スバル 新型アウトバック 試乗|アウトドア派からも支持される本格クロスオーバーが更なる個性を手に入れた(1/2)
- 筆者: 藤島 知子
- カメラマン:和田 清志
2017年9月にマイナーチェンジした新型アウトバックに早くも試乗
本格派志向のユーザーから支持され続けるアウトバック
いまやSUVはさまざまなキャラクターが存在しているが、悪路走破に適した4輪駆動モデルの販売比率がひときわ高いのがスバル。最近のSUVのトレンドは、アクティブなルックスをファッション感覚で乗りこなすクロスオーバーモデルの登場が目覚ましいが、スバル車の場合、降雪地帯で暮らす人たちや、週末は山のキャンプ場に出掛けたり、ウインタースポーツを楽しむために雪山へと言った具合に、轍(わだち)や滑りやすい路面で悪路走破性が求められる場面で心強い味方になってくれる。レガシィ アウトバックは街をスタイリッシュに駆け抜ける一面をもつが、本格派のニーズにも応える頼もしいSUVとして絶大な支持を得て来たのだ。
かつてはセダンのレガシィ B4、ステーションワゴンのレガシィ ツーリングワゴン、そしてツーリングワゴンの地上高を高めた“アウトバック”の3つのボディタイプで展開されていたレガシィシリーズ。日本では2014年にフルモデルチェンジした6代目から、B4とアウトバックの2車種のみをスバルのフラッグシップモデルという位置づけで再定義した。
一方で、残されたツーリングワゴンはアメリカ市場のニーズを受けとめてボディが大柄化し、日本では混み合った道路環境で扱いやすい“レヴォーグ”がツーリングワゴンの役割を引き受ける形とされたのだ。
>>マイナーチェンジでさらに力強く生まれ変わった新型アウトバック[画像99枚]
レヴォーグ誕生でアウトバックの個性がより明確に
そんな事情で立派になったアウトバックだが、フラッグシップSUVに位置づけられたことで、じつは強みに繋がっている部分もある。車種ごとの目的や役割が明確化されると、それぞれのクルマの個性が際立つメリットが生まれるからだ。その証拠に、堂々たる風格を手にしたアウトバックは、それまで「野暮ったい」と囁かれがちだったスバル車のデザインに伸びやかで均整がとれた美しいプロポーションを表現してみせた。
見た目から受ける印象は人それぞれだが、スバルのデザインには機能が裏打ちする理由が随所にみられる。スバルの前身は航空機製造メーカーだが、ガラスエリアの直接視界を確保することが命を守ることに繋がるという思想がクルマづくりにも受け継がれている。
野暮ったく見えた理由は、おそらく直接視界確保への徹底的なコダワリが影響しているのだろう。視界確保とデザインの両立は各メーカーに共通する課題だが、今後もスバルらしいコダワリは守り抜いたうえで、デザインの進化に期待したい。
大幅改良で新型アウトバックが変わったところとは
上質さと力強さが増した新型アウトバックの外観
アウトバックは発売以来、2015年の年次改良で車両周りの死角をフォローするアドバンスドセーフティパッケージの標準設定化、2016年にはアイサイトVer.3に車線中央を維持して走る操舵支援機能を追加したりと、安全面の強化と快適性の向上、走行面の進化にも力を注いできた。
2017年9月に実施された今回の大幅改良では、エクステリアは上質さと力強さが備わったことで、アウトバックとしての個性を強めた。具体的には、フロント周りはフォグランプ周りが力強い造形に刷新されたほか、グリル内を刻むフィンをブラックアウトし、スバルのエンブレムの脇から水平に伸びるクロームメッキがヘッドランプまで繋がる視覚効果を演出。併せて、アルミホイールのデザインも一新されている。
優しく包まれるような室内空間
車内に乗り込むと、フラッグシップモデルに相応しい上質で洗練された空間に優しく包み込まれる感覚だ。
内装色はブラックとアイボリーの2タイプを設定。ブラック基調のインパネには、艶やかなピアノブラックと柔らかな光沢を放つシルバー加飾のパネルがあしらわれているほか、ダッシュパネルのステッチも仕立ての良さを印象づけるひと手間として効果的に作用している。ナビやエアコンの操作パネルは一体型のフラットパネルで囲われていて、先進感を与えている。
ちなみに、ディーラーオプションのビルトインナビはパイオニア製のものに変更。モニターが鮮明に映し出されるだけでなく、タッチパネルは操作時のレスポンスもいい。
今回試乗したのは標準仕様。とはいえ、こちらでも十分に贅沢な仕様が備わるのはフラッグシップモデルならでは。明るい色合いのアイボリー本革シート(オプション)に座ってみると、見晴らしがよく、広々とした室内空間とあいまって居心地の良さを与えてくれる。面積が広くとられたシートはお尻と腰の部分にパンチング加工が施されているもの。大らかな形状でも体圧で身体が適度に沈み込むので、女性の私が座っても身体の収まりがいい。
車幅が広いぶん、後席は身体周りにゆとりが得られるほか、膝周りは足が組めるほどの広さを確保。前席と同様にシートヒーターが標準装備されているほか、カップホルダー付きのアームレストが備わっているので、移動中にくつろげる。
荷室の良好な使い勝手はワゴンの老舗ブランド“スバル”ならでは
気になる実用面については、後席は60:40の分割可倒式シートを採用。背もたれをアレンジする際は電動テールゲートを開いて、荷室側から壁面のレバーを軽く引けばワンタッチでパタンと倒せる。荷物を抱えていても手軽に扱えるので、片手で操作したい時には重宝しそうだ。
荷室の壁は凹凸が少なく、カーペットの処理も丁寧。4輪駆動のモデルでありながら、荷室の床下にはクルマに常備しておきたい小物が収納できるスペースまで用意されているのも嬉しい。ほかにも、電源として活用できるシガーソケット、スマホなどを充電できるUSB端子は前後席に合計4箇所も設定する充実ぶりも、今ドキのニーズにマッチしている。
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