燃費改善の終わりが見えない・・燃費の向上に限界は来るの?【教えて!MJブロンディ】
- 筆者: 清水 草一
其の疑問、MJブロンディがお答え致します!
リトルさん、技術というのは、常に終わりが見えないものですよね。逆に終わりがあったら困ります。それ以上前に進めないなんて、悲しいじゃないですか!
ただ、商品という形にするためには、その都度、常に限界はあると考えています。燃費に関しては、節約できるガソリン代と、上乗せされる車両価格のバランスが取れないと、商品として魅力がなくなり、それ以上前に進めなくなります。
実はハイブリッドカーに関しては、すでにモトが取れない部分は大いにあります。
フィットとフィットハイブリッドを比較すると、車両価格の差である36万円をガソリン代の節約で取り返すには、20万キロ以上走らなくてはなりません。つまりモトは取れません。
ではなぜフィットハイブリッドが売れているのかというと、今は「ハイブリッド」という響きに、ブランドとしての魅力があるからです。
このように新しい技術というのは、ブランド面でのプラスアルファがあるので、「どっちがトクか」だけで判断されるわけではありません。しかしそれでも、値段が高すぎたら売れません。そこがその時点での限界点になりますね。
燃費は常に改善されていくので、ユーザーが「どうせもっと燃費のいいクルマが出るだろう」と買い控えるのでは?というリトルさんの考えには、私も同感です。
これは家電製品の世界ではもっと顕著ですね。少し待てばもっといい製品が、もっと大幅に安い価格で買えるに違いないという状況が、ずーっと続いています。メーカー側にすれば蟻地獄です。本当にツライと思います。
ただユーザー側としても、あんまり待ち続けてると、いつまでも古い製品を使っているのは損だな、と感じる時期がやってきます。そこがユーザー側の限界点ということですね。クルマの場合も同様です。
終わりの見えない燃費競争ですが、実は常に大雑把な限界点はあるわけです。
現時点では、カーボンファイバーボディは、あまりにもコストが高いので、超高価なスーパースポーツカー以外には採用できません。軽自動車がカーボンファイバーボディになるのは、相当先のことでしょう。
また、現時点ですでに多くのクルマの燃費が非常に改善されているので、年間の平均ガソリン代が安くなっているというのも、燃費に関する限界点のハードルを高めつつあります。
リッター20キロ走るクルマの場合、年間8000キロ走ってのガソリン代は6万円程度。10年乗っても60万円です。それを半分にしても、30万円しか節約できません。つまり、リッター40キロのクルマは、リッター20キロのクルマのプラス約30万円の範囲内で生産しなければならないのです。
これが、リッター10キロから20キロへの改善の時は、60万円分ありました。60万円高くてもモトが取れたわけです。このように、技術的なハードルはどんどん高くなっているのです。
それを打ち破る要素としては、ガソリンの高騰があります。
ガソリン価格が2倍になれば、一気にハードルは低くなります。
ただしそれはまったく不確実な要素なので、アテにはできません。といった具合に、常にその時点での技術的な限界点はあるわけですが、そこに向かって技術者は日々精進しています。
MJブロンディの「ひとりごと」
技術者は常に前進しなければ存在意義がありませんから、燃費は常に少しづく良くなっていくはずです。
ただ、リッター20キロが21キロになる程度のことは、ほとんど体感不能ですから、ユーザーとしては気にする必要はなく、あえて新型の登場を待つメリットもあまりありません。
燃費の重要性は、今後はどちらかというと下がって行く方向に進むのではないでしょうか。もちろんガソリン価格が再びドカンと上がれば別ですが……。
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