THE NEXTALK ~次の世界へ~ 本田技研工業 グローバルテレマティクス部 サービス開発室 主任 野川忠文 インタビュー(4/5)
- 筆者: 御堀 直嗣
- カメラマン:佐藤靖彦
情報が生活をもっと豊かにする
インターナビが、防災に力を入れて開発されていることは、先に野川忠文が述べている。2004年10月の新潟県中越地震の際は、「フローティングカーシステム」のデータがあったことで、防災科学研究所から問い合わせが来た。そして、2007年7月の新潟県中越沖地震では、実際に「フローティングカーデータ」を利用し通行実績情報を公開し現地でも検証を行った。
また、アンケートを取ってみると「実際に被災地へ行けて助かった」といった声が集まった。さらに、2011年3月の東日本大震災で、グーグルアース上で閲覧できるKML(コンピュータ言語の一種)で通行実績情報を一般公開した。
【野川忠文】通行実績情報の一般公開を震災翌日に公開をしたことは、「凄いですね」とか、「大変だったでしょう」といった声も戴きますが、これまでの積み上げがあってできたことです。
また、大きな地震が発生した際には、通信でクルマの位置情報を送れる安否情報もはじめており、震災のとき私の妻がたまたまクルマに乗っていて、地震直後に走行している様子を確認でき、しばらくして自宅にクルマが戻っているのを確認できたので、電話がつながらなくても一安心できたというのを、実際に体験することができました。
最初からすべて狙ってこうしようとしたのではなく、通信機能を持ったサーバー型であり、また「フローティングカーシステム」をやってきたことが、いろいろなかたちの展開につながったのです。最初から単一のサービスをと狙っていると、こういうことはなかなか生まれてきません。
もっと大きな括りで、仕組みづくりや仕掛けづくりをして、そこから、それを活かすにはこういうサービスができるというように、仕掛けとサービスは、両輪だと思います。ですから、次はどんなサービスができますか?と、単純に聞かれても、「よくわかりません」としか答えられないのです。
たとえば、何年も前にフェイスブックのようなものが登場するとは想像できなかったのではないでしょうか。世の中の動きは早いです。その変わっていく世の中に、大きなコンセプトを持ちながら、コンセプトに合うサービスを世の中の流れに合った形で追従できるように、仕組みや仕掛けを作っています。
ホンダは、昨2011年11月に「dotsプロジェクト」というのを立ち上げた。dotsとは、デザイン・アワ・トランスポーテーション・ストーリー(design our transportation story)の略であり、インターナビを通じて集められた走行情報と、社会のさまざまな情報を組み合わせることで、「より快適に、環境にやさしく、安全な道のりをデザインする情報を提供」、「もっと人とクルマと世の中のつながりを豊かに」といった想いを具現化するプロジェクトとして発足した。それは、いったいどういったものなのだろう?
API化を進めることとは、たとえば交通情報をホンダの顧客だけでなく、一般的に誰でも使えるようにすることで、これにより、今後どこかの会社が自社の情報とホンダの交通情報を掛け合わせることで、新たなサービスが生まれていくことなども考えられる。
車内のカーナビゲーション画面からだけでなく、パソコンや携帯電話、スマートフォンなどからも、交通情報が見られるようになったというのも、API化の成果なのである。
【野川忠文】ホンダは、カーメーカーというよりモビリティの会社なので、2輪や汎用や、最近では家のことまでやっていて、全体として「生活が豊かになったね!」というのを作って行けたらいいですね。
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