“役付き”ポルシェの最高峰「911 GT3 RS」「ケイマン GT4」試乗レポート(4/5)
- 筆者: 嶋田 智之
- カメラマン:阿部昌也・ポルシェジャパン
“役付き”ポルシェでは今や貴重! MTを駆使して愉しめる「ケイマンGT4」
もう1台、「ポルシェ ケイマンGT4」のネーミングは、レースのGT4規定を睨んでのものというよりも、むしろGT3の弟版的な意味合いからのものといえるかも知れない。加えられている手数もその手法も、911GT3やGT3 RSほどハードコアに寄ったものではない。というと誤解を受けるかも知れないが、決してぬるいクルマなんかじゃない。相当にアグレッシブに仕立て上げられてるのだ。
エンジンは911カレラSをベースに385ps/42.8kgmへと若干ディチューンしたものを移植して、6速マニュアルトランスミッションのみ(!)と組み合わせられている。911のGT3系がPDKのみとなってしまっていることを考えると、僕も含めたスポーツドライビング好きには堪らないプレゼントといえるだろう。
シャシー周りにも大きく手が入れられている。フロントサスペンションは多くのパーツが911GT3から流用されていて、もちろん同様に調整式。リアは形式が異なるので流用こそないが、ジオメトリーは見直され、リンク類も強化され、ダンパーやスプリングも変更され、ストラットにまで手が入れられ……と、実に綿密な改良が行われている。
911 GT3を想わせるエアロダイナミクスへのこだわり
車体そのものは通常のケイマンと同じだが、エアロダイナミクスに関してはしっかりと見直しが図られていて、911GT3に倣ったフロントスポイラーや固定式の大型リアウイング、リアディフューザーなど、明確にダウンフォースを狙ったモディファイが行われ、迫力もたっぷり。およそ20mm低く構えている車高が、さらに拍車をかけている。
もはや911との差異などどうでもいい!と思わせる
ケイマンはラインナップ上のポジショニングとして、スペック的に911を超えることが許されないようなところがある。が、このGT4は、もしかすると通常の911の高性能版であるカレラSを凌ぐ走りをモノにしてるかも知れない。例えばパワーウエイトレシオを見てみると、911カレラSのMT仕様が400psに1395kgで3.49kg/ps、ケイマンGT4は385psに1340kgで3.48kg/psとほぼ同等。0-100km/hが4.5秒に対して4.4秒、最高速が304km/hに対して295km/hという点も、現実的なところではほぼ同等といえるようなものだ。それに911をすでに凌いでいると思しき基本的な運動性能のよさを考えると、総合力ではケイマンGT4に分があるんじゃないか? と思えるのだ。
が、走らせてみたら、そんなことはどうでもいいじゃん! なんて思えてくる。ケイマンGT4、めちゃくちゃ楽しいのだ。確かに加速の力強さも伸びの良さも、結構な実力派のケイマンGTS辺りと較べても一段階上で、単純な速さとしても、もう文句なしである。でも、GT3 RSに乗った直後だったからかも知れないけれど、その速さは持て余してしまうような異次元のものじゃない。ウデに覚えのあるドライバーなら、しっかりと踏んでいける範疇にあるといえる。
[ワインディングの愉しさではポルシェ1かも・・・次ページへ続く]
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