VW 新型アルテオン試乗レポート|様々な魅力を“いい所取り”したVWのファストバック(1/2)

VWの世界戦略車は、「アート」な「上級車」

コンパクトカーからミディアムセダンまで幅広いラインアップを持つフォルクスワーゲン(以下VW)は、世界の主要自動車メーカーからベンチマークにされる存在だが、どのカテゴリーも質実剛健で王道的なモデルが多く、たまに新ジャンルに挑戦しても、残念ながら大成した例は非常に少ない。

その一つが2002年に登場したVW初のラグジュアリーサルーン「フェートン」だ。当時の高級車路線戦略の一環として開発され、専用工場まで建設するほど気合が入っていたが、ドイツの国民車ブランドでありながらも一般庶民に手が届くクルマではなかったことや、VWのイメージとそぐわないことから発売当初より苦戦し、一度もフルモデルチェンジされることなく生産終了。ちなみに現在は、事実上の後継車である「フィデオン(Phideon)」が存在するものの、これは中国専用車である。

では、世界戦略車としてのフラッグシップはと言うと、今年のジュネーブショーで世界初公開された「アルテオン(Arteon)」である。車名は「Art」と「eon」の造語。ちなみに今後のVWの上級モデルには「eon」が付いたネーミングが与えられるそうだが、アルテオンは「アート」な「上級車」と言うわけである。

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カッコよくセクシー、それでいてVWらしい実直さが残された外観デザイン

その名の通り、エクステリアは昨今多くのプレミアムブランドがラインアップするスポーティで流麗な4ドアクーペスタイルを採用。フロントマスクはグリルに水平に伸びるバーとヘッドライトがシームレスに繋がる新VWデザイン、よりパキッとしたプレスラインと抑揚が強いボリューム感あるフェンダー周り、曲線的なリア周り、更には20インチホイールの採用と、どこを取ってもデザインコンシャスに見えるが、実はリアゲートを備える5ドアハッチバック(VWではファストバックと呼ぶ)。つまりカッコいいけど実用性は損なわれていない……である。

実車を見ると非常にカッコよくセクシーなのだが、他ブランドの似たようなモデルと比べて危険な香りがしないのは、VWらしい実直さが残されているからか!?ちなみにサイズは全長4865×全幅1875×全高1435mm、ホイールベース2835mmと全高以外はパサートよりも若干大きくなっている。

ボディカラーには、多彩なバリエーションが用意されるが、お勧めはやはりイメージカラーの「ターメリックイエロー」だ。個人的にも無難に白/黒/シルバーを選ぶなら、他のクルマを選らんだほうがいいと思うくらいである。

下手なステーションワゴン顔負けの利便性

インテリアはエクステリアほど攻めておらず、インパネ周りはパサートとほぼ同じデザインを採用。逆に長時間いる場所は奇を狙わずシンプルなほうが疲れない。

ブラック/チタンブラックのナパレザーシートやデジタルメータークラスター(アドバンスのみ)、ジェスチャーコントロールが可能な純正インフォテイメントシステム「ディスカバー・プロ」などフル装備。

フロントシートが特等席かと思いきや、後席もロングホイールベースを活かした広々としたレッグスペースや、クーペスタイルながら必要十分なヘッドクリアランスを確保する(アドバンスにオプション設定のサンルーフはアウタースライド式を採用)。更にラゲッジスペースは約536リットル(後席を畳むと1,557リットル)で、テールゲートはハンズフリー式パワーテールゲート付と、見た目に似合わず下手なステーションワゴン顔負けの利便性も備えているのだ。

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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