バド桃田選手に重傷を負わせたクルマはハイエースの“パクリ”カーだった! 中国コピー車に潜む本当の怖さとは

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バドミントン男子シングルス世界ランク1位で、東京オリンピック2020出場も確実視されている桃田 賢斗(ももた けんと)選手(25歳・NTT東日本)が2020年1月、遠征先のマレーシアで交通事故に遭遇。運転手は死亡し、桃田選手自身も全身打撲などで病院へ。その後の精密検査で右目の眼窩底(がんかてい)骨折が発覚し手術を実施。全治3か月と発表された。

注目したいのは事故の際に乗っていたクルマだ。一部報道ではトヨタ ハイエースとの記載があったがこれは誤報。実は中国メーカーによるハイエースの“パクリ”カーだった(正確には、そのさらにOEM車)。似てる・パクってると笑ってばかりはいられない、中国コピー車に潜む本当の怖さとは。中国などアジアの新車情報にも精通する自動車ライターの加藤 久美子がレポートする。

>>中国で独自開発されたトヨタ ハイエースのコピー車を画像で見る

目次[開く][閉じる]
  1. 中国製自動車メーカーの“パクリ”カー事情はどう変化した?
  2. コピー車なのに…ハイエースやコースターを堂々と車名に
  3. バドミントン桃田選手が乗っていた1BOXワゴンはハイエース“パクリ”カーのさらにOEM車だった!
  4. これが3点式シートベルト!? ありえない!

中国製自動車メーカーの“パクリ”カー事情はどう変化した?

中国車といえば一時期、世界中のクルマをコピーしたかのような“パクリ”カーが話題になった時期もあった。しかし上海モーターショーなどに出展する大手自動車メーカーの乗用車に関しては、こうしたコピー車はほぼ絶滅したと言っていいだろう。2017年には出展されていた、ポルシェ マカン激似の『ZOTYE(ゾタイ) SR9』や、レンジローバー イヴォーク激似の「LANDWIND S7」なども、2018年の北京、2019年の上海では姿を消していた。ちなみに、「LANDWIND S7」については度重なる裁判の末、レンジローバー側が勝訴し、中国の裁判所がLANDWIND S7の生産中止を命じている。

民族系と呼ばれる中国メーカーの車両に関しても、近年はアウディやBMWなどドイツメーカーに在籍していたデザイナーによって設計されたクルマが増えているので、かつてのような「世界中のクルマの中から中国での人気車両をコピーしました!」という車は激減している。

しかし、その一方でワンボックスやマイクロバスなど、『乗用の商用車』に関しては、まだまだパクリ車が多数存在している。商用車の世界は正規のライセンス生産やOEMもあるため、一見すると見分けがつかない場合もある。もはや堂々とし過ぎていて、パクリの意識すらない模様だ。

コピー車なのに…ハイエースやコースターを堂々と車名に

中国では、トヨタ ハイエース(1BOXバン)やコースター(マイクロバス)は、もはや一つのブランドというか、一般名詞として認識されている。

トヨタ自動車から正式な認可を受けてハイエースをライセンス生産しているメーカーも存在しており、華晨汽車集団有限公司の金杯(ジンベイ) 海獅(ハイエース)がその代表だ。

しかし完全なパクリなのに「九龍 コースター」など「メーカー名+コースター」を付けて堂々と販売されている車もある。

10~18人など多人数が乗れるワンボックス車=ハイエース、それより大きなマイクロバス車=コースター等、勝手に名前を付けたり、通称のような形で呼ばれたりするのも当たり前だ。

中国でも大人気のアルファードもコピー車が存在する!

トヨタ アルファードのパクリ車も存在する。ワンボックスやマイクロバスの世界ではトヨタ車が絶大な人気と信頼を得ているので、外観や内装の雰囲気、車両コンセプトなどもコピーしているのだ。

写真のこちらは、旧型アルファードのパクリ車。

2017年の上海モーターショーに出展されていた、九龍 エフィという車だ。乗車定員は4名~5名とゆったりとした造りで、床は厚いカーペット(これもアルヴェルに良く似ている)が敷かれており、ドアもスライドドアを採用している。

だが、このドアの合わせが最悪だ。ドアの薄さにも驚くが、何よりドアが浮いている(半ドアではない!)。見た目だけは似せたつもり(もちろん、よく見れば全然違うし、内装の質感なども全く違うのだが)かもしれないが、罪深いのはその「安全性」である。コストがかかる安全性の部分までは当然、コピーするはずもない。

バドミントン桃田選手が乗っていた1BOXワゴンはハイエース“パクリ”カーのさらにOEM車だった!

