ポルシェ 911カレラ4/カレラ4S 試乗レポート/河口まなぶ(2/2)
- 筆者: 河口 まなぶ
- カメラマン:ポルシェジャパン
二駆の安定性が高まった結果、四駆との差が減った
では実際に走らせての印象だが、ファーストインプレッションとしては、これまでのどのモデルよりも二駆と四駆の差が少なく感じられた。
先々代タイプ996のカレラ4/カレラ4S、先代タイプ997のカレラを所有していた僕の経験からすると、996や997の頃は二駆と四駆の差は走らせた瞬間に伝わってくるものだった。フロントに駆動システムが備わることで前軸重が重くなり、前後重量配分も変わるわけだが、こうした違いがそのままステアリング・フィールに現れていたと言っていい。
もちろん996から997へと代が進むに連れて二駆のカレラでも安定性は高まっていったわけだが、それでも四駆と比べると明らかに安定性の高さが違いとして感じられたし、997でもカレラ4/4Sの方が落ち着きのあるキャラクターに感じられた。
そうした背景からすると、現行型のタイプ991では、ファーストインプレッションとして二駆と四駆の差はわずか…と感じられた。
まず理由のひとつとしては、タイプ991となって二駆のカレラ/カレラSの安定性が圧倒的に高まったことにある。事実普段使いでカレラ/カレラSは、RRであることを意識させない乗り味・走り味を有している。加えて先述したように、進化したPTMが頻繁に駆動を切り離したり、できる限りRR状態を維持しようとするため、フィーリングとして四駆を感じるシーンが減った。
徹底的に4WDのいいとこを取り、悪いとこを排除
しかし実際にカレラ/カレラSとカレラ4/カレラ4Sを直接乗り比べれば、体感としての違いはあるだろう。車両重量は約50kg重くなるため、この違いがフィーリングの差となるはずだ。
おそらく直接乗り比べれば、カレラ4/カレラ4Sの方がフロント周りにピタっとした落ち着きがあり、ステアリング・フィールも若干手応えがあるだろう。そしてコーナーからの脱出では、フロントホイールが生み出す駆動の感触がステアリングを通して手のひらにインプットされるはずだ。
しかし、それもあくまで直接乗り比べれば、という前提での話。カレラ4/カレラ4Sだけを試乗した時には、そうした差を意識させないほどスッキリとした、RRの911に近い感覚があるといえる。
とはいえ、トラクションの高さと安定性の高さは抜群で、今回の試乗ルートではそれが存分に発揮された。
天候は気温が低い上に雨で、装着タイヤも19インチサイズのピレリソットゼロというウインタータイヤを履いていたが、コーナリングは実に安定性が高くウインタータイヤを全く意識させない。またウェット路面の狭いワインディングでは、走り全体にしっかり感があって安心できる要素になっていたことも大切なポイントだ。
つまり今回のカレラ4/カレラ4Sは、4WDの“いいとこ取り”をして、逆にエネルギーロスなどの“悪いとこ”を徹底的に排除した知的な4WDモデルなのである。
また時代の流れにより、このモデルからついにポルシェにも前車追従型クルーズコントロールや自動ブレーキ等を備えたPAS(ポルシェ・アクティブ・セーフ)が備わった他、7速MT仕様では日産フェアレディZでも採用しているシフトダウン時の自動ブリッピング機構も備わった。
こうしてタイプ991は、今回のカレラ4/4Sの追加と細かな装備の追加によって、よりスマートなスポーツカーへと進化を果たしている。そしてこれらの進化が、他のスポーツカーが手にすることのできない、ポルシェ911ならではの“日常使いも厭わぬスポーツカー”という最大の魅力を、より一層強固なものにしているのである。
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