【解説】ダイハツ 新型コペン 新型車解説/渡辺陽一郎(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:ダイハツ工業株式会社
「ドレスフォーメーション」で容易なドレスアップが可能に
新型コペンの新しい試みとして注目されているのが、内外装を脱着できる「ドレスフォーメーション」だろう。
外板を13個の樹脂パーツの集合体と考え、ボルトで取り付けてあるから購入後の交換も可能だ。つまり飽きてきたら着せ替えをしてボディの形状やカラーを変更し、新車に代替えしたような気分が味わえる。
となればドレスアップも容易で、ダイハツではアフターパーツを手掛けるメーカーにも情報を開示するという。こういった新しい試みでは国土交通省の理解を得ることも不可欠で、開発にも時間を要したらしい。
プラットフォームは、基本的には既存のダイハツ車(最も近いのはミライース)をベースにしながら、新しい骨格構造の「Dフレーム」を採用。
ボディ底面のサイドメンバーやクロスメンバー、センター部分などに補強を施し、上側も入念に造り込んだ。そもそもオープンモデルだから、大幅に造り替えている。その結果、ボディの曲げ剛性は先代コペンの約3倍、ねじり剛性は約1.5倍に高まった。
扱いやすいターボ特性となった新型コペンのエンジン
ルーフは全車に電動開閉式ハードトップの「アクティブトップ」を装着する。閉じた状態からフルオープンになるまでの所要時間は約24秒。ボディ形状は空力特性に配慮され、後輪の揚力は約60%低減となって4輪の接地性を高めた。
サスペンションはほかのダイハツの軽自動車と同様、フロント側はストラットの独立式、リア側はトーションビームの車軸式になる。前後ともにボディの傾き方を制御するスタビライザーを組み込んだ。トーションビームは構造的にスタビライザーの効果を併せ持つが、ビーム内部に追加している。
エンジンは直列3気筒のツインカムで、全車がターボを装着。最高出力は64馬力(6,400回転)、最大トルクは9.4kg-m(3,200回転)。既存のダイハツ車と同じエンジンだが、チューニングは設計が新しいタントのターボと同じだ。ムーヴのターボは最大トルクの発生回転数が4,000回転だから、コペンとタントは実用回転域の駆動力が向上している。
ちなみに、先代コペンのエンジンは直列4気筒のツインカムターボ。最大トルクは11.2kg-m(3,200回転)だったから新型の数値は見劣りするが、ターボの特性が改善されて扱いやすい。
そして、新型コペンでは燃費も大幅に向上。5速MT仕様は「22.2km/L」、CVT(無段変速AT)はアイドリングストップも装着されて「25.2km/L」に達する。先代コペンの4速AT仕様は「15.2km/L」で、今日でいえば2リッタークラスのミニバン並。先代コペンから新型コペンに代替えすれば、数値上では燃料代を約40%カットできる。
コペンとスイフトスポーツ・・・これは迷う!(かも)
新型コペンのグレードは今のところ「コペンローブ」のみで、5速MTとCVTの区分があるだけだ。横滑り防止装置やLEDヘッドランプは標準装着されている。
ただし、今のダイハツ車に幅広く設定される赤外線レーザーを使った衝突回避の支援機能はない。サイドエアバッグも設定されず、安全装備の充実が今後の課題になる。
自動ブレーキを作動できる衝突回避の支援機能は、時速30km以下で作動する赤外線レーザー方式ではなく、高速域までカバーできるミリ波レーダーやカメラ方式が好ましい。
コペンは長距離ドライブも楽しめる軽自動車で、高速道路を使うことも考えられるからだ。安全装備の付加機能となる車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも、コペンに設ければ利用価値が高いだろう。
車両価格はCVTが179万8200円。5速MTは181万9800円だ。
5速MTは2万1600円高く、前述のようにアイドリングストップも装着されない。5速MTにはフロントスーパーLSDが3万2400円でオプション設定されるが、プラスされる標準装着品はない。
なのでアイドリングストップの非装着も含めると、5速MTの価格はCVTよりも4万円ほど高い。5速MTはシフト感覚を向上すべく、細かなチューニングも行ったから、高コストになったようだ。ちなみにCVTの179万8200円という価格設定は、スイフトスポーツのCVTと同額になる。
コペンは軽自動車では高価格だが、電動開閉式のハードトップなども装着され、独自の魅力も備わる。スイフトスポーツと同額というのは、巧いところを突いた。
コペンとスイフトスポーツはまったく違うクルマなのに、同じ価格で提示されると、何となく迷う気分になってくる。
久しぶりの楽しい悩みだ。
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