ホンダ 新型N-VAN vs ホンダ アクティバン どっちが買い!?徹底比較

ホンダの新旧商用バンを徹底比較

ホンダの発表によると、2018年7月13日に発売されたホンダ N-VANの販売が好調だ。発売から1ヶ月後までの受注台数が1万4000台に達したとのことだ。

グレード別で販売比率が高いのは、フルLEDヘッドライトなどを備えた上級モデルの+STYLE FUN(プラススタイルファン)ホンダセンシングで、全体の22%を占める。このターボ仕様のグレードも22%だから、+STYLE FUNを合計すると44%だ。純粋な商用ニーズに応えたL ホンダセンシングも22%で横並びになる。

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好調な受注は喜ばしいが、大切なのは納車を伴う届け出(小型/普通車では登録)だ。受注しただけでは、顧客を待たせて不便を押し付けることになる。

そこで販売店に納期を尋ねると、グレードによって差があり、最短で2ヶ月、一部のターボ車と4WDは5ヶ月を要する。人気の高い+STYLE FUNは、自然吸気のノーマルエンジン車が4ヶ月、ターボ車は5ヶ月だ。このように納期が遅いと褒められないが、注目度は高い。

販売店に「どのような車種からの乗り替えが多いか」と尋ねると、ホンダ アクティバン(N-VANの前身)という返答が聞かれる。その一方で、先代ホンダ N-BOX、ホンダ フリードプラスなどもあった。N-VANは乗用車のN-BOXをベースに開発された軽商用バンだから、位置付けがユニークで、さまざまな車種から乗り替えられている。

そこで今回は、新型N-VANとアクティバンを比べたい。アクティバンは軽商用バン専用車だから、車両の造りが異なる。N-VANはボンネットの内部にエンジンを搭載して前輪を駆動するが、アクティバンではエンジンが荷室後部の床下(リアサスペンションの前側付近)にあり、後輪を駆動する。

そしてアクティバンではボンネットの長さが節約されるから、有効室内長が伸ばされ、カタログに記載される後席を畳んだ時の荷室長は1725mmに達する。N-VANは1510mmだ。

軽商用バンでは荷室の広さが重要になる。そこでアクティバンは専用設計としたが、開発と製造コストが高い。スズキ エブリイやダイハツ ハイゼットカーゴは他社に供給されているが、ホンダはOEM関係を結ばないから薄利多売が成り立たない。そこで新しいN-VANは、コスト低減のためにN-BOXをベースに開発された。

問題は荷室長がアクティバンに比べて200mm以上も短いことだ。アクティバンに積めた荷物が、N-VANには積めないということも生じる。この欠点を補うため、N-VANは左側のピラー(柱)をドアに埋め込んで開口幅を広げ、さらに助手席も畳めるようにした。アクティバンに比べて荷室は短いが、収納性が優れ、新しい使い方を提案している。

N-VAN vs アクティバン|ボディスタイル/サイズ/視界/取りまわし性比較

アクティバンはエンジンを前席の下に搭載するから、ボンネットが極端に短い。N-VANに比べると、ツール感覚が強調されている。

視界は両車ともに同程度だが、最小回転半径はN-VANの2WDが4.6m、アクティバンなら4.5mに収まる。軽自動車だから全長と全幅は2車種ともに同じだが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は違う。N-VANはN-BOXと同じ2520mm、アクティバンは2420mmだから100mm短く、小回り性能を向上できた。

勝者:アクティバン

N-VAN vs アクティバン|内装のデザイン/質感/操作性/視認性比較

アクティバンの発売は1999年6月だ。OEMもないから生産台数が少なく、収支を合わせることも含めて20年近く生産した。ライバルのエブリイは、1999年に4代目が発売され、2005年には5代目になり、2015年には現行型の6代目が発売された。これに比べると、アクティバンはいかにも古い。

N-VANに比べれば、20年近く前の設計だから、インパネなどのデザインはかなり違う。質感に大差はないが、オーディオなどの操作性はN-VANが勝る。

ちなみにアクティバンは長年にわたりフルモデルチェンジをしなかったから、エブリイやハイゼットカーゴに乗り替えたユーザーも多かった。その結果、アクティバンの保有台数が減り、過去を顧みずに荷室長が200mm以上も短いN-VANへ刷新できた。

