「ナニコレ!?」街中で振り向かれる高い注目度! ホンダ S660 ネオクラシックの魅力を探る

  • 筆者: 遠藤 イヅル
  • カメラマン:和田 清志・オートックワン編集部

「これは何?」街中での注目度は抜群

12月としては暖かいとある冬の日、北青山のオートックワン編集部から黄色いナンバーの真っ赤なミッドシップスポーツカーのキーを預かって出発する。赤坂御所、ホンダ本社の前を通り、ひとまず休息の定番地、絵画館前の銀杏並木が並ぶ道路にクルマを停め、脱着式のホロを手際よく丸めてボンネット内にあるケースに収める。

わずか数分の作業だが、その間多くの人がこのクルマに注目していた。歩いているとあるカップルは、「これは何ていうクルマだろう?」と会話していたほど。屋根を開けて空と車内を直結して走り出し皇居脇を快走すれば、外国人観光客も振り向く。高速を千葉方面へ流すとドライバーやナビシートの人たちから熱い視線が送られているのを感じる。

◆ホンダ S660 ネオクラシックの内外装を写真で見る

さすがメーカー純正のクオリティ!

多くの人が振り向いたり気にしたりするこの「目立つクルマ」は、「S660 ネオクラシック」。ホンダの軽2シーターオープンスポーツカー・S660に、ホンダの純正アクセサリーの開発・製造・販売を行うホンダアクセスが9月21日から発売する「S660 Neo Classic KIT」を装着することで生まれる。

写真を見た読者の中には「そうか、あのクルマ、ついに市販されたんだ!」と気がついた人がいるかもしれない。もしくはどこかで見たことがある、と思ったかも。そう、これは2016年の東京オートサロンに参考出品されて大きな反響を呼んだ「S660 ネオクラシック コンセプト」がベースだ。市販化を希望する声がホンダアクセスに数多く寄せられたこともあり、市販化に舵を切ったという。

コンセプトカーが市販化される際、オリジナルの良さがスポイルされることはよくあること。しかしS660 ネオクラシックでは、コンセプトモデルの雰囲気が実によく残されている。オリジナルのS660から交換されるパーツは、ドアとフロントウインドウ以外ほぼすべて、という広範囲だが、FRP製のパーツはベース車の鉄製ドアとの素材の違いをまったく感じさせない。

パーツ類はさすがメーカー純正のキット! と、うならされるクオリティで、例えばボンネットの裏は単に成形しただけではなく、スチール製のような設計された補強まで施されている。筆者も丸めたルーフをしまうべくボンネットを開け、裏をよくよく見た時にFRPの素地に気がついて、ようやく「ああ、そうか、FRP製なんだ」と気がついたほどだった。

クラシックとモダンの絶妙なバランスを保つデザイン

それではS660とは思えないほどにチェンジされた「目立つ」デザインを見てみよう。N-ONEのヘッドライトが流用されたフロントはノーズが伸ばされ(たように見えるだけで、実際の全長はほぼ変わっていない)、ボディ後半はなだらかに造形されてクーペフォルムが強調されている。エンジンフードからバンパーのセンター部まで一気にブラックアウトされたテールデザインは、フロントのクラシカルな印象に比べて未来的な印象だ。

ボディ前後の違いに目が行きがちだが、ドア前後のフロントフェンダー、リアフェンダーもデザインに合わせて交換されていることにも注目してほしい。ノーマルのリアフェンダーは張りのある面で構成されているが、S660 ネオクラシックではブリスター風に処理され、丸いテールランプを備えた切り立ったリアセクションへと自然なつながりを見せる。

オリジナルのS660は切れ長のフロント・テールライトとコンパクトなキャビンからシャープな印象で、一方S660 ネオクラシックは丸みとカタマリ感を想起させるなどデザインの方向性を異にする。ただ、往年のS系(S500、600、800など)のイメージを反復しているフロントヘッドライトは、装着位置が低すぎるように思えるのと、S系はフロントオーバーハングが逆にグッと短かったために少々違和感がある。全体的なフォルムがオリジナルよりむしろミッドシップカーらしくなっているために、「ネオクラシック」というコンセプトがあったにせよ少々惜しい気がする。

このようにS660 ネオクラシックはオリジナルとかなりの違いがあるが、なんと外板を変更するにも関わらず改造申請などは一切不要で、もちろん車検にも対応する。さすがメーカー純正キットである。

キットの価格は129万6千円

メーカー純正クオリティのオリジナルパーツに全身が交換され、独特の存在感を誇るS660 ネオクラシック。キニナルのは、そのプライスだ。先ほど「キットを装着することで生まれる」と書いたが、これはS660 ネオクラシックが新車としてメーカーからキット組み込み済みのコンプリートカー扱いで発売されるのではなく、キットを新車もしくは中古で発売済みのS660に取り付けて「生まれる」ためだ。

S660 ネオクラシックを手に入れる方法は少し特殊で、ホンダの中古車を扱うホンダユーテックが経営するオートテラス3店舗(オートテラス城北、鈴鹿、筑紫野)でキット装着済みの認定中古車として購入することができる。また、S660 を購入して所有するオーナー自らがこの3店舗に持ち込んで、キットを組んでもらうことも可能だ。

キットの価格は未塗装のFRP製交換部品と灯火類込みで129万6千円(税込)で、さらにベース車に合わせた塗装、キット装着費用が別途かかる。そもそもS660はボディ外板を交換することが前提となっていないため、交換費用も80〜90万円と決して安くない。

運転が楽しいコミューターとしての魅力にあふれる

しかし、S660 ネオクラシックには魅力が多い。ベースのS660が軽自動車の枠を超えた運転がとても楽しい本格的なスポーツカーだが、さらに組まれたパーツは後付けとは思えないほどの高い品質と「そもそもこういうクルマだった」と思わせるほどの設計を持つ。しかもメーカー純正で車検対応であること、そして希少性が相当に高いという唯一無二の存在感をS660 ネオクラシックは備えているのだ。

また、この価格から多くが街に出回るクルマにはならないと思われるが、筆者はそれでも市販にこぎつけたことにホンダ、そしてホンダアクセスの意地を垣間見る。その「心意気」もキットに含まれているのだとしたら、ホンダファンや個性的なクルマを求めている人ならばこの価格に価値を見出すことができるだろう。

S660のコンパクトなボディは街中、高速、ワインディングなど、どんなシチュエーションでもまったくストレスを感じさせない。いささか古い表現だが、ミズスマシのように軽快に走り抜けることができるのだ。荷物はまったく積めないし(笑)、2シーターという制約はあるけれど、背中から聞こえてくるサウンド、軽とは思えない各部の品質、俊敏なハンドリングは純粋に運転の楽しさを教えてくれる。

S660はファンなスポーツカーというだけでなく、優秀なコミューターとしての存在も光ることを改めて感じた。そしてどことなく優しいデザインのキットが組まれたS660 ネオクラシックだと、それが強調されるように思えた。

[筆者:遠藤 イヅル / 撮影:和田 清志・オートックワン編集部]

S660 Neo Classic KIT 概要と価格

メーカー希望小売価格

1,296,000円(税込み)

※車両本体・取付費・塗装費は含まれない

標準取付時間

16.8時間

※塗装工程を除く、仮組み+外し+本組みの合計時間

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遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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