スズキ キャリイ 試乗レポート/渡辺陽一郎(1/3)

スズキ キャリイ 試乗レポート/渡辺陽一郎
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新トランスミッションを軽乗用車ではなく、軽トラックに採用

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最近の軽自動車では、最新技術の採用が話題になる。スズキ「ワゴンR」は低燃費のエネチャージをSエネチャージに進化させ、モーター駆動がエンジンをサポートするハイブリッドの機能を持たせた。安全面では、低速用ではあるものの、自動ブレーキを作動できる衝突回避の支援機能が幅広い車種に搭載されている。

そしてスズキは新たなトランスミッションとして、5AGS(5速タイプのオート・ギヤ・シフト)を開発した。注目されるのは搭載車種。ワゴンRや「スペーシア」といった軽乗用車ではなく、軽トラックのキャリイに採用している。

5AGSは、5速MTをベースにしたシングルクラッチ方式の2ペダルATだ。1組のクラッチと、電動油圧式アクチュエーター(制御装置)を備える。VW(フォルクスワーゲン)「up!」のASGに相当する機能と考えれば良い。トルクコンバーターやCVT(無段変速AT)を使わないクラッチ方式のATは、軽自動車では今のところキャリイの5AGSだけだ。

5AGSがup!のASGなどと異なるのは、駐車時やエンジンの始動/停止時に使う「Pレンジ」を設けたこと。操作方法が一般的なATと同じだから馴染みやすい。シフトレバーは直線的に動かすタイプで、各レンジが前方から「P/R/N/D」と並ぶ。

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「Dレンジ」の状態で、ATレバーを左に移動させると「M(マニュアル)モード」に入る。レバーを前方に押すとシフトダウン、手前に引くとシフトアップが可能だ。スズキはマツダやBMWと同様、ATレバーを前方に押すとシフトダウンする方式を採用しており、スズキ「キザシ」もこのタイプ。減速時には前方へ力が加わるから、「押してシフトダウン」は理屈に合う。

ただし日本車のATは長らく前方から「P/R/N/D/S/L」といった配置で、進行方向に向けてスライドさせると高速化する考え方だった。なので今でも「押してシフトアップ」の車種が多く、運転する時には発進前にATの操作方法を確認したい。

5AGSは5速MTがベースだから、流体のトルクコンバーターを使った従来型のATに比べると、駆動力の伝達ロスが少ない。5速タイプだから、巡航時にはエンジンの回転数も下げられる。

なので燃費性能は良好だ。キャリイKCエアコンパワステ仕様の2WD(後輪駆動)モデルで比較すると、5AGSのJC08モードは19.4km/L。3速ATは16.8km/Lだから、15%の燃費向上になる。5速MTの18.6km/Lと比べても、優れた数値を達成した。

価格は5AGSを採用するKCエアコンパワステ仕様の2WDが92万6640円。3速ATと同価格だから、5速化されて燃費が向上する分だけ買い得ともいえるだろう。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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