実用性と後輪駆動の楽しさを併せ持つBMW 新型118i(3気筒1.5ターボ)試乗レポート(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
コンパクトながら運転しやすく、BMWらしさを備えている
視界は、サイドウインドウの下端が高めでボディ後端のピラー(柱)も少し太いから、側方と斜め後方は見にくい。
前方は前側のピラーが手前(車内寄り)に位置するので視野が開ける。ボンネットが見えることも、今日の5ドアハッチバックでは珍しい特徴で、車幅やボディ先端の位置が分かりやすい。最小回転半径は5.1mだから、後輪駆動らしく小回りの利きも良い。
1シリーズのBMWらしさは、内装にも当てはまる。後輪駆動とあって、前席の中央に位置するセンターコンソールが高い。シートは腰まわりや肩の周辺をしっかりとサポートするので、ホールド性が良い。インパネのデザインを含めて引き締まり感が伴い、開放的な印象は乏しいが、BMWのスポーティー感覚は濃厚だ。
後席の着座姿勢は、天井が低めだから腰が落ち込みやすい。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ弱だ。
前述のようにサイドウインドウの下端も高めで閉鎖感が伴うが、後席に座った同乗者の足が前席の下に収まりやすいこともあり、さほど窮屈には感じない。ファミリーユーザー向けの車種ではないが、大人4名で乗車することも可能だ。
以上のように1シリーズは、コンパクトで運転がしやすく、価格も割安に抑えながら、4名乗車も可能で運転感覚にはBMWらしさを備えている。3気筒エンジンの回転感覚は少し気になるが、燃費性能を向上させた。
118iスタイルは、平成32年度燃費基準を達成したからエコカー減税の対象にも入る。自動車取得税が60%、同重量税が50%、グリーン化特例によって購入の翌年度の自動車税も約75%軽減され、総額では9万円弱の減税を受けられる。BMWの運転感覚を少ない出費で手に入れたいユーザーには、推奨できるクルマとなった。
前輪駆動への移行は当然の成り行きながら、多様化を図るなら後輪駆動で存続させるべき
今後の動向で注意したいのは、次期1シリーズが前輪駆動に変更される可能性が高いことだ。すでに車内の広い「2シリーズアクティブツアラー」と「2シリーズグランツアラー」が、ミニとプラットフォームなどを共通化した前輪駆動で登場している。さらに以前は後輪駆動をベースにした「X1」も、今では同じベースを使うから、1シリーズも前輪駆動に移行するのは当然の成り行きだろう。
X1やアクティブツアラーを含めて、今の前輪駆動は昔と異なり、加速時に操舵感が影響を受ける不都合は解消されている。だから「前輪駆動でも後輪駆動でも、2WDであれば機能に差はない」とする意見が多い。
しかし旋回中にコーナーの出口に向かってアクセルペダルを踏み増していく時などに、感覚的な違いは残る。操舵を行わない後輪を駆動する方が操舵感が滑らかで、加速時に荷重が加わるのも後輪だから、旋回のプロセスがスムーズに進む。そしてドイツ車を日本で購入する価値のひとつに、こういった感覚の違いがあることも事実だろう。
アクティブツアラーとグランツアラーは、後席を畳んだ時の荷室容量が重要だから後輪駆動では成立しにくいが、X1、さらに1シリーズとなれば前輪駆動化には疑問が残る。
特に1シリーズは価格が割安で、ボディも5ドアハッチバックだから、実用性と後輪駆動の楽しさを併せ持つ。最近のBMWは「4シリーズ」、3/5シリーズの「グランツーリスモ」などバリエーションを充実させており、多様化を図るなら1シリーズも後輪駆動で存続させるべきだろう。
前輪駆動のアクティブツアラーでは、全幅は3シリーズセダンと同じ1800mm、最小回転半径は5.5mと大回りだから、1シリーズが前輪駆動になると取りまわし性の悪化も懸念される。
このような日本のニーズがBMWの商品開発で重視されるとは考えにくいが、1シリーズを後輪駆動で残し、なおかつダウンサイジングの潮流に合わせて巧みなプロモーションを行えば、日本のBMWにとって新しい展開が開けると思う。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正]
BMW 118i Style 主要諸元
全長x全幅x全高:4340x1765x1440mm/ホイールベース:2690mm/車両重量:1430kg/乗車定員:5名/駆動方式:後輪駆動(FR)/エンジン種類:直列3気筒DOHCツインパワー・ターボエンジン/総排気量:1498cc/最高出力:100kW(136ps)/4400rpm/最大トルク:220Nm(22.4kgm)/1250-4300rpm/トランスミッション:電子油圧制御式8速AT/メーカー希望小売価格:3,440,000円[消費税込み]
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