シボレー コルベット ZR1 試乗レポート/清水草一(2/2)
- 筆者: 清水 草一
- カメラマン:島村栄二/オートックワン編集部
最高速度は400km/h超え!?
クルマに乗り込んだのは渋谷の道玄坂。折悪しく玉川通りは事故で渋滞しており、しばらく一寸刻みのノロノロが続いた。しかしZR1は、そんな交通状況をまったく苦にしなかった!
ミッションはコンベンショナルな6速MTだが、クラッチは特別重くないし、エンジンは低い回転からきわめてトルクフルで、渋滞内では発進から何から、ほぼすべてアイドリングで事足りた。水温・油温もまったく安定していて、何も心配がいらない。
渋滞を抜けて高速に乗る。さすが東名、いつのもようにクルマでビッシリだが、走りはまったく安楽だ。乗り心地も悪くない。こういうフツーすぎる走り方だと、なんだかトヨタ・スープラのデカいヤツみたいで、真の実力を感じることは難しい。
100km/hでの巡航は、6速でわずか1600rpmほど。信じがたいハイギアードぶりである。このギア比でレッドゾーン手前まで回せば、計算上400km/hを超えてしまうじゃないか!公称最高速は330km/hなので、それは5速で出るのかも?
私のフェラーリ512TRも、3速で180km/h出るのが自慢だが、それとはレベルが違うようである。
猛烈速いのに、怖くない・・・
しばらく走ると、前が少し開けた。そこでアクセルを全開にしてみた。その瞬間、V8スーパーチャージャーは紳士から野獣へ豹変。「スボボボボボボボボボボボボボボ!!」という野太くも微妙に軽やかなサウンドとともに、恐るべきダッシュをお見舞いした。 が、なぜかそれほど速く感じない。確かに速いはずなのだが……。
なにせ、日本の高速道路では、フル加速するのは「2速」である。2速でアクセルを床まで踏み込むと、その瞬間「ギュギュッ」と後輪が空転し、さらにレッドゾーン付近の最高出力ゾーンでは、さらに軽いホイールスピンを感じる。それでもそんなに速く感じないのだ。
実は「速い」という感覚には、「怖い」という感覚が多分に混じっていて、怖くないとあまり速く感じない。つまり、シャシーが安定していると、実際には猛烈速くても、それほど速さを実感できない。さすがニュルブルクリンク最速マシン。
フェラーリで言うと、348や360モデナはものすごく速く感じるが、それはシャシーや空力に欠陥があって、不安定(=怖い)だから。これが430になると、安定しすぎていてちっとも速く感じない。
ソニックよりコルベットZR1の方がはるかにお買い得だ!
コルベットZR1は、タイプから言うとフェラーリ430系のようだ。なにせ、647馬力が速いと感じないのだから!私の脳が速さにマヒしているせいもありますが……。
このクルマの真の実力を見極めるには、サーキットに持ち込むしかない。それも富士スピードウェイのような、長い直線や高速コーナーを持つ超高速サーキットに限る。公道では、真の実力の1割を発揮させるのがせいぜいである。
これほどの超高性能マシンが、1490万円。これは、パフォーマンスからすると非常にお安い!記念に、私の愛車・フェラーリ512TRと並べて写真を撮ってみた。
私のフェラーリは、18年落ちでお値段1000万円。体感上の速さはほとんど互角なれど、実際の速さには大差があるだろう。あまり認めなくないが……。コルベットZR1と性能的に近いのは、フェラーリの現行V8モデルの458イタリアである。速さの性能は、恐らく非常に接近している。ただし458イタリアは2830万円。コルベットZR1のちょうど2倍だ。
いずれにせよ、こういうスペシャルなスポーツカーは一種の工芸品であり、男の勲章だ。一般のみなさんは「燃費悪いんでしょ」と否定的に捉えるでしょうが、こういうクルマを普段のアシで乗る人はまずいませんから、走行距離は非常に少なく、ガソリン消費量も少ないです。安心してください。
女性で言えば、普段はつけないダイヤの指輪のようなものですね。カラット数のデカさにこだわるならZR1。高貴なたたずまいこだわるならフェラーリ。そういう好みで選べばそれでよろしいわけであります。
同じシボレー・ソニックが189万円、こっちは1490万円。値段では8倍の差がありますが、私はコルベットZR1の方が、「はるかにお買い得だ!」と感じました。
この記事にコメントする