今、スポーツモデルで“最もお得”なクルマってどれ?|オススメベスト3を一挙紹介!【2019年版】
- 筆者: 渡辺 陽一郎
今、最もお得なスポーツモデルとは
最近は安全装備の充実や環境性能の向上のため、クルマの価格が全般的に高まった。特に著しいのがスポーツカーだ。トヨタ 86は、コンセプトとしては若いクルマ好きのユーザーをターゲットにしたが、売れ筋グレードが300~350万円に達する。
マツダ ロードスターは、ソフトトップのエンジン排気量を1.5リッターに抑えたが、S スペシャルパッケージが275万9400円だ。ビルシュタイン製ショックアブソーバーやレカロ製シートを備えたRSは325万6200円に達する。これではコンパクトでも、買い得というニュアンスから外れてしまう。なるべく200万円以下の価格帯から選びたい。
そこでスポーツカーの解釈を少し拡大させよう。コンパクトカーをベースにしたスポーティグレードまで選択範囲に含めたい。このタイプは意外に魅力的だ。大量生産されるコンパクトカーをベースに、スポーティカーを開発すれば、高い性能を割安な価格で提供できる。
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1976年に欧州で発売された初代VW(フォルクスワーゲン)ゴルフ GTIは、まさにこの先駆車だった。今のゴルフは肥大化したが、初代は全長が3730mm、全幅が1610mmだから、現在のVW・up!に近い。割安なコンパクトカーをベースに、走りの楽しいスポーティカーに仕上げた。
ここで大切になるのが、ベース車の優れた素性だ。初代ゴルフ GTIも、ベースとなる1.5リッターエンジンを搭載する初代ゴルフの走りが優れていたから、楽しいスポーティカーになった。コンパクトカーなら何でも良いわけではない。
1位:スズキ スイフトスポーツ
おすすめグレードは「セーフティパッケージ装着車(192万2400円/6速MT)」
スズキ スイフトスポーツは、コンパクトカーのスイフトをベースに開発されたスポーティモデルだ。このクルマでは、まずベース車のスイフトに注目したい。欧州市場などをターゲットに開発され、ボディは軽く、なおかつサスペンションの取り付け剛性などを高めた。軽快で安定した走りを楽しめる。下り坂のカーブなど、挙動が不安定になりやすい場面でも安心して運転できる。操舵感が素直なことも特徴だ。1.2リッターエンジンを搭載したノーマルグレードのRSでも、スポーティな走りを満喫できる。
スイフトスポーツは、このベース車のバランスの取れた走りを生かしながら、性能をさらに向上させた。エンジンは直列4気筒1.4リッターターボで、最高出力は140馬力(5500回転)、最大トルクは23.4kg-m(2500~3500回転)になる。自然吸気エンジンでいえば、2.3リッター並みの性能だ。1700回転くらいからターボの過給効果が感じられ、実用回転域の駆動力が高い。4000回転を超えた領域の吹き上がりも優れ、6000回転付近までしっかりと回る。
カーブでは4輪の接地性が高く、車両重量が1トン以下だから、軽快に向きを変える。ボディの傾き方は少なめだが、無理に抑えた印象はなく、挙動の変化が穏やかだからスポーティな運転を落ち着いて楽しめる。乗り心地も粗さを抑えて不満を感じない。
軽いボディを緻密に造り込んだことがスイフトスポーツの魅力だ。軽快でムダのない挙動変化を楽しめる。特にボディの軽さは、車両との一体感を得る上で大切な要素となった。
2位:トヨタ ヴィッツ
おすすめグレードは「GRスポーツ(207万6840円/5速MT)」
トヨタ ヴィッツの発売は2010年と古いが、コンパクトカーでは人気が根強い。スポーティパッケージも選べるが「スポーツカー」とするなら特別に開発されたGRスポーツに注目したい。
GRスポーツのエンジンは、普通のグレードには用意されていない1.5リッターで、5速MTも選択できる。実用回転域の駆動力が高いために扱いやすく、アクセルペダルを踏み増すと、エンジン回転を着実に高めていく。車両重量は1トン少々と軽いから加速は機敏だ。パワフルで、しかも性能をフルに引き出した運転がしやすい。
またロッカーフランジスポット溶接打点の追加など、ボディも補強され、サスペンションには専用のチューニングを施した。走行安定性が高く、良く曲がるから、峠道やサーキットを走るのも楽しい。
価格は200万円を少し超えるが、外観は専用のデザインで、フロントマスクはヴィッツの一般的なグレードとはまったく違う。エアロパーツが装着され、切削光輝タイプの16インチアルミホイールなども備わる。専用にチューニングされたエンジン、ボディ補強なども考えると、ベースがヴィッツだから価格を200万円少々に抑えることができた。メーカー系チューニングスポーツモデルの買い得車といえるだろう。
3位:ホンダ S660
おすすめグレードは「β(198万720円/6速MT)」
2人乗りの純粋なスポーツカーは、冒頭で述べたように一般的には価格が高いが、軽自動車のホンダ S660はβを200万円以下に設定した。若いユーザーが購入することも視野に入れて開発されている。
割安と判断される理由には、本格的なボディの造り込みがある。エンジンを座席の後部に搭載して後輪を駆動するミッドシップのレイアウトで、NSXのようなスーパースポーツカーと同じ手法を採用した。重いエンジンを車体の中央に搭載するから、前後輪の重量バランスが、前輪は45%、後輪は55%と優れている。
ソフトトップを外すとオープンドライブを楽しめるが、ボディ剛性は十分に確保したから、カーブを曲がる性能が高く旋回軌跡も拡大させにくい。全高を1180mmと低く設定した低重心も優れた効果をもたらした。軽自動車だから全幅は1475mmと狭いが、本格的なスポーツカーの走りを満喫できる。
ちなみにミッドシップのレイアウトは、S660にとって宿命的な選択だった。今のホンダが用意するエンジンは、N-BOXとNシリーズの搭載を目的に開発され、室内空間を長く確保するためにエンジンの前後長が短い。補機類も含めて、エンジンが縦長の形状になった。
このようなエンジンだから、車両の前側に搭載した場合、ボンネットが必然的に持ち上がってしまう。全高は少なくとも1500mmは必要で(N-BOXは1790mm)、背の低いスポーツカーのエンジンルームには収まらない。
そうなると全高が1180mmのS660では、エンジンをボディの中央に搭載するしかなかった。中央に搭載すると、エンジンの短い前後長がS660でもメリットになり、座席と後輪の間にスッポリと収まった。
S660はプラットフォームやサスペンションを専用に開発したスポーツカーで、価格は200万円以下だから、超絶的な買い得車といえるだろう。
[筆者:渡辺 陽一郎]
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