新型 BMW 5シリーズの高い完成度に百戦錬磨の凄腕評論家も思わず唸った![試乗](2/3)
- 筆者: 五味 康隆
- カメラマン:茂呂幸正
頑固一徹!な設計思想がガラリと変わった
ひと昔前のBMWは、メーカー自らが良いと思うものを、ややもするとオーナーに押しつけるかのような商品設計の傾向が強かった。ジョグダイヤルのようなコントローラーでセンターモニター内の各種設定を操作するiDrive(アイ・ドライブ)なんてその典型例だった。
しかし新型5シリーズでは、iDriveコントローラー自体も使いやすく進化したのに加えて、大型モニターを直接タッチする方式、空中で手を動かすだけでボリュームなどを操作できるジェスチャー式、そして認識レベルを向上させた音声認識操作も可能、といった具合に、どこよりも多彩な操作方法を備えて、オーナーに選択の自由を与えるクルマ造りになっていた。そのクルマ造りの姿勢変化が興味深い。
そんなのどうでも良いよ・・・と思うかもしれない。しかしこうしたクルマ造りの姿勢変化が、新型5シリーズ全体の完成度を大きく高めたと思うので、あえて述べさせていただいた。
より高級車らしい”わかりやすさ”も備えるようになった新型5シリーズ
と言うのも、例えば室内の造りにおいて今までのBMWは、ウッド素材などを効果的に使い質の高さやエレガントさを表現することで、高級な造りを強く追求する傾向が見受けられた。そこには“ウチ”は走りが魅力ですからと主張するかのような、硬派というか真面目というか、若干メーカーの独りよがりも感じさせる、真っ直ぐ過ぎるクルマ造りの主張を漂わせていたものだ。
しかし新型5シリーズでは、解りやすい高級な世界観でもある艶やかさや豪華さ、そしてゴージャス感を適度に取り入れてきている。
例えば、多彩な照明色を調整出来る内装加飾照明のアンビエントライトは、今までのBMWのように落ち着いたエレガントな夜間照明のみならず、六本木ナイトが似合いそうな派手な演出まで様々に変化出来るが、そのどちらにも適合できる室内のデザインや造り込みが施されている、といった具合だ。
このようにエクステリアと同様にインテリアもまた、どのような使用シーンにも適合するカメレオンスタイルといった印象を受ける。
やはりBMW本来の個性、”走り”の魅力は大きくそして味わい深い
勘違いして欲しくないが、ただカメレオン的であるから凄いと言っているのではない。高いレベルでそれぞれの世界観に順応するカメレオンだから凄い、ということ。
その観点では、本来BMW最大の個性である“走り”こそ魅力的であり味わい深い。
個体によって若干新車時の足回りの硬さが残っているモデルがあったが、540i Mスポーツの乗り味は、舌鼓を打ちたくなるほど絶妙なさじ加減で仕上がっている。それは走りの気持ち良さなどスポーツ性に準ずる要素を備えながら、快適性まで備えているということ。
背景には、540iに標準装備される電子制御ダンパー“ダイナミック・ダンピング・コントロール”のサスペンションの効果が大きい。逆を言えば、それを選べない他のモデルでは若干カメレオン特性が薄くはなる。しかし523dも試乗したが、それでもオススメしたくなる世界観は持っていた。
そう言わしめる魅力のひとつが、新型5シリーズの静かさにある。
その静粛性は驚異的なレベルだ
車体の静音・遮音レベルがとても高く、エンジンの回転振動が抑えられる直列6気筒の540iにおいては、エンジンが掛かっているのかエンジン回転計をみて確認する必要があるほど静かだし、走り出してからも不思議なほど静かだった。それは発生する音の反音を出してかき消すノイズキャンセル機構でも付いている?と勘ぐりたくなる(確認したら未採用)ほどで、ドアを閉めた瞬間から外界との遮断感も強い。
最初に乗ったポルトガルでは、路面環境が比較的きれいなところばかり走っていたことと、路面のアスファルトの粒の大きさが異なることなどから、日本の道路環境下でのロードノイズなどが不確定要素だったが、ここで改めて言おう。
やはり日本でも、新型5シリーズの静かさは驚異的なレベルだった。
ちなみに勘違いされたくないので詳しく言うと、静かといっても運転に“必要”な音は、適度な音量で的確に入ってくる。路面状況もロードノイズの質の違いから把握できるし、風が強いなども風切り音からもわかる。まさに無駄な音、不快な音が的確に排除されている印象。その特性と、回転振動が極めて少ない直列6気筒の相性が抜群で、走りの気持ちよさや心地よさが際立つ。
参考までに言うと、そのレベルはリアタイヤからの音をトランクルームの空間で抑制や消音できるサルーンで無ければ得られないと思えるもの。まさに最新のプレミアムビジネス“サルーン”の真骨頂のひとつがそこにあると直感した。
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