BMW 550i 試乗レポート(2/2)
- 筆者: 金子 浩久
4リッターV8で407psを発生しながらも約40%も燃費を向上
550iセダンで、コーナーとアップダウンの連続する箱根の芦ノ湖スカイラインへと走り出した。
まず驚かされたのが、乗り心地がソフトなことだった。路面の凹凸や舗装の荒れなどが、ハンドルを通じて感じられながらも、それらの不快感をキレイに遮断している。その上、柔らかくてマイルド。歴代の5シリーズは、もっとピシッと折り目が入った乗り心地だったような記憶があるのだが・・・。
快適性が高い上に、550iのコーナリングはとてもスポーティだ。大きく、軽くないクルマのはずなのに、もっと小振りなクルマを運転している気がしてくる。
61.2kgmの最大トルクと407psの最高出力を発生するツインターボV8エンジンはパワフルで、急な上り坂をまったく意識させない。スロットルペダルを大きく踏み込まなくても、天下の嶮をスムーズに加速していく。
最大トルクは1,750回転から発生しているから、この加速力にもうなずけてしまう。ペースを上げていくとロールが目立ってくるので、センターコンソールにある「ダイナミック・ドライビング・コントロール」のスイッチを「ノーマル」から「スポーツ」へ変えてみた。
「スポーツ」では、エンジンレスポンス、8速オートマチックトランスミッションのシフトタイミング、ダンピングの設定がスポーティに変更され、さらに「ダイナミック・ダンピングコントロール」と「ダイナミック・ドライブ」の働きによって、ロールも抑えられている。
また、時速60キロ以上ではリアホイールがフロントホイールと同じ方向に素早く向きを変える「インテグレイテッド・アクティブステアリング」も、スポーティなコーナリングに貢献している。
タコメーターの下縁部分には、「Efficient Dynamics」と記されたメーターが設けられていて、スロットルペダルと連動している。ペダルから足を離すと針が振れ、オルタネーターが回生ブレーキとして運動エネルギーを電力に変換する様子を表示する。
BMWは、これを「マイクロハイブリッド・テクノロジー」と呼び、今まで捨てていたエネルギーを電気としてバッテリーに蓄え、エンジンの負担を減らしている。
その狙いは、もちろん、燃費の向上とCO2排出量の削減だ。「Efficient Dynamics」という言葉は「より少ないエネルギーで、より高い性能を」という意味で使われている。
この回生ブレーキだけでなく、ガソリン直噴、ターボ、8速AT、電動パワーステアリングなどと総合することによって、旧型よりも10・15モードで約40%も燃費を少なくしているというから驚いた。
550iは、あらゆる動きが、きわめて滑らかで緻密というBMWの特徴にさらに磨きが掛けられている。快適この上なく、贅沢で速い。
550iはカタチだけでなく、あらゆる制御が電子とデジタルによって司られた最新の高級スポーティセダンだった。大きくなったボディサイズ以外の弱点を見つけ出すのは難しいだろう。
この記事にコメントする