勝者:N-VAN

N-VAN vs アクティバン|前後席の居住性比較

運転席の座り心地はN-VANが快適だ。アクティバンは設計が古く、肩まわりや座面のサポート性に不満が伴う。床と座面の間隔も不足気味で、運転姿勢を合わせにくい。

助手席はアクティバンが勝る。N-VANは小さく畳んで平らな荷室にする機能を重視したから、背もたれと座面が平板でサポート性が悪い。前後のスライド機能も付かない。その点でアクティバンは、座り心地に不満がなく、リクライニングや前後スライドも可能だ。

後席もアクティバンが少し快適に座れる。両車ともに床と座面の間隔が不足して窮屈だが、アクティバンであれば、身長170cmの大人4名が乗車しても膝先に若干の余裕がある。N-VANでは膝先が前席の背面に触れてしまう。背もたれの角度も、アクティバンが少し寝ていて自然に座れる。

このような差が付く理由は、商用車(貨物自動車)の規格にある。乗用車に比べて税金が安い代わりに、後席よりも荷室のスペースを広げねばならない。その結果、商用車は後席が狭い。特にN-VANは、荷室長がアクティバンよりも短いために、一層不利になった。

勝者:アクティバン

N-VAN vs アクティバン|乗降性比較

アクティバンは、エンジンを荷室の下に搭載して後輪を駆動する。なおかつ荷室を平らに仕上げたから床が高くなった。N-VANは、前輪駆動車だから床が低い。

スライドドアの開口幅も、N-VANは前後ともに開くと開口幅が1580mmに達する。アクティバンは普通のスライドドアだから750mmだ。軽自動車の開口幅ではワイドだが(N-BOXの開口幅は640mm)、N-VANはこの点を工夫した。

ちなみにダイハツ タントもN-VANと同様に中央のピラーをドアに埋め込むタイプで、開口幅は1490mmだ。N-VANはタントよりもさらにワイドに開き、乗降性はN-VANの方が圧倒的に優れている。

勝者:N-VAN

N-VAN vs アクティバン|荷室比較

カタログに記載される後席を畳んだ時の荷室寸法は、N-VANの荷室長が1510mm、荷室幅は1235mm、荷室高は1365mm(ハイルーフ)だ。アクティバンはそれぞれ1725mm、1240mm、1200mmになる。従ってN-VANの荷室は、アクティバンに比べて215mm短く、5mm狭く、165mm高い。

長さが1700mm、幅が1200mmといった大きな荷物を積む時はアクティバンが有利だ。エンジンがボンネットの内部に収まるN-VANは荷室長が短いから、積めない荷物も出てくるだろう。

その代わりN-VANは、後席だけでなく、助手席も床面へ落とし込むように小さく畳むことができる。運転席以外、すべてを荷室にした時は、助手席部分に限れば荷室長が2635mmに伸びる。従って細長い荷物も積みやすい。

また助手席と後席を畳み、左側のドアを全開にすると、ボディの左側面からも荷物を積める。

リアゲートの部分で測った荷室の地上高はN-VANが525mm、アクティバンは665mmだから、N-VANは荷台が140mmほど低くて荷物の出し入れがしやすい。つまりN-VANとアクティバンの荷室は一長一短と言える。

ただしN-VANで助手席を畳むと、運転席の左脇まで荷物が迫る。例えば幅の狭いガラスの扉が付いた棚などを収納した状態で左側から衝突されると、荷物がドライバーに加害性を持つ心配があるので、荷物の積み方には十分に注意したい。

またドライバーを守るガードも欲しい。

勝者:引き分け

N-VAN vs アクティバン|動力性能&エンジンフィーリング比較

N-VANのエンジンは実用回転域の駆動力に余裕があり、ATも無段変速のCVTだから、走行状態に応じて最適なギヤ比に自動調節できる。ターボも用意され、最大トルクが1.6倍に増える。

これに比べるとアクティバンのエンジンは、実用回転域の駆動力が低い。ATは3速(4WDは4速)のトルクコンバーター式だから、変速は滑らかだが、登坂路ではギヤ比が合わずパワー不足を感じることがある。

勝者:N-VAN

N-VAN vs アクティバン|走行安定性比較

N-VANの全高は1945mm(2WDのハイルーフ)、アクティバンは1880mmだから、N-VANは65mm背が高い。その代わり前輪駆動だから床は大幅に低い。

荷室高はN-VANが165mm高く、全高は65mmの違いだから、単純に計算すればN-VANは床が100mm低い。低重心になって、しかもホイールベースは100mm長い。

