メルセデス・ベンツ新型Sクラス試乗レポート、「絶対王者、それはSクラスであり続けること」(2/2)

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マイナーチェンジでV6ターボは最新世代のユニットへ改められた

さてようやくその走りとなるわけだが、まず今回のマイナーチェンジでエンジンラインナップが刷新された。最高峰モデルとなる「S600 long」と「AMG S65 long」はキャリーオーバーだが、「AMG S63 4MATIC long」にはあのAMG GTゆかりの4リッターV8直噴ツインターボ「M177」ユニット(612ps/900Nm!!)を搭載。ディーゼルハイブリッドとPHVは残念ながら廃止されてしまったが、V8ツインターボは新型になり、V6ツインターボは最新世代のユニットへと改められた。

そして今回試乗のメインとなったマイバッハとS560には、共に4リッターの排気量から469ps/700Nmのパワー&トルクを発揮するV8直噴ツインターボを搭載している。

その走りは”安定のエスと唸らざるを得ない豊潤さ

その走りはまさに“安定のエス”と唸らざるを得ない豊潤さだった。

特にS560 4MATIC longのバランス感覚は、セグメントリーダーとしての条件を余すところなく抑えている。

実はこの試乗の前にボクは、S400も試していた。そして個人的にはノーマルホイルベース(3035mm)と367ps/500Nmのパワー&トルクを発揮する3リッターV6ツインターボ、そして後輪駆動のマッチングが織りなす、まったりとしつつも小気味よい乗り味が一番だと感じていた。Sクラスを相手にコスパという言葉は用いたくないが、これで1128万円というプライスは(しかも税込みだ!)、現代の高級セグメントではやはりコストパフォーマンスが恐ろしく高い。今まで自分には無縁だと思っていた世界が、恐ろしく肌に合ってしまった瞬間の驚き。ドリームセグメントへの入門編としてS400は、本当に文句の付けようがない。

その切れ味、当然ながらのパワー感、思った以上にスポーティだった

しかし憎らしいくらいに、S560のV8ツインターボはこのS400に比べて一枚上手なのだ。その切れ味、当然ながらパワー感、そして絶対的な排気量差が織りなすアクセル開度の余裕。

ゆっくり走ればその存在を見事に消し去り、いざ踏み込めばV8の鼓動を遠くで響かせながら、望んだ速度までストレスなくドライバーを誘ってくれる。

乗り味を支配するのはエアサスの豊かなバウンシング。ゆったりとした周波数で上下するソフトライドを、適度に引き締めるダンパーの制御は絶妙なスポーティさも併せ持っていて、モードを「SPORT」方向へ転じないでも予想以上にキビキビ感がある。

そう。そのハンドリングは思った以上にスポーティなのだ。これは機能を強化したという「マジックボディコントロール」(ステレオカメラで路面を捕らえ、路面状況を事前に察知してダンパー減衰力を自動調整)と、4MATICがもたらすスタビリティのおかげだろう。コーナリング時に自らの車体を最大で2.65度も内側にリーンさせるという「ダイナミックカーブ機能」はS400ほどその効果を体験しなかったが、これは3165mmのロングホイルベースが影響しているのかもしれない。

よく見ればシートの意匠も立体的に作り込まれていて、パンチングレザーもスポーティ。「ワタシはドライビングカーである」と、静かにクルマが語っていたのである。

ショーファー性を強めた「マイバッハ」はSクラスのハイパービジネスユース版

対して「マイバッハ」は、この動力性能をベースによりショーファー性を強めたモデルだった。それを端的に表すのはS560 longからさらにさらに200mm延長されたホイルベースがもたらす後席の居住性。センターに巨大なコンソールを配置し、潔く4人乗りとすることでその快適性はさらに高まり、ビジネスクラスのごとき移動が味わえる。これを「楽しい移動」としないのはやはり快適さや静けさが勝るからで、実際たまった仕事のひとつを、テーブルを引き出すことで移動中にひとつ片付けるはめになってしまった。よって家族と楽しい移動をするというよりこのロングは、エグゼクティブのビジネスパートナーに相応しい一台だと思う。

余談だがもしこのマイバッハがかつてのマイバッハであれば、ファーストクラスと評したかもしれない。しかし実際のニーズはそれほど華美な空間とステイタスを望んではいなかったわけで、「Sクラスのハイパービジネスユース版」としてマイバッハの立ち位置を落ち着けたメルセデスの判断は、正しかったとボクは感じた。

やんちゃな裕福層にこの刺激の組み合わせは垂涎間違いナシ!?

また“運転手側”の意見としては、やはりそのホイルベースが影響するのかS560よりもその動きは全体的にスローだった。もしここに後輪操舵が加わればそれもまた変わるのかもしれないが、それはバカでかいクルマが増えることにもつながるし、話はよりややこしくなりそう。そしてそれよりもカスタマーは「より速さを突き詰めたSクラス」としてAMGを求めたのだと思う。

ちなみにAMGは、ハッキリとその能力をもてあました。900Nmのトルクと4MATICのトラクションによるキック力はシリーズのなかにあって別格を誇り、かつこれに9速のAMGスピードシフトが完璧な所作で応えるから、どこまでも飛ばせる。タイヤサイズは20インチに抑え配慮をしているが、一般的な領域での乗り心地はエアサスながらも固め。そしてスピードが乗るほどに、走りはたおやかになって行く。

こんな性能、日本では使えないよ! というのは正論。しかしドイツ本国ではパナメーラやスーパースポーツたちに向こうを張るために、この性能が本当に必要なのだろう。スポーツ+にモードをスイッチし、アクセルを踏み込めばそこは別世界。ひとたびアクセルを緩めれば、アンチラグを謳った炸裂音がマフラーから盛大にはき出されてアドレナリンがドバッ!と吹き出る。ヤンチャな裕福層にとって、Sクラスの快適性にこの刺激の組み合わせは、垂涎ものだろう。

というわけで総括としては、やはりS560 4MATIC longがSクラスの本命だとボクは思う。しかし心の中では、S400が持つ「Sへの誘惑」が、心をドキドキさせている。

[Text:山田弘樹]

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山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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