VW 新型パサートオールトラック 試乗 | あらゆる道に対応する“大人”のワゴン

  • 筆者: 伊藤 梓
  • カメラマン:茂呂 幸正

パサートのクロスオーバーモデルを箱根で試す

フォルクスワーゲンの「Alltrack(オールトラック)」といえば、ワゴンモデルである「Variant(ヴァリアント)」から車高を少し上げて、アウトドアやオフロードを想起させるようなスタイルを持つモデルだ。

ボディには、タイヤまわりやサイドを縁取るように黒い装飾がされていて、いかにも「泥がついても大丈夫」というようなスタイルが、男らしくてかっこいい。SUVが人気を博すなか、こういったクロスオーバーモデルも人気が出ていることも頷ける。

今回、パサートに2.0リッターディーゼルエンジンを搭載し、4WDと組み合わせたオールトラックが登場。落ち葉が増えはじめた冬の箱根というもってこいのシチュエーションで試乗することができた。

◆フォルクスワーゲン パサートオールトラックの内外装を画像で見る

搭載されるエンジンはディーゼルのみ

フォルクスワーゲンのなかでは、ゴルフのひとつ上のクラスに位置するパサート。最近では、日本でもフラッグシップセダンのアルテオンが導入されたことで、これまで高級なイメージが強かったパサートもすこし親しみやすいモデルになったように思う。さらに今回導入されたオールトラックは、オフロードもぐいぐい走れそうな道具感のあるモデルなのでなおさらだ。

パサートは、エンジンの種類でいえばガソリンやディーゼル、プラグインハイブリッドのGTEまで用意する幅広いモデルだが、オールトラックは最高出力190ps/最大トルク400Nmを発生する2.0リッター直4ターボのディーゼルエンジンのみを搭載。トランスミッションはデュアルクラッチ式の6速DSGを採用し、パサートでは唯一の4WD(4MOTION)モデルとなる。

これまでワゴンモデルのヴァリアントにも4WDの設定はなかったので、オールトラックはヴァリアントよりも車高が30mm高いだけではなく、より本格的なオフロード志向といえるだろう。

見た目や走りから感じられる、落ち着いた雰囲気

最初にパサートオールトラックを見たときの感想は「思ったよりシンプル!」。ゴルフオールトラックなどは見た目に分かりやすいようなやんちゃなデザインに振っているのに対し、こちらはとてもすっきりした印象。ルーフレールがあったり、バンパーやサイドシルにブラックのアクセントカラーが入っているものの、試乗車のようなネイビーのボディカラーではあまり装飾が強調されないのでよりさりげなく感じる。

それを見て、ジャケットを羽織りつつも、ジーパンやスニーカーではずしているおしゃれな男性が思い浮かんだ。誰もが振り返るような注目はされないけれど、面と向かったときの端々の雰囲気から「この人おしゃれだなぁ」と思わせる絶妙なセンス。フォルクスワーゲンは生活に溶け込みながらも、日々寄り添う安心感とすこしの冒険心を与えてくれるクルマづくりが本当に上手い。

クルマに乗り込んでみると、こちらもやんちゃな感じはなく、しっとりと落ち着いた雰囲気だ。パサートのセダンに乗っているとき同じように高い質感を感じる。ところがディーゼルエンジンを目覚めさせたとき、急に印象が変わった。ぐろぐろとアイドリングする音を聞いて「そういえばオフローダーにもなれる子だった」ということを思い出す。走り出してすぐの低速ではそこまで大きなパワーを感じなかったが、もう少し踏み込んでみるとディーゼルらしいトルクがもりもり湧いてくる。街乗りも良いけれど、高速道路を使ったロングドライブなどの方がこのモデルが得意とするところなのかもしれないと思った。

この日は雨は降っていなかったものの、霧が出てすこし路面は濡れている状態。さらに落ち葉がたくさん積もっているところもあったので、「滑らないように気をつけよう」と最初はそろりそろりと走っていたのだが、クルマがしっかり安定していることが伝わってくる。いつの間にか普段ドライ路を走る速度とそう変わらないペースで走れていることに気づいた。

1680kgの車重を感じさせない軽快なハンドリング

私は自分の行きたい方向へスイスイと進んでくれるフォルクスワーゲンの素直なハンドリングが大好きなのだが、それは4WDのパサートオールトラックでも変わることはなかった。車重は1680kgとそれなりに重いはずなのだが、鈍重さは感じず、峠道でもスイスイとハンドルを切り返してコーナーを走り抜けるのが心地よかった。

第5世代のハルデックスカップリングを採用するフルタイム4WDの4MOTIONは、アクセルワークや路面状況を感知して、前後輪の駆動トルクを100:0〜50:50まで制御するという。おそらくそのおかげだろう、一般道でもウェットの峠道でも自然なペースでスムーズに走れることがとても頼もしく安心感があった。これなら雪国出身の私でも自信を持って年末年始にクルマで帰省することができそうだ。

今回は一般道での試乗だったのできちんと試すことはできなかったが、ドライビングモードに「オフロード」モードがあり、これをオンにすると、急な下り坂を自動でゆっくりと降られるヒルディセントアシスト機能が使えるほか、制動距離をより短くするためにABS制御が最適化され、低速域でもさらに緻密なアクセルコントロールができるようになるという。

大人の余裕と遊び心を併せ持つモデル

街中でのスムーズな走りと、ちょっとしたラフロードでの頼もしい走り。それを涼しい顔でスマートにやってのけるパサートオールトラックは、大人の余裕を感じさせながら、遊び心も持っている素敵な男性を思い起こさせる。

いつものフォルクスワーゲンは、真面目で誠実な印象。もちろんパサートオールトラックも、その路線から決して外れてはいないのだが、休日になると「今日は釣りにでも行ってみようか」とか「話題のお店があるけど行ってみない?」とたまに気の利いた場所に連れて行ってくれるような、ワクワクする気持ちを忘れないでいさせてくれるクルマに思えた(女性ってこういう男性に弱いんですよね……)。

[筆者:伊藤 梓 / 撮影:茂呂 幸正]

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伊藤 梓
筆者伊藤 梓

グラフィックデザイナー時代にミニカーの商品を担当するようになってから、どっぷりと車に魅了されるように。「こんなに人を惹きつける車というものをもっとたくさんの方に知ってほしい」と、2014年に自動車雑誌の編集者へと転身。2018年に、活動の幅を広げるために独立した。これまでの経験を活かし、自動車関係のライターのほか、イラストレーターとしても活動中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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