軽バン車中泊の最強EVはどれ!? ダイハツ e-アトレー/e-ハイゼットカーゴは1500W電源と完全フラットな床でN-VAN e:を圧倒できる?

  • 筆者: 渡辺 陽一郎
  • カメラマン:森山 良雄/茂呂 幸正/ダイハツ工業/MOTA編集部
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「冬の寒さや夏の暑さを快適に過ごしたい」。そんな車中泊ファンの悩みに、ダイハツの軽バンEV「e-ハイゼットカーゴ」と「e-アトレー」が新たな選択肢として加わりました。

1500W電源で家電が使え、排気ガスを気にせず過ごせるメリットは絶大です。一方で気になるのは、ライバルのホンダ「N-VAN e:」との違い。e-ハイゼットカーゴとe-アトレーのほうがバッテリー容量が大きいのに、なぜ航続距離はN-VAN e:とあまり変わらないのか。

その背景には駆動方式の深い関係がありました。カーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが、広さや電源だけでなく、メカニズムや価格差も含めて徹底比較し、e-ハイゼットカーゴとe-アトレーの実力を解説します。

目次[開く][閉じる]
  1. 街乗りから車中泊まで最適! 国産車EV逆転の鍵を握る軽バンEV
  2. 2026年2月発売! 3社共同開発の「e-ハイゼットカーゴ/e-アトレー」その実力とは
  3. 【ライバル比較】N-VAN e:より「荷室が広くて長い」が魅力
  4. 車中泊飯が変わる! 1500W電源で「ホットプレート・電子レンジ」が存分に使える
  5. 航続距離257kmの謎! なぜ「大容量バッテリー」を積みながらN-VAN e:と大差ないのか?
  6. 【価格・補助金】N-VAN e:との54万円差は「V2H」や両側スライドドアなどの「快適装備」
  7. e-ハイゼットカーゴ/e-アトレーとN-VAN e:、あなたにおすすめなのはどっち?

街乗りから車中泊まで最適! 国産車EV逆転の鍵を握る軽バンEV

日本のEV市場の現状:普及を阻む「ハイブリッド」の存在

EV(エンジンを搭載しない電気自動車)はなかなか普及しません。乗用車のデータですが、EVの国内販売比率は、2025年1〜12月に販売された新車の1.6%でした。

エンジンを搭載するハイブリッドは47.3%なので、EVの普及率は圧倒的に低いです。日本では、走行コストを抑えたいユーザーは車種が豊富にそろうハイブリッドを選ぶため、EVは購入の候補に入りにくいです。そのために車種も増えず、ますます売れない悪循環に陥っています。

なぜ「軽自動車のEV」だけは受け入れられるのか

しかし軽自動車のEVは、受け止め方が違います。現時点で軽自動車には、EVの宿敵ともいえるハイブリッドがありません。

そして軽自動車は、公共交通機関を利用しにくい郊外で、買い物などの日常的な移動に使われています。EVは1回の充電で走れる距離が短いといわれますが、セカンドカーとして使われる軽自動車なら、もともと短距離移動が中心なので不満が生じません。

さらに最近は給油所(ガソリンスタンド)が減り、ピークだった1994年の半数以下です。地域によっては給油のために長い距離を走る必要があり、短距離移動用の軽自動車にとって、自宅で充電できるEVは便利です。以上のような事情により、国内で売られるEVの約30%を軽自動車が占めています。

輸入車の台頭と国産メーカーの危機

なお、2025年の国内におけるEVの売れ方を見ると、実は約半数を輸入車が占めています。メルセデス・ベンツやBMWには複数のEVが用意され、EVのみを製造販売するテスラやBYDのようなEVを主力とするブランドもあり、車種が多いために販売台数を伸ばしているのです。

すなわち、輸入EVが50%、軽自動車EVが30%で足し合わせるとEV販売全体の80%に達します。今後は軽自動車だけでなく、国産の小型/普通車でもEVの選択肢を充実させないと、日本のEV市場が海外メーカーに独占されるかもしれません。それほどまでに、この軽バンEVの登場は重要な意味を持っているのです。

