VW up! GTI試乗|ターボと6MTでup!史上最もパワフルなホットハッチが誕生

VWの末っ子up!に待望のGTIが登場

フォルクスワーゲンの末弟“up!”に待望のハイパフォーマンスバージョン“up! GTI”が誕生した。

1976年にデビューした初代ゴルフGTIの遺伝子を受け継ぐup! GTIは、up!用の3気筒 1リッター自然吸気エンジンにターボチャージャーを追加。ギアボックスを6段マニュアル式に換装するとともに足回りを強化した文字どおりのホットハッチである。

もっとも、up! GTIはホットハッチという言葉から想像されるキャラクターよりもはるかに優等生だった。

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ホットハッチだけど優しい乗り心地

まず、乗り心地がとても優しい。街中をゆっくり走るような状況でもタイヤがドスンドスンと突き上げられることもなく、滑らかな走りが楽しめる。速度を上げればボディはさらに落ち着いて無駄な動きがなくなり、高速道路でも安心して走行できた。

実は、私は個人的に標準仕様のup!を所有しているけれど、それと比べてもサスペンションが大幅に硬くなったとは思えない。

up! GTIは、私のup!が履く185/55R15より2インチも大きな215/45R17を装着していたが、サスペンションのセッティングはタイヤサイズの変更分を織り込んだだけで、「ホットハッチなんだから足は硬くしなきゃ!」という意図はほとんど感じられない。

ワインディングはスポーツカーさながらのスピードで駆け抜ける

それでもup! GTIの走りは十分にすばしっこいし、コーナリングスピードだって驚くほど速い。

もともと私のup!も、幅の細いタイヤのどこにこんなグリップが潜んでいたんだろうと思うくらいタイヤの能力を引き出す能力に長けているのだけれど、それはup! GTIもまったく同じ。箱根のワインディングロードを駆け抜けたときのペースは、本格的なスポーツカーとほとんど変わらないくらい速いものだった。

標準up!に比べて最大トルクは2倍以上の200Nm

up! GTIが速いもうひとつの理由が、そのエンジンだ。

ターボチャージャーを得た1リッターエンジンは、標準仕様を41psも上回る116psを発揮。最大トルクは95Nmから200Nmへと2倍以上の伸びを実現している。もっともこのエンジン、音はうるさくないしトルクカーブもフラットなため、体感できるパワー感はさほどでもない。

それでも200Nmもあるトルクのおかげで勾配10%を越す箱根の急坂でもグイグイと加速していけるし、高速道路で追い越しを仕掛けるにもシフトダウンをする必要がない。アクセルペダルを踏む右足にちょっと力を込めるだけで、スルスルと加速していってくれるのである。

up!初のマニュアルギアボックスを設定

日本仕様のup!に初採用となったマニュアルギアボックスも往年のホットハッチ・ファンからは歓迎されそう。

クラッチペダルもシフトレバーもスムーズに動くから、渋滞を走っている最中もストレスには感じられないはず。いっぽうで、微妙なアクセル・ワークがクルマの駆動力へとダイレクトに反映される感覚はマニュアル・ギアボックスなればこそ。

これが、400psも500psもあるようなホンモノのハイパフォーマンスカーだったら、マニュアル・ギアボックスじゃとても追いつかないくらい機敏な加速を示すだろうが、いくらパワーアップしたとはいえ最高出力116psに過ぎないup! GTIのダッシュは穏やかなものなので、たとえ左手と両足でペダルやシフトレバーを操作しても「間に合わない!」ということはない。

それどころか、常にクルマの運転と向き合っている軽い緊張が心地いい充足感をもたらしてくれるだろう。

GTIの伝統ともいえる赤いチェック柄のシートも採用

GTIのエッセンスをいたるところに散りばめたデザインも、マニアにはたまらないはず。

幅がごく狭いup!のグリルもしっかりハニカムタイプに交換されているほか、その下側には赤い縁取りがあってGTIのスポーティなイメージを強調している。

極めつけはシートで、ゴルフGTIから連綿と受け継がれてきたチェック柄のシート地を採用。本革巻きのステアリングには赤いステッチが入るほか、GTIのロゴも誇らしげに輝いている。マニアであれば「憧れのGTIを手に入れた」満足感は120%だろう。

219万円というお買い得価格で600台限定

ちょっと心配なのは、up! GTIが全国600台の限定販売となっていること。本当だったら継続販売されるカタログモデルにして欲しいところだけれど、マニュアル・ギアボックスの需要は私たちが勝手に決めつけているほどには大きくないのかもしれない。

とはいえ、up! GTIの価格は219万円というバーゲン・プライス。だから、あっという間に完売してフォルクスワーゲンから「やっぱりカタログモデルにすることにしました!」というニュースが届くことを心待ちにしたい。

[TEXT:大谷達也/PHOTO:茂呂幸正]

フォルクスワーゲン up! GTIの主要スペック

車種名フォルクスワーゲン up! GTI

全長

3625mm

全幅(車幅)

1650mm

全高(車高)

1485mm

ホイールベース

2420mm

車両重量

1000kg

乗車定員

4人

エンジン種類

直列3気筒DOHCインタークーラー付ターボ(4バルブ)

排気量

999cc

最高出力

85kW(116ps)/5000~5500rpm

最大トルク

200N・m(20.4kgm)/2000~3500rpm

トランスミッション

6速マニュアルトランスミッション

タイヤサイズ

195/40R 17

価格(消費税込)

219万9000円

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大谷 達也
筆者大谷 達也

1961年、神奈川県生まれ。エンジニア職を経験後、1990年二玄社に就職し、CG編集部に配属となる。以来、20年間にわたり同誌の新車情報、モータースポーツに関する記事を企画・編集・執筆。2010年3月フリーランスとなる。現在もCGの編集・執筆業務に携わる傍ら、ENGINE、GENROQ、東京中日スポーツ新聞、レーシングオンなどにも寄稿。日本モータースポーツ記者会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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