ML63 AMG 試乗レポート/九島辰也(2/2)
- 筆者: 九島 辰也
- カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
高回転はまさに「サーキット感覚」の最強オンロードSUV
エンジンは前述したように5.5リッターV8+ツインターボが搭載される。組み合わされるのはAMGスピード・プラス7Gトロニック。ノーマルの7Gトロニックをコンピューターチューンしたものだ。
ちなみに今回、デュアルクラッチの採用を考えたかという質問には「ノー」という返事がきた。トーイング(牽引)を考えた場合、トルクコンバーターの方が発生したトルクが途切れず安全だからだそうだ。
いい忘れたが、このエンジンにはスタート/ストップ機能が付いている。エンジン自体を直噴式にし、ピエゾインジェクターを採用しているが、それ以外にもこうした技術で省燃費を高めた。
この他にフューチャーしたい装備といえば、アクティブ・カーブ・システムというデバイスがある。
これはフロントとリアのアクスルにあるアクティブ・アンチロールバーがクルマの挙動を察知してロールを抑えるというもの。ただし、実際にはまったくロールしないわけではなく、適度な角度をつくりだす。この方がドライバーにクルマの状況を知らせるという意味では安全であることは間違いない。
では、実際にこのクルマを走らすとどうなのか。
エンジンをかけスタートして5分もしないうちに惚れたのはサウンドである。3,000回転後半からレーシングカーっぽい音が顔をのぞかせ、4,000回転中盤ではそれが本格的にうなりだす。そして5,000回転以降はまさにサーキット走行しているような感覚を得られるから楽しい。
パドルを駆使して走れば、ブリッピングでそれをさらに味わうこともできる。もちろん、そのときの加速感はいわずもがな。ガバッと踏み込めばシートにカラダを押し付けられることになる。
ただ、そのときも挙動を乱すことなく高い操作性を持つのがAMGというかメルセデスのすごいところ。どの領域でもコントロール性は非常に高い。
また、スタンダードのMクラスのトラクションが前後50:50なのに対し、このクルマは前40:後60であることも見逃せない。コーナリングでのスポーティさを高めるのが目的だが、その効果はワインディングで容易に感じ取れる。コーナー入り口でスッとステアリングを切ったときの挙動と出口でアンダーステアが強くなりすぎないのがなんとも気持ちいい。
なんて感じでひとつひとつ項目を挙げていくと切りがないのでこの辺にしておくが、基本性能の高いMクラスだけにここまでオンロード色を濃くしても破綻がない。
試乗後は、最強のオンロードSUVではないかと思った。
日本ではX5 Mやカイエンターボに押され気味の印象もあるが、新型はそれを巻き返す実力と魅力を兼ね備えている。
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