【解説】エクステリアを大胆に一新!このデザインは「アリ」なのか!?スズキ 8代目新型アルト(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:阿部昌也・スズキ株式会社
新型アルトの燃費はなんと!トヨタ アクアと同じ「37km/L」!
エンジンは今のスズキ車に多く使われるR06A型だが、排出ガスの一部を燃焼室に環流させて燃焼温度を低下させ、ノッキング(自然着火)を防止するEGRを採用した。ピストンの形状なども見直され、圧縮比は先代アルトエコの11.2に対して11.5まで高めている。
トランスミッションは、大半のグレードが副変速機を備えたCVT(無段変速AT)を採用。これにも改良を加え、燃費を改善させた。
最廉価の「F」グレードには、5速MTをベースにしたシングルクラッチ方式の「5AGS」が採用される。5AGSは軽トラックのキャリイにも採用されており、低コストで燃料の消費量を効果的に抑えている。低燃費技術では、最廉価の「F」を除くすべてのグレードにエネチャージを採用。電装品に電力を供給する発電を減速時に行い、アイドリングストップも採用することで、燃費を向上させた。
JC08モード燃費は、エネチャージを備えたL/S/Xの前輪駆動モデルが「37km/L」。この数値はコンパクトなハイブリッド専用車のアクアと同じで、日本で販売される乗用車では最良だ。
また、アイドリングストップやエネチャージを持たない「F」(2WD)も、5AGSによって「29.6km/L」を達成。すべての仕様にわたり燃費を向上させている。
従来よりも60kg以上も軽くなった新型アルトの車重、安全面も強化
この優れた燃費性能の背景には、新しいプラットフォームの採用もある。ボディの底面を滑らかな形状にして、鉄の厚みなどを含めて全面的に見直した。その結果、新型アルトの車両重量は610~650kg(4WD除く)。
先代型は690~710kgだったから、60kg以上も軽くなった。ボディの軽い軽自動車では60kgが9%に相当するから、燃費向上の効果も大きい。軽量化した上で、ボディ剛性は約30%高めたから、プラットフォームの刷新によって効率が大幅に向上している。
足まわりの造りも見直され、フロント側のストラットサスペンションは、軽量化させて剛性も高めた。リア側のトーションビーム式サスペンションは完全な新設計で、走行安定性を向上させている。
装備では安全面に注目したい。レーダーブレーキサポート(赤外線レーザーを使った時速30km以下で作動する衝突回避の支援機能)は、バンを含めてすべてのグレードに装着できる。
横滑り防止装置は、乗用モデルについては全車に標準装着した。今後の課題として、サイド&カーテンエアバッグを設定すると良いだろう。
燃費はガソリンエンジンNo.1、価格もお買い得でライバル車を引き離す
グレードは乗用モデルが4種類、バンを1種類用意。レーダーブレーキサポートの価格は、乗用モデルであれば2万1,600円と安い。最廉価になる「F」の価格は、5AGS仕様にレーダーブレーキサポートを加えて「86万9,400円」。キーレスエントリーやパワーウィンドウなどは装着されるので、低価格でも実用性に不満はない。
そして最も推奨できるグレードは、「S」にレーダーブレーキサポートを加えたタイプで、価格は「102万3,840円」。この仕様であればエネチャージや各種の低燃費技術により、JC08モード燃費は前述の37km/L。電動格納式ドアミラーなど、快適装備も充実する。
ちなみに、同等の装備を持つライバル車であるダイハツの「ミライース X・SA」の価格は「108万円」だから、アルトは割安感でも十分にミライースに対抗できる。
新型アルトで興味深いのは、最上級グレードの「X」を設定したことだ。価格は「113万4,000円」。レーダーブレーキサポートなどは標準装着されているが、それでもアルトとしては価格が高めになる。
価格が高まった理由は、走りの装備を中心に上級化したから。前後の足まわりにボディの傾き方を制御するスタビライザーを装着。タイヤサイズは、ほかのグレードは13インチ(145/80R13)だが、Xは15インチ(165/55R15)に拡大した。
アルミホイール、LEDサイドターンランプ付きドアミラーなども装着され、Xはアルトでは久々のスポーティグレードになる。
実に多くの魅力を持ち、ファミリーカーとしての実力も備えてしまった新型アルト
今までのアルトは、低燃費と低価格に特化していたが、新型アルトはイメージが少し違う。
従来の低燃費をさらに向上させ、ライバル車との競争関係で低価格も維持したが、内装の質を高めて後席の足元空間も広げた。安全装備でも遜色はほとんどない。ベーシックな軽自動車だが、長距離を移動するのでなければファミリーカーとしても使えそうだ。となれば新型アルトは、新しいユーザーを獲得するだろう。
ワゴンRやMRワゴンから代替えするユーザーも増えるに違いない。軽自動車の「薄利多売」がますます進む。ユーザーの受けるメリットは大きいが、軽自動車メーカー間の競争も、さらに激しくなるだろう。
スズキ 新型アルトセダン 燃費・価格一覧
F/5MT/(2WD)27.2km/L・847,800円(4WD)25.2km/L・953,640円
F/5AGS/(2WD)29.6km/L・847,800円(4WD)27.4km/L・953,640円
L/CVT/(2WD)37.0km/L・894,240円(4WD)33.2km/L・1,000,080円
S/CVT/(2WD)37.0km/L・1,002,240円(4WD)33.2km/L・1,102,680円
X/CVT/(2WD)37.0km/L・1,134,000円(4WD)33.2km/L・1,229,040円
スズキ 新型アルトバン 燃費・価格一覧
VP/5MT/25.8km/L・696,600円
VP/5AGS/(2WD)26.2km/L・777,600円(4WD)24.0km/L・885,600円
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