味が息付く。
インパネ中央の下側にはダイヤル式のATセレクターが備わる。エンジンを始動すると埋め込まれていたダイヤルが持ち上がり、最初に試乗した時には感心した。
一連の内装に共通するのは「品の良さ」だ。実用性とは無関係な演出をかなり利かせるが、わざとらしく思えたり、鼻に付くことがない。日本車に比べると、嫌味な表現で恐縮だが「育ちの違い」のようなものを感じる。
私自身は育ちが良くないから、「イヴォークに負けてるなぁ」と思った。その一方で「思い切って買ってみようかな」とも考えた。イヴォークを日常的に使えば、愛車に負けまいと、多少は品が良くなるかも知れない(51歳ではもう無理かな)。
アホな感慨はともかく、フロントシートは座り心地も快適。サイズに余裕があり、座面は硬めながらボリューム感がある。しっかりと体を支えて、長距離移動でも疲れにくい。シートにもオックスフォードレザーが使われ、肌触りが心地好い。
リヤシートは床と座面の間隔が不足して、腰が落ち込みやすい。足元空間も狭めだ。4名乗車時の居住性は割り切ったが、3ドアの「クーペ」を設定するデザイン優先の車種だから、欠点にはならないだろう。
A4などと同じくインパネからシートまで上質な仕上がりで、リラックスできる雰囲気を醸し出す
Q3の内装は、A4などと同じセンスで仕上げられている。開放感があって上質。車内にメッキパーツは相応に使われるが、過度に目立つことはなく控え目だ。「いつものアウディに乗っている」という心地好さ、安心感があり、お気に入りのカフェテリアでリラックスしているような気分になれる。
インパネは水平基調のデザイン。エアコンのスイッチは位置が少し低めだが、操作性と視認性は良い。
フロントシートはサイズが大きく、柔軟でゆったりした座り心地。体が少し沈んだ部分で、確実に支えてくれる。腰の張り出しを調節する電動ランバーサポートは、上下にも動くタイプ。好みの位置にセットできる。
リヤシートの座り心地は個性的。床と座面の間隔は不足気味で腰が落ち込むが、座面の前方を大きく持ち上げた。大腿部は確実にサポートされる。
ただし、座面は硬めの仕上がりで、小柄な同乗者が座ると大腿部を押された感覚になりやすい。ファミリーカーとして使うなら、家族の体格との相性を見ておきたい。
上級グレードとあって装備は充実。カーナビ、10スピーカーを備えたアウディ・サラウンドシステムなどが装着される。オプションでBOSE製の14スピーカーを選ぶことも可能だ。
フロントシートに座っていると、SUVであることをほとんど意識させない。従来型のA3やA4のユーザーも代替えしやすいだろう。
その一方で、着座位置が適度に高まり、乗降時には腰の移動量が少ない。視線も適度に高く、周囲の見晴らしが利く。SUVのメリットとアウディのリラックス感覚を巧みに融合させた。
SUVでありながら着座位置は低めに設定されBMWらしいスポーティな雰囲気に仕上げている
これがSUVの着座感覚なのか?
X1に乗り込むと、イヴォークやQ3との違いを実感する。最低地上高は前述のように195mmを確保するが、床は低めに抑えられ、ドライバーの視線も下がる。全高を1545mmに抑えたことからも分かるとおり、着座感覚は「少し背の高い5ドアハッチバック」だ。
周囲の見え方もほかの2車とは異なり、3シリーズのセダンなどに近い。一般的に「市街地におけるSUVのメリットは見晴らしの良さ」とされるが、X1は低重心に基づくスポーティ感覚を優先させた。BMWのコンセプトを貫いている。
となればインパネのデザインもほかのBMWに共通するテイストだ。水平基調で機能的に仕上げた。
xドライブ2.0iに装着される8速ATのレバーは短く、手首を動かすように操作する。Pレンジはレバー上部のボタンを押すタイプ。最初は少し戸惑うが、慣れると扱いやすい。
シフトレバーの収まるセンターコンソールは高めに位置しており、エンジンを縦向きに搭載する後輪駆動車の表現にもなっている。
フロントシートはサポート性が優れ、SUVとしては床と座面の間隔が少なめ。手足を伸ばし気味に運転するタイプで、これもセダン感覚だ。スポーティな走り方に適する。
リヤシートは着座位置が低めで、膝先の空間も少し狭い。身長170cmの大人4名が乗車すると若干窮屈だが、リヤシートに座った乗員の足がフロントシートの下側に収まりやすく、着座姿勢に無理は生じない。ドライバーが運転を楽しむことを要視しながら、同乗者に対する配慮も感じさせる。
内装・装備の総評
外観と同様、あるいはそれ以上に、内装には各車種の主張が感じられる。
最も興味深いのはイヴォークだろう。外観と同様にデザインは新鮮だが、本革を生かした上品な造り込みにはレンジローバーの伝統を感じる。飛躍したクルマに思えるが、従来からの継続性もしっかりと持たせた。
Q3は、日常的な移動を上質にするアウディらしさをSUVのスタイルで表現している。基本はセダンと同じだが、適度に高まった視線による見晴らしの良さ、優れた乗降性などがメリットだ。もちろんSUVだからクワトロシステムと併せて走破力も高いが、背の高いデザインを、アウディらしいリラックス感覚の向上に結び付けている。
X1は、SUVというよりも最低地上高に余裕を持たせた5ドアハッチバック。ドライバーの着座位置と視線をあえて高めず、スポーティな運転感覚を優先させた。
居住性は3車種ともフロントシートを重視する。リヤシートの足元空間は、身長170cmの大人4名が乗車して、3車種とも握りコブシ1つ半程度。大人4名で乗車すると少し窮屈だが、フロントシートの下側に足が収まりやすく、配慮が見られる。実用性も相応に高めた。
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