【ahead×オートックワン】-ahead 6月号- 道とクルマと未来のコト(2/2)

【ahead×オートックワン】-ahead 6月号- 道とクルマと未来のコト
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ルールとマナー

ahead6月号 道とクルマと未来のコト

ヨーロッパの最新モビリティ事情を振り返ったあとで、日本に目を向けると、この日本こそクルマ中心の社会だと思う。それをあらためて感じたのは昨年春、小学校に登校する児童の列にクルマが突っ込む事故が相次いだときだ。

不思議なことに、あそこまで悲惨な出来事が連続しても、通学時間帯の通学路でクルマの通行を禁止すべきという意見は、表面化しない。逆に良く見かけるのは、クルマの安全装備を高めれば事故は防げる、通学路を見直せば安全になるなど、クルマには罪はないという意見ばかりだ。「安全な原発なら大丈夫」「原発の近くに住まなければ大丈夫」という主張と重なるように見える。

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前出した新しいモビリティも同じ。クルマが主役という視点で考える人が多いので、路面電車やバスレーンは車線が減るからダメ、超小型モビリティは遅そうだから邪魔という意見を、タクシードライバーなどの職業運転手でさえ平然と言ってのける。だからスクールゾーンでも「急いでいるから」と平気でクルマを飛ばし、歩行者を蹴散らすように駆け抜けていく。

環境問題や高齢化問題に直面しているのは、日本も同じである。地方都市のデータを見る限り、新型車の環境性能がこれだけ上がっても、運輸部門における温室効果ガスの排出量は増えている都市さえある。交通事故の死者は減った。しかし日本は事故死者に占める歩行者の比率が欧米諸国に比べて異例に高く、65歳以上の高齢者の比率は半分以上に達しているという、極端な国でもあることを知ってほしい。

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「オレには関係ないよ」という人もいるだろう。しかし今は五体満足でクルマを操るドライバーでも、いつか、それが不可能になる日がくる。しかし毎日の生活のために、移動は必要になる。そのとき、路面電車や超小型モビリティなどの乗り物が用意されておらず、住宅地でもお構いなしに飛ばすクルマにおびえながら歩き続けるという状況に直面したら、どう思うだろうか。「あのとき賛成していれば良かった」と気付いても、後の祭りである。

何かの大惨事に巻き込まれて、明日から突然、車イス生活を送らなければならなくなるという可能性もある。僕自身、3年前にフランスで足首を骨折し、松葉づえ姿で帰国したことがある。そのときに痛感したのが、日仏の体の不自由な人に対する対応の大きな違いだ。

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向こうの人々は、弱者をいたわるマナーが身についている。ルールで決められてはいないのに、子供やお年寄りを見かけたら無意識のうちに速度を落とし、車イスでバスに乗ろうとすると周囲の人が手伝って乗せてくれる。海外の道路に標識が少ないのは、ルールで決めなくてもマナーを守る人が多いことが関係しているのではないだろうか。

対照的なのが近年の日本だ。ルールとして定めていないから弱者をいたわらなくても良いと考える人がいるなど、マナーという概念が存在しないかのようである。僕自身、松葉杖をつきながら駅の改札を通ろうとして、後ろから突き飛ばされたことがある。他人事だと笑うなかれ。あなたもクルマを運転している時、制限速度を守って走行している前車を煽ってはいないだろうか?

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ヨーロッパが路面電車や超小型モビリティなどを積極的に導入しているのは、住民サービスという側面もある。税金を投入して路面電車を敷設したり、免許なしで乗れて、税金も安い超小型モビリティを用意したりする。これも交通弱者に対するマナーの一種と言えるだろう。

しかも多くの人々が、社会全体のことを考え、新しいモビリティを積極的に取り入れ、既存の乗り物と上手に使い分けている。とてもスマートに見える。「自分は使わないから不要」という近視眼的な理由で反対する一部の日本人とは対照的だ。

それに都市内でクルマが走りにくいという状況は、クルマ好きにとって決して悪いことではない。最初に触れたヨーロッパ車の魅力を振り返ってみれば理由が分かる。

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彼の地のクルマの魅力のひとつである走りの良さは、都市内でクルマの通行が制限され、郊外や高速道路では逆に思い切り走れるという、メリハリのある環境が生んだものではないかという気がするのだ。

実はこの原稿は、フィアット・パンダで日本一周するという某自動車雑誌の企画に参加しながら書いた。僕は大分〜高知〜松山〜広島〜岡山〜高松〜徳島〜神戸〜大阪と、4日間で約1000㎞を走った。 「パンダで1000㎞?」とビックリするかもしれないが、日本のコンパクトカーで同じことをやるのとは段違いに楽で、しかも楽しめた。クルマはクルマが気持ちよく走れる場所を担当し、それ以外のシーンでは路面電車や自転車や超小型モビリティなどに任せるというヨーロッパの交通事情が、長距離性能の高さに結実しているのではないかと感じたのである。

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もし日本でも、路面電車や超小型モビリティが導入され、バスレーンや自転車道が広まって、モビリティの選択肢が増えれば、これまで乗用車で都市内を移動していた人の一部は、こうした乗り物に移行するだろう。マスコミはその状況を取り上げて、またぞろ「クルマ離れ」と騒ぐかもしれない

しかし悲観する必要はない。郊外の道や高速道路を、ある程度のスピードで移動するという役目にクルマが専念すれば、メーカーもそれに合わせて、走りの性能を重視した車種を送り出すはず。国産コンパクトカーがフィアット・パンダ並みの快適性や安定性を備え、自動車ならではの運転の喜びを感じさせてくれるようになるかもしれない。

しかし、僕たちにとっては、超小型モビリティに代表される新種の乗り物を体験できるという、新鮮な喜びが味わえる。そしてクルマを自由に使えないがゆえに移動に制約を受けていた人たちは、新しい乗り物が導入されたおかげで、これまでよりはるかに安全快適に、移動の自由を手にすることができる。いいことづくめじゃないだろうか?

「変われない日本」という言葉があるようだが、実際はそんなことはない。5年足らずでスマートフォンが携帯電話の主流になったことを振り返れば、日本が移ろいやすい社会であることは明らか。モビリティだって変えられるはず。

そうすれば結果的に、人もクルマも幸せになれる社会になる。

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森口 将之
筆者森口 将之

1962年東京都生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。自動車専門誌の編集部を経て1993年フリーに。各種雑誌、インターネット、ラジオなどのメディアで活動。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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