軽バンEVが開く新しい扉:「車中泊」への適性

そしてもうひとつ、軽バンのEVには「車中泊に最適」という大きな魅力があります。

ガソリン車と同じように荷台が広くて平らなので、大人が足を伸ばして寝ることができます。

また、車に積んだ電池から、家と同じコンセントの電気が使えます。エンジンをかけずに料理をしたり、暖房を使ったりできるのは、車中泊にとって一番の強みになります。

2026年2月発売! 3社共同開発の「e-ハイゼットカーゴ/e-アトレー」その実力とは

このような背景がある中で注目したいのが、2026年2月に発売されたダイハツ eーハイゼットカーゴとeーアトレーです。両方ともに軽商用バンで、eーアトレーはe-ハイゼットカーゴの上級モデルです。ダイハツ/スズキ/トヨタの3社で共同開発され、製造はダイハツが受け持ってスズキとトヨタに供給します。

最大の弱点は「パワー不足」? ライバルよりトルクは低いが車内は広い

e-ハイゼットカーゴとe-アトレーの動力性能は、最高出力が64馬力、最大トルクは12.9kg-mです。

ほかの軽自動車のEVの最高出力は64馬力と共通ですが、最大トルクは乗用車の日産 サクラ&三菱 eKクロスEVが19.9kg-m、eーハイゼットカーゴやeーアトレーと同様の軽商用バンに属するホンダ N-VAN e:は16.5kg-mです。

eーハイゼットカーゴやeーアトレーの最大トルクは12.9kg-mなので、他社の軽自動車のEVに比べて少し低いです。

主な軽EVの性能を比較すると、以下の通りです。

車種最高出力最大トルクバッテリー容量駆動方式

e-アトレー

e-ハイゼットカーゴ

64馬力

12.9kg-m

36.6kWh

後輪駆動

N-VAN e:

64馬力

16.5kg-m

29.6kWh

前輪駆動

サクラ
eKクロス EV

64馬力

19.9kg-m

20.0kWh

前輪駆動

その代わりeーハイゼットカーゴとeーアトレーは、荷室を含めた車内が広いです。

開発者は「室内空間はガソリンエンジンを搭載する軽商用車のハイゼットカーゴやアトレーと同じです」と言います。

駆動用電池は床下、電力供給ユニットは運転席の下、イーアクスルと呼ばれる駆動システムは車体後部の床下に設置されて後輪を駆動することで、EVになったからといって車内の広さは犠牲にせず、ガソリン車同様のサイズを維持しています。

【ライバル比較】N-VAN e:より「荷室が広くて長い」が魅力

後席を格納した時の荷室長は、eーハイゼットカーゴが1920mm、eーアトレーは1820mmです。この数値は、e-アトレーについてはガソリンエンジン車のアトレーと同じです。eーハイゼットカーゴの荷室長は、ガソリンエンジン車のハイゼットカーゴを5mmですが上まわります。

荷室幅もeーハイゼットカーゴは1270mm、eーアトレーも1265mmを確保して、ガソリンエンジン車と比べて遜色ありません。

ライバルのN-VAN e:(e:L4/e:FUNグレード)と比較すると、荷室の広さの違いはハッキリと分かります。

ただし、荷室高はN-VAN e:の方がe-ハイゼットカーゴに比べて120mm、e-アトレーに比べて155mm高いです。

車種荷室長荷室幅荷室高

e-ハイゼットカーゴ

1920mm

1270mm

1250mm

e-アトレー

1820mm

1265mm

1215mm

N-VAN e:

1495mm

1230mm

1370mm

開発者は「畳を9枚積めます」と述べました。畳のサイズはいろいろですが、発表会の会場に展示されていた中京間は、長さが1820mm、幅は910mm、厚みは55〜60mmです。

eーハイゼットカーゴの荷室高は1250mm(4人乗り)、eーアトレーは1215mmなので、開発者の言葉通り9枚の畳を積めます。

ボンネットの中に秘密あり! 駆動方式が生むスペース差

N-VAN e:は、N-VANをベースに開発されたので、モーターを含めたパワーユニットをボンネットの内部に搭載して前輪を駆動します。

電動メカニズムを床下に搭載するeーハイゼットカーゴやeーアトレーに比べて、荷室長が短く、最も長いグレードでも1495mmです。eーハイゼットカーゴはN-VAN e:よりも425mm、eーアトレーは325mm長いのです。

