トヨタ 歴代マークX・マークII “特に印象的だったモデル” 4選+α|歴代マークX・IIを振り返る

  • 筆者: 遠藤 イヅル
  • カメラマン:トヨタ自動車・内田 俊一

トヨタを代表するセダン「マークX」、惜しまれつつ生産終了

かつてはクルマの“標準形態”であり、新車販売でもランキングの上位を埋めていた「セダン」。しかしご存知の通り、ミニバンとSUVの隆盛によって市場はどんどん縮小、各メーカーからもセダンが次々と消滅しています。そんな中、トヨタを代表するセダンとして残っていた「マークX」も、ついに今年2019年の12月に生産を終えることになりました。

マークXは2004年にマークIIの後を継ぐ形で登場し、現行型は2代目で、2009年から販売中です。10年という長いモデルライフの間に幾度かのマイナーチェンジと車種追加を経て、熟成が進んでいます。

前身であるマークIIは、コロナの上位車種というポジションの「コロナ・マークII」という名前で1968年にデビュー。それ以降、マークIIは9世代を重ねました。マークXをマークIIから通しでカウントすると11世代・51年にも達する、とても伝統ある車種なのです。

そこで、生産終了のカウントダウンが近づくマークX、そして前身のマークIIから、印象に残る世代4選+αをお送りしたいと思います。

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優雅でクラシックなスタイルが魅力の3代目マークII(X 30系)

コロナとクラウンの間を埋める車種だったコロナ・マークIIは、1972年の2代目(X10/20系)からは日産 スカイラインを意識してさらにスポーティな雰囲気に。2リッターの6気筒エンジン(M 型)搭載車種も用意されました。

続いて1976年に送り出された3代目マークII(X30系)は、流麗なスタイルから一変してトラディショナルでクラシックな雰囲気に。

カジュアル、スポーティな雰囲気が強かったそれまでのモデルと異なり、高級車路線を採用しました。フロントにはしっかりとグリルが設けられ、丸型2灯に独立したポジションランプによって、グッと高級感が与えられています。ボディも一気に大型化し、クラウンに迫るサイズになりました。

また2.6リッター直6エンジン(4M-U型)を積んだマークII初の3ナンバーモデル「グランデ」の設定や、完全にスカイラインをターゲットにした兄弟車「チェイサー」の登場も話題になりました。

初代から引き継いだ設定の、ピラーレス構造を持つ2ドアハードトップは、3代目にもラインナップ。セダンにも増して優雅なイメージを持っていました。4代目からは4ドアハードトップに変わってしまったので、マークII最後の2ドアモデルでもあります。

圧倒的な販売台数を記録した6代目マークII(X 80系)

1988年から1992年に販売された6代目マークII(X80系)は、バブル景気の追い風もあって、兄弟車のチェイサー、クレスタ(4代目マークII、X60系時代に設定)と合わせて、最も多い月の販売台数が約5万台を記録したほどの大ヒット作です(年間ではありません! 月間でこの数字です)。いかに売れていたのかが伺えます。

当初、爆裂ヒットを記録した5代目マークII

しかし6代目を語る前に、1984年デビューの先代モデル、5代目マークII(X70系)の存在を忘れてはいけません。

クラシカルから直線基調に変化、販売のメインに背が低い4ドアハードトップを据えてヒットを飛ばした4代目の流れを継いで、5代目は高級感を一層アップ。

1985年には、185psを発生する直6DOHC 24バルブツインターボエンジン(1G-GTEU型)を積んだ「GTツインターボ」も追加されたことで、ハイテク装備満載の高級車、さらにハイパワーという“無敵のハイソカー”に進化しました。

5代目マークIIは、日本人の高級志向にフィットする戦略はドンズバだったのです。その結果、5代目マークIIは、コンスタントに月1万~2万台を売り続け、モデル末期でさえ2万台を超える月があったのですから、ただただ驚かされます。

5代目のヒットを受けキープコンセプトでさらなるヒット

売れに売れた70系(5代目)だけに、6代目マークII(80系)は完全なキープコンセプト。とは言え、サスペンションを刷新して走行性能を、ガソリンエンジンを全てDOHC(ツインカム)、もしくはハイメカツインカム化して性能を向上するなどクルマとしての完成度を高めていました。

販売の主力は変わらず4ドアハードトップでしたが、全高を落としてスタイリッシュになった反面、居住性は少々失われています。しかし当時では車内の広さは二の次。兎にも角にも、高級感やスタイリングが大事だったのです。その結果、80系マークII(6代目)も、70系(5代目)以上の販売台数を記録しました。

1990年のマイナーチェンジでは、2.5リッター版を追加。マークII系高性能モデルの代名詞「GTツインターボ」も2.5リッターエンジン(1JZ-GTE)に置き換わり、最高出力は規制値上限の280psに達しています。

なお余談ですが、タクシーでよく見かける「コンフォート」「クラウンコンフォート」「クラウンセダン(6代目)」は、80系マークIIセダンをベースにしていました。

地味ながら良作? 9代目マークII(X110系)

80系以降のマークIIは、7代目(X90系)・8代目(X100系)もキープコンセプトが続き、4ドアハードトップを採用していますが、ボディは3ナンバー専用となり大型化。スポーティ版は「ツアラー系」として独自の路線を歩み、新たなファン層を作り出しました。

ですが、8代目(100系)が出た1996年頃、市場ではミニバンやSUV(当時はまだその呼び名はなかった)が台頭し、すでにセダン退潮の気配が感じられていました。ユーザーは、クルマにユーティリティを求め始めていたのです。

