BMW 新型X2 試乗|ただのエントリーモデルなんかじゃない!BMWの末っ子SACはかなりの野心作

新しい世界観と価値観を具現化すべく開発された、BMWの新しい“SAC”

ラインアップの拡充を積極的に進めてきたBMWは、世界的に伸長しつづけるSUV市場に向けて、このほど新たに「X2」を送り出した。これによりついにXモデルも1から6までが揃ったことになる。

BMWでは1999年に初代X5を発売したときから、自社のSUVを「SAV(=スポーツ・アクティビティ・ビークル)」と呼んでおり、中でものちに加わった偶数のシリーズであるクーペ系の派生モデルについては「SAC(=スポーツ・アクティビティ・クーペ)」という呼び方をしている。

今回の新型X2もX1のスポーティ版であり、件の「SAC」のエントリーモデルという位置づけとなることには違いない。ただし、上級機種のX6やX4と同じものをただコンパクトにするのではなく、新しい世界観と価値観を具現化すべくキャラクターの違うクルマとして開発されている。

居住性は思ったよりもずっとよく、ラゲッジスペースの使い勝手も高い

かつてBMWのクーペモデルに与えられていた伝統のCピラーのエンブレムを、長い中断を経て復活させたというのも、この新型X2で少しでも何か面白いことをやろうと考えたことがうかがえる。ただし、「SAC」の末弟とはいえ、見てのとおりあまりクーペっぽくないフォルムとされているのが特徴だ。

それもあって、気になる後席の居住性をチェックしてちょっと驚いたことに、記憶にある兄貴分のX4やX6よりもヘッドクリアランスがだいぶ大きいように感じられた。平均的な成人男性の体格である筆者が座って、X4やX6は頭頂部が触れるかどうかぐらいの感じであるのに対し、新型X2はコブシが入る。座面がやや短めながらニースペースは十分に確保されており、背もたれもリクライニングできる。このサイドウインドウ形状ゆえ天地方向がやや狭いのはやむをえないが、居住性は思ったよりもずっとよい。

さらにはラゲッジスペースも十分に広く、使い勝手は高い。アンダーボックスも広く、DC12V電源が選べたり、フックが二重で付いていたり、上部にもひっかけるフックがあったり、左側にはゴムベルトが、右側にはネットのポケットがあったりと、利便性を高めるための心配りが見られる。

リアシートについても、BMWがいちはやくそうしたとおり、40:20:40の3分割式で真ん中だけ独立して倒せるようになっているので、スキーのような長尺物を積みながらも4人の乗員がゆったり座ることができる。

エクストリーム・スポーツからインスピレーションを受けた「M Sport X」

ボディサイズは4375mm×1825mm×1535mmと、1.8mをやや上回る全幅を持つが、全高は日本の機械式立体駐車場にも収まるものだ。

試乗したのは、「X2 xDrive20i M Sport X」というモデル。192ps、280Nmを発生する2リッター直列4気筒DOHCエンジンに8速スポーツATを組み合わせたAWD車であることまではわかるが、「M Sport X」という見慣れないグレード名が目に留まる。

これは既存の「M Sport」がサーキットなどフラットなスポーツをイメージさせるのに対し、3Dのエクストリーム・スポーツからインスピレーションを受けたものだという。ダイナミックなフォルムにグレーのアクセントが印象的なエクステリアをはじめ、内外装には数々の専用装備が与えられている。

なお、「M Sport」は日本にはあえて導入しないらしく、「Standard」と「M Sport X」の2グレード展開となる。パワートレインは下に1.5リッター直列3気筒DOHCと7速DCTを組み合わせたFWDの「X2 sDrive18i」も設定され、合わせて4モデルのバリエーションとなる。価格帯は436万円~515万円だ。

俊敏なハンドリングと軽やかなフットワーク

225/45R19サイズのタイヤは、ややロードノイズ大きめで、ランフラットゆえか路面への当たりの硬さも感じなくはないが、走りは軽快そのものだ。

「xDrive20i」の車両重量は1620kgと、それほど軽いわけでもないものの、やや強化されたMスポーツ・サスペンションが標準装備される「M Sport X」は、俊敏なハンドリングと軽やかなフットワークのおかげで、試乗ステージであった箱根のワインディングを気持ちよく走ることができた。

後席に座ってみても、X4やX6がかなり締め上げられていて乗り心地が硬いのに比べると、新型X2のほうがマイルドで、先で述べた後席の居住性も含め、日常使いでもより不満が出にくいように思う。

動力性能も十分に確保されていて申し分ない。7000rpmからレッドゾーンのところ、6500rpmまでは軽々と回る。8速のトルコンATは、DCTかと思うほどダイレクト感があり、シフトチェンジの歯切れもよく、トルコン付きらしく細かい動きでもギクシャクすることもなく、いいことづくめだ。

新型X2、それはかなりの野心作

このように見た目がよく、実用性も高く、走りも上々と、売れ筋になる要素のそろったよくできたクルマであることはよくわかった。加えてニューモデルらしく安全運転支援システムはもとより、スマホと連携したコネクティビティも充実しているところも魅力に違いない。さらには、香取慎吾氏を起用したコラボレーションなど、かつてない新しい試みをいろいろやっていることにも注目だ。

BMWとしては新しい考えを持ったミレニアム世代の成功者たちにぜひ乗ってもらいたく、ひいてはXモデルの守備範囲の拡大を図り、新しいユーザーにBMWの魅力に気づいてもらうという使命が新型X2には与えられた、実はかなりの野心作でもある。今年50歳になったが気持ちだけは若い筆者も、なかなか気になるニューカマーであった。

[TEXT:岡本 幸一郎/PHOTO:茂呂 幸正]

主要スペック
車種名 BMW X2 xDrive201 M Sport X

パワートレイン

ガソリンエンジン

JC08モード燃費

14.6km/L

価格(消費税込)

515万円

全長

4,375mm

全幅(車幅)

1,825mm

全高(車高)

1,535mm

車両重量

1,620kg

乗車定員

5人

ホイールベース

2,670mm

エンジン種類

直列4気筒DOHC

排気量

1,998cc

エンジン最高出力

141kW(192PS)/5,000rpm

エンジン最大トルク

280N・m(28.6kg・m)/1,350-4,600rpm

燃料

無鉛プレミアム

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岡本 幸一郎
筆者岡本 幸一郎

ビデオ「ベストモータリング」の制作、雑誌編集者を経てモータージャーナリストに転身。新車誌、チューニングカー誌や各種専門誌にて原稿執筆の他、映像制作や携帯コンテンツなどのプロデュースまで各方面にて活動中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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