従ってN-VANはカーブを曲がる時でも4輪がしっかりと接地して、直進安定性も良い。操舵感は機敏ではないが、アクティバンに比べると反応の仕方が正確だ。N-VANは設計が20年新しく、機能が大幅に進化しているのがわかる。

勝者:N-VAN

N-VAN vs アクティバン|乗り心地比較

最大積載量はグレードによって異なるが、最大値は両車とも350kgだ。サスペンションは重い荷物の積載を考えて設定され、硬めのセッティングになる。タイヤの指定空気圧も高い。そのために乗り心地は全般的に硬く、その上で比べると、ホイールベースが長いこともあってN-VANの快適性が勝る。

勝者:N-VAN

N-VAN vs アクティバン|安全&快適装備比較

N-VANはN-BOXと同様、緊急自動ブレーキを作動できるホンダセンシングを採用している。対象物を検知するセンサーには、ミリ波レーダーと単眼カメラが併用され、歩行者にも対応した。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも装着するから、日本車全体で見ても先進的だ。

これに比べるとアクティバンは、ホンダセンシングだけでなく横滑り防止装置のVSAも装着されない。安全装備はこの数年間で急速に進歩したから、20年近く前に発売されたアクティバンは大幅に遅れている。

勝者:N-VAN

N-VAN vs アクティバン|燃費性能とエコカー減税比較

JC08モード燃費を2WDのAT仕様で見ると、N-VANの主力グレードは23.8km/Lだ。ターボも23.6km/Lで、最大トルクが1.6倍まで増えるのに、燃費数値はほとんど悪化しない。理由は負荷の違いだ。N-VANの車両重量は900kgを超えるから、動力性能の高いターボは負荷が軽減されて燃費の悪化を抑えた。CVTのギヤ比も、ノーマルエンジンに比べてハイギヤード化され、ターボはエンジン回転数を抑えられる。

一方、アクティバンのJC08モード燃費は、2WDの場合、3速ATが15.6km/Lだ。2リッターエンジンを搭載したミニバンと同程度の数値になる。またN-VANの燃費数値は、アクティバンの1.5倍だ。

なお、軽商用車のエコカー減税は、燃費数値が軽乗用車とは異なり、N-VANのノーマルエンジンを搭載したCVT車は免税になる。

勝者:N-VAN

N-VAN vs アクティバン|グレード構成と価格の割安感

N-VANにはベーシックなGとLに加えて、外観をファッション指向に仕上げてフルLEDヘッドライトなどを備えた+STYLE FUN ホンダセンシングがある。さらにそのターボ仕様、ロールーフボディでテールゲートスポイラーなどを装着した+STYLE COOL(プラススタイルクール)ホンダセンシングと、そのターボ仕様も選べる。

アクティバンはシンプルで、後席を備えない2人乗りのプロAとSDXのみだ。

価格はN-VANで最も安価なGホンダセンシングが126万7920円(CVT)、アクティバンSDXが122万5600円(3速AT)になる。N-VANは安全装備を充実させ、ワイドに開く左側のドア、多彩なシートアレンジなども備えるから、アクティバンよりも買い得になる。

勝者:N-VAN

N-VAN vs アクティバン|総合評価

アクティバンは20年近く前に発売されたので、ほぼすべての機能が古く、N-VANが勝っている。特に後席に加えて助手席も畳み、左側のドアをワイドに開く機能は、N-VANの独壇場だ。

ただし荷室長はアクティバンに比べて200mm以上短いから、長くて幅の広い荷物は、N-VANに積めない場合がある。

また荷物を満載して、ハンドルを切りながら坂道発進するような場面では、荷重が後輪に集中するため前輪駆動のN-VANは不利。後輪駆動のアクティバンが有利になる。

アクティバンは今では購入できないが、大きくて重い荷物を積む時には、後輪駆動のエブリイやハイゼットカーゴを検討したい。N-VANにも4WDがあるが、基本的には小さくて軽い荷物をたくさん積む用途に適する。

N-VANはパーソナルユーザーからも注目されているが、まずは乗用車のN-BOXをチェックしたい。N-BOXは前後席の座り心地や乗り心地が快適で、燃費も優れ、価格は割安になるからだ。N-BOXでは機能が物足りない時に、N-VANを考えると良い。パーソナルユーザーにとっては、N-BOXがすべての基本になる。N-VANではない。

[Text:渡辺 陽一郎/Photo:小林 岳夫]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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