車中泊に最適! 汎用品も使える「完全フラット」な床

そしてeーハイゼットカーゴやeーアトレーの荷室は、ガソリンエンジン車と同じく平らなので、車中泊にも使いやすいです。

大人1名の就寝なら余裕があり、少々窮屈ですが2名も可能です。

ガソリンエンジンのハイゼットカーゴやアトレーで車中泊を楽しむユーザーは多く、車内に敷き詰めるマットなども汎用品で売られています。

eーハイゼットカーゴやeーアトレーの荷室はガソリンエンジン車と同じ造りなので、これらの汎用品を使える可能性が高いです。

車中泊飯が変わる! 1500W電源で「ホットプレート・電子レンジ」が存分に使える

eーハイゼットカーゴとeーアトレーはEVなので、大容量のバッテリーを搭載しているため、ポータブル電源などを用意しなくても家電などを使えることが車中泊では大きなメリットになります。

全車のATレバーの左側に、AC100V・1500Wのアクセサリーコンセントを標準装着しました。駆動用リチウムイオン電池に充電された電気を家庭用と同じ100V電源として使えるのです。

しかも非常時給電システムが内蔵され、EVの機能を起動しなくても、電源だけを効率良く取り出せます。

AC100V電源は1500Wまで対応するため、車中泊をする時など、ホットプレートを使って料理を楽んだり、ヘアドライヤーを使うことも可能です。

災害で家屋が損傷したり停電になった時は、車中泊をしながら、家庭用の電子レンジを持ち出して冷凍食品を暖めることもできます。

一方、N-VAN e:は、別売のAC外部給電器「ホンダパワーサプライコネクター」を普通充電口に接続することで、合計最大AC100V・1500Wの電力を車外で利用できます。

「動く蓄電池」として防災・停電時にも活躍

100V・1500Wの電力供給機能を有効活用するため、細かな装備ですが外部給電アタッチメントを装着しました。

これをサイドウィンドウに装着すると、ウィンドウやドアを閉めた状態で、アクセサリーコンセントに差し込んだ電源コードを車外へ引き出せます。

先進の安全機能や「電動スライドドア」など快適装備も抜かりなし

このほか全車に衝突被害軽減ブレーキ、LEDヘッドランプ、電池残量など各種の情報を表示できるアクティブマルチインフォメーションメーター、キーレスエントリー&プッシュボタンスタートなどを標準装着しました。

上級モデルのeーアトレーでは、フロントグリルに装飾が備わるなど質感が高まり、スーパーUV&IRカットガラス、荷室の12Vのアクセサリーソケット、両側スライドドアの電動開閉機能なども装着されます。そしてスチールホイールはブラックに塗装されます。

このようにeーハイゼットカーゴとeーアトレーでは、荷室長が1800mmを上まわる就寝スペースと、調理を含めた生活に必要な電源を確保できます。車中泊にピッタリです。

航続距離257kmの謎! なぜ「大容量バッテリー」を積みながらN-VAN e:と大差ないのか?

e-ハイゼットカーゴとeーアトレー、ライバルのN-VAN e:の電池容量と航続可能距離を比較すると、興味深い事実が見えてきます。

車種バッテリー容量航続距離(WLTC)

e-ハイゼットカーゴ/e-アトレー

36.6kWh

257km

N-VAN e:

29.6kWh

245km

e-ハイゼットカーゴとe-アトレーの駆動用リチウムイオン電池の容量は36.6kWhで、N-VAN e:の29.6kWhに比べて1.2倍の余裕を持たせました。

それなのに1回の充電で走行できる距離は、WLTCモードで257kmです。N-VAN e:の245kmを上まわるものの、12kmしか違いません。

バッテリーは大きいのに…? 航続距離と「雪道」に弱い駆動方式の関係

この理由は大きく分けて2つあります。

まずeーハイゼットカーゴとeーアトレーの車両重量が1240〜1300kgで、N-VAN e:の1060〜1140kgに比べて重いことです。

2つ目は減速時に、モーターが発電を行って駆動用電池に充電する回生制御の違いです。

ライバルのN-VAN e:には、回生力を強めて充電を積極的に行う「Bレンジ」があります。ブレーキペダルを踏んだ時に回生力を自動的に強める制御も行われ、ドライバーがブレーキペダルを踏んでも、実際にはディスク/ドラムブレーキは作動させず、回生力を強めて「発電による減速のみ」で止まることが可能です。

