アウディ新型S6・S6 Avant(アバント)試乗レポート/松田秀士(2/2)
- 筆者: 松田 秀士
- カメラマン:オートックワン編集部
気筒休止システムにアイドリングストップを搭載し、燃費は25%アップ!
もともとSシリーズに搭載されるエンジンは、2代目(2000~2004年)で4.2リッターV8エンジンを採用し、続く3代目(2006~2011年)では5.2リッターV10エンジンを搭載してきた。
そして、この4代目で4リッター直噴ツインターボのV8エンジンへとダウンサイジングされた。
5.2リッターV10エンジンでは435psを発生していたが、この4リッターV8エンジンではツインターボによって420ps。ほんの少しパワーダウンしているが、550Nmという強力なトルクを、わずか1,400rpmから5,200rpmというワイドレンジで発生する。このV8ユニット、重量は220kgと軽量化も忘れていない。
また、ターボからインテークマニホールドまでの距離を短縮してレスポンスを良くし、エキゾーストポートをエンジンの内側に設置して、排気がターボに至るまでの摩擦損失ロスを最小限に抑えている。
アウディにいたっては直噴技術は従来から採用してきたもので、改めてのニュースはないのだが新世代ダウンサイジングエンジンの売りは「シリンダーオンデマンドシステム」と名付けられた気筒休止システムだ。
いわゆる大きな出力を必要としないシチュエーションでは、V型8気筒のうち半分の4気筒を休止させて燃費を節約するというもの。
アイドリングストップ機能も加えて、JC08モードでの燃費は「9.6km/L」という。400psをオーバーしたモデルで10km/Lに手が届きそうなのだから驚きだ。これは、旧モデルから25%の燃費アップだという。
さらに、この4気筒モード時に発生するバイブレーションとノイズを低減するためにエンジンマウントを可変して振動を抑え、室内へのノイズにはスピーカーで逆位相の音を出して快適な室内空間を作り出している。
荒れた路面でも路面に吸いつくような安定感
走り出してまず感じるのは、サスペンションがしなやかなこと。旧型ではスプリングだったサスペンションを、電子制御で硬さを可変させるアクティブエアサスペンションに変更している。もちろんダンパーの減衰も可変制御だ。
そして、そのサスペンションの硬さはコックピットから変更できる。アウディドライブセレクトという画面を選択すると、「コンフォート」「自動」「ダイナミック」という3段階の中からチョイスすることができる。この3段階のチョイスは、ステアリングやエンジン・ギアボックスなどが連動して変化するのだが、それぞれを個別にセッティングして自分だけの組み合わせにすることもできる。
この中で、「ダイナミック」という一番硬いセットをチョイスして走っても、これまでのモデルにはなかった乗り心地の良さを体感することが出来た。しかも、スポーティな走りではハンドリング初期の応答性と、コーナリングをし始めた時点からもしっかりした手応えがある。
荒れた路面でのフラットボディ感は、さすがと思わせるほどに安定しており、路面に吸いついている感覚が高い。ただし、ステアリングフィールのニュートラル域に少しフリクションが存在したことが、1,000万円ランクのモデルとしてはもう少し頑張ってほしいところだった。
買うならば、ユーティリティに優れた「S6 Avant」
コーナリングでもうひとつ付け加えると、40:60のセンターデフにスポーツディファレンシャルと呼ばれるリヤデフがセットされている。これは、コーナリング中に外輪をより多く回してアンダーステアを軽減するシステム。つまり、アジリティの高いコーナリング性能に味付けしているのだ。
40:60のリア寄りの駆動にプラスしてこのリヤデフのおかげで、ワインディングでは恐ろしく良く曲がる。さらにトルクベクタリング機能により個別に4輪へブレーキを掛け、アンダーステア等を軽減しているのだ。
さて、シリンダーオンデマンドシステムはメーターパネルのセンターに燃費を確認するインジケーターがあり、この表示バーが白色から緑色に変化し4気筒モードになったことを知らせる。
実際に体験してみたのだが、4気筒になってもほとんど変化を感じず、極めて普通だったことを追記しておく。
0~100km/h加速はS6が「4.6秒」、S6アバントは「4.7秒」。S6アバントは、ワインディングでリアのモーションが若干大きくてロードノイズもやや大きいが、自分が買うならS6アバントだ。セダンとの大きな差がないうえ、ユーティリティに優れている。
S6は、素晴らしいハイパフォーマンスロングツアラーであった。
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