マレーシアで事故に遭った桃田選手が乗っていた車を改めて紹介しておこう。

こちらは、前述した中国・九龍自動車が生産しているハイエースのパクリ車で間違いないが、実は、エンブレムは九龍の車両とは異なっている。これはマレーシアCAM社のエンブレムで車名は「PLACER X」となる。

つまり、こちらは中国・九龍商用車『A6』がマレーシアCAM社にOEM供給した車両ということ。OEMとは、「Original Equipment Manufacturer」の略で、日本の自動車メーカーでも多数存在している。

例えば、三菱 デリカD:2はスズキ ソリオのOEM車で、マツダ キャロルはスズキ アルトのOEM車となる。

ただ単に車両を提供しているだけではなく、トヨタ 86とスバル BRZのように「共同開発」「技術提携」という形のOEM車も近年は増えている。

パクリカーをOEM供給する、中国や東南アジアの自動車メーカー事情

いずれにしても、九龍A6とPLACER-Xのようにパクリ車をOEM供給する体制は、日本の感覚としてはなかなか理解できない。中国や東南アジアのメーカー間ではそれほど珍しい事でもないのだろう。もしかすると、本物のハイエースだと思っている可能性も否定できない?

全長5990×全幅1880×全高2285(mm)でホイールベースは3720mm。シートは10-18席の間で選択ができる。おそらく桃田選手が乗っていたモデルはシート列の感じから18人乗りだったと思われる。

公式サイトのトップページには「BESTSELLER 18SEATER VAN IN MALAYSIA」(マレーシアで最も売れている18人乗りのバン)と誇らしげに記されている。

これが3点式シートベルト!? ありえない!

パクリ車は見た目が一番で、安全性などは二の次である。それが良く分かるのがシートベルトだ。

後部座席に関しては2点式、3点式とあるようだが、カタログには「PLACER X」には全席3点式シートベルトが装備されているようだ(Webサイトなどを見ると腰回りだけの2点式シートベルトの車種も存在するようだ)。

しかし、これも腰ベルト周りはかなり不思議な形状だ。シートベルトメーカーで設計を担当していた知人に見せたところ「これでは、腰回りも肩回りの拘束も全くできないのでは?」と驚いていた。

正しくベルトを着用していたとしても、肩回りの拘束力がとくに低く、頭をぶつける危険が大きい。

ベルトだけではなく、シートレイアウトも問題だ。日本の保安基準では安全な空間を確保するために前席との距離が厳格に定められているが、中国やマレーシアにそのような基準があるかは不明。全長6mとはいえ、6列もあれば前席との距離もかなり近く、怪しい3点式ベルトでは衝撃を受けた際、簡単に前席の背もたれやピラーなどに顔や頭をぶつけてしまいそうだ。

桃田選手のような超VIPを運ぶクルマとしてはあまりにもお粗末で危険な偽(ニセ)ハイエース。日本バドミントン協会は今後、海外遠征時の選手輸送には(ミニバンやワゴンではなく)大型バスの使用を提案するそうだが、重要なのは車のサイズではなく安全性だ。パクリではなく、 “本物の”アルファードやコースターなど、安全性も世界トップクラスとなる日本車を用意してあげて欲しい。

[筆者:加藤 久美子]

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加藤 久美子
筆者加藤 久美子

山口県下関市生まれ 自動車生活ジャーナリスト 大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。出版局にて自動車年鑑、輸入車ガイドブック、整備戦略などの編集に携わる。95年よりフリー。2000年に第一子出産後、チャイルドシート指導員資格を取得し、チャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。 得意なテーマはオリジナリティのある自動車生活系全般で海外(とくにアメリカと中国)ネタも取材経験豊富。愛車は22年間&26万km超の916アルファスパイダー。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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