大人の安全装備は常識 では子供の安全は・・・ チャイルドシート誤使用6割、致死率29倍という真実(2/3)

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子供をドライブ中の危険から守りたい・・・そう考えるのは親なら世界共通

さて、これまでのボルボの安全への取り組みがザッとお分かりいただけたかたと思う。

ここからが本題。

チャイルドシートへの考え方は、チャイルドシートメーカー、また自動車メーカーともに多種多様だ。もちろん衝突した際に被害を最小限に抑えることは共通の最大目標だが、今回はこどもの安全とチャイルドシートについて興味深い話が聞けたのでご紹介したい。

「チャイルドシートの設置の仕方」というと、設置方法と思う人もいるだろう。確かに6割以上が誤使用しているという事実がある中、正しい設置方法は大前提だ。だが、それは各メーカーの設置手順をご覧いただくとして、今回はそうではなく、正しいおとなの知識と行動がいかにこどもの安全において重要であるかという観点から話をしていきたい。

ボルボがチャイルド・セーフティに着手したのは1964年。「子供も大人と同等の安全性を確保しなければならない」という理念のもと。以来、スウェーデンにあるボルボのセーフティセンターでは、成人に加え、乳児やこどものダミー人形も用意して衝突実験を行っている。

自社内に事故調査隊を持ち、50年近くに渡って蓄積された4万件超、7万人以上の実際の事故データの分析結果を踏まえ、新型車の安全機能開発にそのノウハウを提供してきたと同時に、チャイルド・セーフティへの取り組みも一層強化させていった。

そんな研究実験の中にはこんなデータがあると益田氏は言う。

「0歳から15歳までの子供が標準的なシートベルトを使うだけでも、使っていない場合に比べて約68%もリスクを減らせることが判明しています。さらにジュニアシートやブースタークッションなら約77%、後ろ向きのベビーシート/チャイルドシートならば、約90%もリスク低減につながったのです。」

ボルボはチャイルドシートの考え方について持論がある。

それは、子供を守る上で重要なことは、子供の年齢や身長、体重に対して適切な子供用レストレインツ(チャイルドシート等の身体拘束装置)を用いる必要があるということ。そして、できる限り長く「後ろ向き」チャイルドシートを使用すること。

最後に一番重要なことは大人が正しい知識を持ち、安全への認識を高めてもらうこと。

こどもを守れるのは大人だけ。大人の誤解が過ちをまねくということを知ってほしいという。

実際の事故では、チャイルドシートが正しく取り付けられていなかったり、子供の年齢や身長、体重に対して適切な子供用レストレインツを用いていなかったために、子供がケガをしたり、また最悪の場合、亡くなってしまうケースが後を絶たない。その中には子供に対してチャイルドシートなどのレストレインツを全く使用していなかったケースさえある。

その原因として、おとなが正しい知識を知らなかったということが非常に多いという事実。チャイルドシートの取り付け方が誤っていることに気づかず、正しく取り付けられていると思い込む。さらに後ろ向きチャイルドシートから前向きチャイルドシートへ取り替える適正年齢が1~2歳だと思い込む。あるいはシートベルトを正しく調節したと思い込んだりと・・・。そうした誤解が子供の命を危険にさらしているのだ。

ブースタークッションに座る子供が、肩から掛けるべきショルダーベルトを脇の下に通したり、ラップベルト(腰回りを通すベルト)を子供の足のつけねを押さえるように装着せず、お腹の柔らかいところにかけているケースも非常に危険でよくある間違いだという。

特に日本で人気のミニバンを例に挙げると、フロントシートからセカンドシート、セカンドシートからサードシートへと移動がスムーズな分、走行中でも子供が駄々を捏ねれば、つい自由に行き来させてしまう親も多いのではないだろうか。この時、万が一追突事故に遭遇したとしたら、目も当てられないこととなるのは、容易に想像がつく。親はシートベルトで拘束され、故にエアバッグも正しい位置で受け止めるが、拘束されていないこどもは飛び出してしまい、フロントガラスを突き破ったり、車外に放り出されたりすることになる。

つまり、親にはもっと真剣に安全のことを考えてもらい、根本の意識改善をするだけでも、万が一の時の被害は随分と低減されるはずだ。

スウェーデンでは3歳、できれば4歳までは後ろ向きでチャイルドシートを使用するという事実

安全に長年取り組むボルボが声を大にして言いたのは、安全装備は適切に正しく使用するだけで、その安全性は高い確率で保証され、リスクを低減させてくれるということだ。

実はボルボ、これまでの研究結果から、3歳、できれば4歳までは後ろ向きでチャイルドシートを使用することを推奨している。現に交通安全先進国である本国スウェーデンではこれが常識とのことらしい。実に興味深い。

ここで「後ろ向き」という態勢で子供を座らすことに、疑問を感じた人もいるとおもう。

確かに0~2歳くらいまでの乳児期は、ベビーシートを後ろ向きにして座らせるのは日本でも一般的だが、大きく成長するに従って、前向きに座らせる傾向にある。

この後ろ向きチャイルドシートを自動車メーカーとして初めて開発したのが実はボルボだ。長年の研究結果に基づき、後ろ向きチャイルドシートを提唱する理由を、

「子供の事故で一番多いのは首頸椎の損傷です。子供は大人に比べて頭部の比重が大きく、前向き態勢では衝突時に首に負荷が集中してしまいます。成長過程で骨などが発達中の時期では、その強い衝撃を子供の首や筋肉では受け止められないのです」と、益田氏は説明する。

「子供が幼いうちは、首の筋肉がまだ十分発達していないことを、ほとんどの親が認識しています。しかし、骨も発達が未熟だということは、あまり知られていません。後ろ向きのシートは、車が衝突した時の負傷リスクを大幅に下げるので、激しい正面衝突があった場合などは、生死を分ける要因にもなります。」

実は前向きと後ろ向きとでは、衝撃時、首にかかる力は約7倍の差が生じるデータがある。驚きだ。

だからこそボルボは、できるだけ長く後ろ向きに座らせることと、少なくとも3歳~4歳頃までを推奨しているのだ。

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筆者MOTA編集部

MOTA編集部。編集部員は、自動車雑誌の編集者やフリーランスで活動していた編集者/ライター、撮影も同時にこなす編集ディレクターなど、自動車全般に対して詳しいメンバーが集まっています。

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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