これに対してeーハイゼットカーゴとeーアトレーでは、これらの回生制御が弱く抑えられ、結果として電力消費量が増えました。

その理由は、N-VAN e:が前輪駆動なのに対して、eーハイゼットカーゴとeーアトレーは後輪駆動になることです。

後輪駆動では、回生のためのモーターによる減速も後輪のみで行われます。そのため、雪道など滑りやすい場所では、後輪にブレーキがかかりすぎることでスピンに近い挙動に陥るなど、走行安定性が悪化しやすいという弱点があります。

車種によっては、ディスク/ドラムブレーキの高度な制御で後輪駆動のEVでも安定性を高めていますが、機能が複雑になってコストも上昇します。そこでeーハイゼットカーゴとeーアトレーでは、あえて回生充電を積極的に行っていません。

このように、ダイハツ2車種はバッテリーが大きいにもかかわらず、回生制御で発電を積極的に行えるN-VAN e:には、航続可能距離で大差をつけることができなかったのです。

【価格・補助金】N-VAN e:との54万円差は「V2H」や両側スライドドアなどの「快適装備」

価格は一般ユーザー向けのeーアトレーRSが346万5000円です。国が交付する補助金額は、2026年2月上旬時点では未定ですが、最大で58万円になる見込みです。これを差し引くと実質288万5000円です。

N-VAN e:の最上級グレードとなるe:FUNは、価格が291万9400円で、国が交付する補助金額は57万4000円です。補助金額を差し引くと234万5400円になります。

両車の価格を比較すると以下の通りです。

車種車両本体価格国の補助金実質価格

e-アトレー(RS)

346万5000円

最大58万円(見込み)

288万5000円

N-VAN e:(e:FUN)

291万9400円

57万4000円

234万5400円

両車の実質価格を比べると、eーアトレーRSは約54万円高いです。その代わり100V・1500Wの電源コンセント、家屋に電気を供給するV2H機能、両側スライドドアの電動機能、収納設備のオーバーヘッドシェルフなどを標準装着しています。

それでもeーハイゼットカーゴとeーアトレーは、N-VAN e:に比べて価格が割高ですが、車中泊などに使いたいなら特にeーアトレーは選ぶ価値が高いです。

e-ハイゼットカーゴ/e-アトレーとN-VAN e:、あなたにおすすめなのはどっち?

結論として、e-ハイゼットカーゴとe-アトレーは「車中泊や防災を含めた空間の価値」を重視する人に、N-VAN e:は「EVとしての走りやコストパフォーマンス」を重視する人に向いています。

それぞれの特徴を踏まえ、おすすめするユーザーをまとめました。

e-ハイゼットカーゴ/e-アトレーをおすすめする人

・本格的な車中泊を楽しみたい人(完全フラットな床・畳が積める広さを重視)

・追加の費用なく、車内から手軽に家電を使いたい人(車内1500Wコンセント標準装備)

・もしもの時の「防災」や、自宅への給電(V2H)に関心がある人

N-VAN e:をおすすめする人

・初期費用を少しでも安く抑えたい人

・EVらしい力強い加速感(トルク)を楽しみたい人

・N-BOXなど前輪駆動(FF)の乗用車に近い馴染みやすい運転感覚を重視する人

どちらも一長一短ありますが、特に「車中泊」というキーワードで選ぶなら、居住性と電源環境で勝るダイハツのe-ハイゼットカーゴとe-アトレーは、非常に満足度の高い選択肢となるはずです。

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【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:森山 良雄/茂呂 幸正/MOTA編集部 画像提供:ダイハツ工業】

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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