ボルボの未来を決定付ける新たなマイルストーン/ボルボ 新型「XC90 T6 AWD」試乗レポート(2/5)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:和田清志・ボルボ・カー・ジャパン
既存モデルに搭載されるやいなや、高い完成度で驚かされた「Drive-E」パワートレイン
この新型XC90について語るとき、絶対にハズせないのが前出の「ドライブ・イー」というパワートレーン戦略だ。
環境負荷低減という観点からスタートしたこの戦略は、ボルボに現存するすべてのエンジンを今後4気筒2リッター以下に抑えるラインナップに変更していくというもの。そしてそのパワートレーンのすべてを100%自社開発で行うということ。近い将来、電気駆動(PHEVなど)にも対応させる。
ボルボはこの自ら設定した高すぎるハードルを越えるため、巨額(日本円にして約320億円!)の投資を行い、構造上非常に困難であると言われるガソリンエンジンとディーゼルエンジンの基本アーキテクチャの共有までを可能にして、究極のモジュール化を叶えた。
そしてそのエンジンが徐々に既存のモデルに搭載され始め、日本に上陸したのが2014年あたりのこと。特に昨年2015年はこの「ドライブ・イー」エンジンが既存のプラットフォームにどかどか乗っかったものが、黒船のごとくどしゃっと導入され、色々あるけどどれもすごくいいんですけど! な、悩んでも悩んでも悩みきれない「一体どれ選んだら正解やねん無間地獄」に、ユーザーを陥し入れた罪は深い。
そう、そうなんです。ボルボがすごかったのはこの「ドライブ・イー」パワートレーンの仕上がりの質感が、どれも素晴らしかったことに尽きる。ガソリンものもディーゼルものも、どれもいきなり「やります!」ってそんなこと初めて、ぽっと出で作ったとは思えないくらいの高い完成度だった。まるで何十年も熟成させたかのようなエエ感じだったのである。
「Drive-E」を最初から想定し設計された新プラットフォーム「SPA」を初採用
だから、XC90がその「ドライブ・イー」が搭載されることを前提にあらかじめいちから設計された初めてのモデルになる、と聞いたら、そりゃ間違いなくいいだろうという確信はあった。
しかも世界中で売れに売れているミドルサイズSUVというパッケージを、その「ドライブ・イー」新時代の一発目に選んだのだ。もう、売る気以外なにものでもないに決まってる。
しかもさらに新世代プラットフォーム「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」という、またまた混乱しそうな名前の付いたものが初採用された。
そんなわけで、XC90は、構成する部品の90%が新規部品で出来ている。新プラットフォーム、ドライブ・イー パワートレーン開発、生産工場への投資も含めば、その投資額はなんと1兆3000億円だという。
[デザインもいちから新しく生まれ変わった・・・次ページへ続く]
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