【解説】軽ワゴンNo.1の燃費「32.4km/L」を達成!スズキ 新型ワゴンR“S(スーパー)エネチャージ”新型車解説/渡辺陽一郎(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫
ヒーターの性能を高めたことも特徴だ。エンジンの始動直後には、CVTクーラーに冷却水が流れるのを遮断し、水温を早期に上昇させてヒーターの利きを高める。FAを除く全グレードに運転席のシートヒーターを装着し、4WDでは助手席にも備えている。
このほかターボを装着したエンジンを搭載する「ワゴンRスティングレー T」には、車間距離制御のないベーシックなクルーズコントロールも採用した。
内外装もアレンジされ、すべてのグレードにわたってフロントマスクは存在感を強め、内装の質感も向上させた。
お買い得グレードは、最良燃費で装備も充実している「FZ」!
マイナーチェンジを受けたワゴンRのグレード構成は、標準ボディがFA/FX/FZの3種類で、ワゴンRスティングレーにはXとターボのTを用意している。標準ボディでは、現行型でカットされた最廉価グレードのFA(107万8,920円/2WD・CVT)が復活。従来の売れ筋だったFXリミテッドは、FZ(137万2680円/2WD・CVT)に変更されている。
そしてJC08モード燃費が「32.4km/L」になったのは、標準ボディのFZとスティングレーXのみ。FXは従来と同じエネチャージで「30km/L」を踏襲し、FAにはエネチャージやアイドリングストップが付かないので「26km/L」に下がる。ターボのスティングレーTは従来と同じ「27km/L」だ(燃費数値はすべて2WD)。
そこで最も買い得な標準ボディの新型FZと従来のFXリミテッド・レーダーブレーキサポート装着車の価格を比べると、FZが4万4280円高い。ただし装備も上級化して、前述の運転席シートヒーター(従来型は4WDのみに装着)、ステアリングオーディオスイッチ、フロントバンパーのLEDイルミネーションを加えている。これらは少なくとも2万5,000円には価格換算されるので、燃費向上に要した価格上昇は2万円弱だろう。
実用燃費がJC08モードの85%、レギュラーガソリンの価格が1リッター当たり170円とすれば、1km当たりの燃料代は、従来型のFXリミテッド(あるいは新型FX)が6.7円、燃費を向上させた新型FZが6.2円になる。約2万円の実質価格差は4万km前後で取り戻せる計算が成り立つ。
しかも前述のように静粛性なども向上したから、FZに切り替わったメリットは大きい。
それにしても「燃費競争はどこまで行くのか?」と改めて思う。新型ワゴンRの燃費向上にアルトエコの技術が使われたことから分かる通り、スズキ車が変更を受けるたびに、既存車種に使われる最先端の低燃費技術が投入される。
階段を登るように、燃費性能が向上していく。となれば新型ワゴンRの低燃費技術がアルトエコにも採用されるだろう。
今回のワゴンRは「30km/L」が「32.4km/L」になったから、燃費向上率は108%だ。「35km/L」のアルトエコは「37.8km/L」になり、ミライースの「35.2km/L」を追い抜く(アクアの「37km/L」も抜いてしまう)。もちろん、ミライースも負けてはおらず「38km/L」を達成。やがて「40km/L」になるのか・・。
燃費性能を過度に追求すると乗り心地や走行安定性が悪化することもあり、何よりも大切なのは機能のバランスだ。とはいえ今の軽自動車が展開する燃費競争は、ユーザーにとって驚嘆を伴う一種の劇場型アミューズメントになりつつある。良し悪しは別にして、競争は興味を引きつけて売れ行きにも結び付く。
これからは小型&普通車が相当に奮起しないと、軽自動車の新車販売比率が50%に達しても不思議ではない。ただし行き過ぎると増税を招くなどの不都合が生じる。
軽自動車の機能と同様、クルマの売れ行きもバランスが大切だ。小型&普通車を開発する皆さんには、もっともっと頑張っていただきたい。
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