フォルクスワーゲン ゴルフR 新型車解説/渡辺陽一郎(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正・オートックワン編集部
動力性能が高いだけでなく環境にも配慮
新型になったゴルフRが搭載するエンジンは、前述のように直列4気筒2リッターのターボ。最高出力は280馬力(5100~6500回転)、最大トルクは38.7kg-m(1800~5100回転)に達する。V型6気筒の3.5~4リッターに匹敵する性能だ。
ちなみにスバル「レヴォーグ2.0GTアイサイト」が搭載する2リッターのターボは、300馬力(5600回転)/40.8kg-m(2000~4800回転)。ゴルフRは驚くほどのパワーではないが、幅広い回転域で高いトルクを維持していることが特徴だ。
またゴルフRは、動力性能が高いだけでなく燃費にも配慮した。アイドリングストップも装着して、JC08モード燃費は14.4km/L。レヴォーグ2.0GTアイサイトにはアイドリングストップが備わらず、13.2km/Lにとどまる。JC08モード燃費が日本の基準であることまで考えると、ゴルフRはバランス良く性能を高めた。
ゴルフRの駆動方式は、4MOTIONと呼ばれる4WD。電子制御式の油圧多板クラッチを使うタイプで、機能的には日産「GT-R アテーサE-TS」などに似ている。
ブレーキ制御も進化しており、コーナリング時に内側のホイールに制動を加えることで、旋回軌跡の拡大を抑える働きもある。ホイールが空転した時は、そこを制動をすることで駆動力の伝達を保つ。
充実の安全装備
ゴルフRはゴルフの最上級モデルとあって、装備も充実している。安全面では、プリクラッシュブレーキ、レーンキープアシストなどを標準装着した。走行性能を高める機能には、ショックアブソーバーの減衰力やパワーステアリングの操舵力を制御するアクティブシャシーコントロールの「DCC」が備わる。アルミホイールとタイヤは18インチだ。内装では本革シート、カーナビも標準装着している。
ゴルフRの価格は529万8000円。ゴルフハイライン(299万円)にDCCパッケージ、レザーシート、カーナビ、ディスチャージヘッドランプなどを装着すると、おおむね390万円になる。2リッターエンジンを搭載して大幅に走行性能を高めた対価は、140万円くらいと考えれば良い。
ならばゴルフRと同じ2リッターエンジンを積んだゴルフGTI(383万3000円)と比べたらどうか。ターボの過給圧などが異なり、ゴルフGTIの最高出力は220馬力(4500~6200回転)、最大トルクは35.7kg-m(1500~4400回転)になる。
ゴルフGTIもDCC&18インチアルミホイール、レザーシート、カーナビなどはオプション設定。これらを合計すると、細かな装備の違いも含めて70万円前後の上乗せだろう。車両の価格と合計すれば約453万円になる。
つまり、ゴルフRはゴルフGTIに比べて最高出力が60馬力、最大トルクは3kg-m高まり、その対価が約77万円というわけだ。
客観的に判断すれば、ゴルフで最も買い得なグレードは1.4リッターのターボを搭載するハイライン(315万9000円)。1.2リッターのコンフォートラインよりも36万円高いが、動力性能/リアサスペンション(ハイラインは独立式)/装備の違いを考えると、約50万円の機能が加わる。ハイラインはコンフォートラインに比べて14万円くらいは割安だ。
ゴルフGTIはハイラインよりも割高だが、装備の違いを補正すると、60万円前後の上乗せで動力性能の高い2リッターのターボが手に入る。このあたりまでなら許容範囲だろう。
しかしゴルフRになると、ゴルフGTIと同じエンジンで、チューニングの対価が前述の77万円に相当する。これはちょっと割高な印象。「最高のゴルフ」を手に入れられる満足度をどのようにとらえるかで、評価が変わりそうだ。
ゴルフRの購入を考えているのであれば、ゴルフGTIと乗り比べて、見積書も比較した上で結論を出すと良いだろう。
この記事にコメントする