そこで、2000年に登場した9代目(X110系)は、車体の割に室内、特に頭上スペースの狭さが指摘されてきた4ドアハードトップを思い切って廃止。サッシュ付きドアの完全な“セダン”に変わりました。全高も60mmほど上がって、それまでの「低くスタイリッシュ」なマークII像を消し去っています。

このチェンジによって室内空間、居住性は向上し、高い評価を得ました。なお、スポーティ版の愛称は「ツアラー」から「iR」に名前を変えていますが、このグレード名、個人的にはスポーティなイメージがつかみにくかったです…。

9代目マークII、実用性を重視するも…

このように実用性重視に大きく舵を切った9代目マークIIでしたが、市場は一層セダンに厳しい環境に。時代は大きく変わっていたのでした。そこでトヨタは、マークII という車種の潮目を変えるべく、この世代で9代・36年の長い歴史にピリオドを打つことを決定しました。最後を飾った9代目マークIIは、華やかさはありませんが、マジメに作られた良作だったように思います。

ちなみに、この代からチェイサー、クレスタが消え、強固な関係だったマークII 3兄弟が終結しています。代わりに、チェイサー/クレスタの後継扱いで「ヴェロッサ」というセダンが登場しました。これまでの路線とは大きく異なる「イタリア風デザイン」をまとい、「情熱」を押し出していたヴェロッサでしたが、取扱店だったビスタ店廃止の影響や、いささか掴みにくいキャラクターで販売台数も伸びなかったことから、3年を待たずに生産終了してしまいました(涙)。

大胆なモデルチェンジ! 初代マークX(X120系)

ハイソカーの流れを汲んだ高級路線では売れなくなり、実用性に振ったものの往年の輝きを取り戻せなかったマークIIに対し、トヨタは大胆なモデルチェンジを敢行しました。それが2004年登場の初代マークXです。車名こそ変わりましたが、型式的にはX120系なのでマークII直系なのだと伺えます。マークIIから数えると通算10代目となるのも、車名X=10を表していると言えましょう。

マークXの外観は、完全にマークII時代と決別したフォルムとディティールを持っていました。コンベンショナルで冒険があまりなかったマークIIから、大胆なデザインへと変化したのです。全高は再び低くなりましたが、キャビンを大きくしたことで居住性を確保しています。

ツインターボ版は消滅したものの、キャラクターも若返りを図り、スポーツセダンであることを前面に謳いました。プラットフォームがクラウンと共通化されたこと、エンジンがマークII系伝統の直6からV6にスイッチしたことも大きなトピックでした。

そして2009年、2代目マークX(X130系)がデビュー。結果的に、この代が最後のマークII・マークXとなりました。

番外編:マークIIなのにFF!? マークII「クオリス」(V20系)

マークII、マークXは基本的に、一貫してFR(後輪駆動)レイアウトを採り続けていますが、中には変わりダネも存在しました。それが、「FFのマークII」の「マークII クオリス」と、「マークX ジオ」です。マークII、マークXの名を持っていても、内容的には「本家」とは関係ない車種でした。

マークXジオは専用設計のミニバン風ワゴンだったのですが、マークIIクオリスは、国内向けカムリとは別に、北米向けカムリに「グラシア」という別名を与えて仕立てた「カムリグラシア」ワゴンの兄弟車でした。そのため、型式もマークII系の「X」ではなくて、カムリ系の「V」なのです。

車体前後の意匠を当時販売していた8代目マークIIに近づけたことで、見事なまでにマークIIへの変身を果たしています。エンジンはV6と直4が横置き搭載されたのも本家マークIIと異なっていましたが、カムリとは車格が異なるため、マークIIのみ3リッターエンジンが設定されていました。

なお、ややこしいことに、マークIIクオリスの後継ワゴン「マークIIブリット」は、9代目マークIIをベースにしています。つまり、こちらはFRで、「本家のワゴン」ということになります。マークIIがマークXになった後の2007年まで作っていましたので、実はこのブリットが最後のマークIIだったりします。

親しみやすいマークXクラスのセダン復活を祈って

マークIIの栄華を知る世代から考えると、確かにここ数年、マークXの月間販売台数は200~400台前後という厳しい状態。なんだか、隔世の感があり、さみしい限りです。そんな状況では、安定して売れるミニバン、流行から定番に移行したSUVの開発に力が注がれることも、よくわかります。販売台数が少ない車種がカタログからドロップすることは、数え切れないほどのクルマが味わってきましたものね。

しかし、輸入車のセダンが一定数売れていることを思うと、セダンの人気がない、というのは、果たして100%正しい見方なのでしょうか。

消えゆくマークXとは対照的に“復活ののろし”をあげた日産 スカイライン

マークXのライバル、日産 スカイラインも現行モデルの販売は低迷していましたが、先日安全装備やパワートレインの刷新などを行い、大がかりに手を入れて「走りのスカイライン」復活ののろしをあげました。消えゆくマークXとは対照的です。そう思うと、FRレイアウトという今や貴重なセダンで、かつ伝統あるビッグネームのマークXが消えてしまうのは、実に惜しいことです。

セダンにはセダンの良さがあります。需要がないから生産を終える…のではなく、最新のトレンドや技術を盛り込みつつ、セダンの美点をもっと訴えかけてゆくべきだったのでは、と思うのです。

マークXの後継はカムリとクラウン、そしてレクサスESが受け持つことになりますが、シンプルで乗りやすく、親しみやすい2.5リッタークラスのセダンが復活することを祈ってやみません。

[筆者:遠藤 イヅル/画像:トヨタ自動車・内田 俊一]

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筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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