タカタ製エアバッグのリコール未改修車は2018年5月以降車検が通らなくなるってホント!?

特に危険性が高い未改修車約130万台は車検が通らなくなる

タカタ製エアバッグ(助手席)が、2009年からリコールの対象になっている。エアバッグを膨らませるインフレーター(ガス発生装置)が衝突時に破裂して、金属片が飛散する危険な不具合が生じるためだ。

このエアバッグのリコール対策は、9年を経過する2018年現時点でも終了していない。しかも「作動時に異常破裂する危険性が特に高いリコール未改修車両」が、2017年10月時点で約130万台存在している(9メーカー/97車種)。2017年に日本国内で売られた4輪車の販売総数が523万台だから、危険なリコール未改修車両がいかに膨大か分かるだろう。

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そしてこの未改修車両が、2018年5月以降、リコール改修をしない限り車検に通らないことになった。該当する車種は例えば、2001年6月から2011年3月まで製造されたホンダ フィット(初代&2代目)や2002年12月から2008年12月まで製造されたトヨタ ヴィッツ(初代&2代目)、2003年4月から2004年2月まで製造されたスバル レガシィ(4代目)など多岐にわたる。詳細は国土交通省のホームページを参照してほしい。

【関連リンク】

エアバッグのリコール未改修車両を車検で通さない措置について(国土交通省)

エアバッグのリコール未改修車両を車検で通さない措置を開始(国土交通省)

タカタ製エアバッグのリコール届出(国産車:メーカー名・通称名別)について(国土交通省)

JASPA車種リコール状況確認

果たしてリコールの改修作業はスムーズに進むのか?

車検に影響する特に危険な130万台を含めて、タカタ製エアバッグの日本国内におけるリコール未改修総数は、2017年10月時点で320万台に達するという。改修率は83.2%というから、一見改修が進んだ印象も受けるが、リコール台数そのものが多いために未改修車両も多く残される。

それにしてもリコールを受けないと車検を通さない、つまり個人所有の車両が運行するのを差し止める措置は、リコールの対処方法としては相当に積極的(あるいは強制的)だ。高い危険性が伴うと判断された結果だが、リコールの改修はスムーズに進むのか。

タカタ製エアバッグのリコールは、コンピューターのソフトウェアを書き換えるといった内容ではなく部品交換を伴う。作業時間はエアバッグ1個について約1時間とされるが、台数が多いためにユーザーが待たされる期間も長いのではないか。

読者から直接聞いた例として、昨年7月、対処療法的に助手席エアバッグのキャンセル処理を受けた車両が、いまだに部品が届かず改修作業が完了していないというケースもあるようだ。

そうなると対象車両がリコール改修の順番を待つ間に車検期間が満了して、車検を受けられずに運行不可能になるのではないかという心配も生じる。

この点を国土交通省と新車販売店に尋ねた。

国土交通省と新車販売店に聞いてみた

Q:リコールの対象車両が改修作業を待っている間に車検期間が満了したらどうなるのか?

国土交通省:「リコールに必要な対策部品の供給体制は十分に整っている。車両が入庫(販売店の指定工場などに預けられること)した段階で、リコール作業をすることが可能だ。またリコール改修をしないと車検が通らなくなることは、すでにユーザーに周知されている」という。

Q:リコール改修を受けないと車検に通さない措置は、過去にも行ったことがあるのか?

国土交通省:「リコール改修を受けないと車検を通さない措置は、相当に危険性が高いリコールについて行われる。おそらく乗用車では前例がないと思う。ただし2004年に行われた三菱ふそう製大型トラックのクラッチハウジングに関する破断・亀裂事案のリコールでは、未改修車両に車検を通さない措置を適用した」との返答だ。

 

一方、リコールの改修作業を行う新車販売店にも尋ねた。

Q:タカタエアバッグのリコールにはどのように対応しているのか?

新車販売店:「車検に通らない車両はもちろん、それ以外のリコールについても、早めに連絡を取って入庫の打ち合わせをさせていただきたい。一時的にリコールの入庫台数が増えると、対策部品が欠品する可能性が高く、先般のエアバッグについては車検を通せなくなってしまう。エアバッグのリコールに要する作業時間は、基本的には長くないが(前述のように約1時間)、車種によっては2時間程度を要する。一番の課題はリコール対象台数がきわめて多いことで、入庫台数が対策部品の供給量を上まわると待ち時間も長引く。今後の入庫台数、対策部品の供給に関して明確な見通しが立っていないので、とにかく迅速に入庫していただきたい」という。

責任を負うのは「タカタ」なのかタカタの部品を採用した自動車メーカーなのか?

ユーザーとしては、車検の入庫とエアバッグのリコール改修作業を同時に行えると都合が良いが、そのためには販売店と打ち合わせをしてスケジュールを明らかにしておく必要がある。

また今回のエアバッグに限らず、リコールはすべて安全性を維持するために行われる。リコール改修を先伸ばしにすれば、車両の安全性を低下させるのは当然だ。リコールの対象になった時は、少々面倒でも迅速に改修を受けてもらいたい。

そしてタカタ製エアバッグのリコールで気になるのは、「タカタ」の名前が前面に出て報道され、主に同社の帰責性が論じられていることだ。ユーザーはタカタからエアバッグを買って自分で装着したわけではない。ユーザーが購入したのは、あくまでも自動車メーカーが製造した車両で、そこにタカタ製エアバッグが付いていたにすぎない。

そうなるとユーザーに対して責任を取るのは、当然に自動車メーカーだ。タカタはユーザーではなく、自動車メーカーから責任を追及される立場になる。タカタのエアバッグは数多くの自動車メーカーに供給され(フォルクスワーゲンやBMWなどの輸入車も含まれる)、正確に分かりやすく報道するためにタカタの社名も明記するが、ユーザーに対する責任はあくまでも自動車メーカーが負う。

今日の自動車では、部品やユニットの点数と、車種数や生産台数が膨大に増えた。そのためにサプライヤー(下請メーカー)が部品やユニットを供給して、自動車メーカーは主に組み立てを行うようになっている。サプライヤーに対する依存度がきわめて高い。

そうなると大手サプライヤーの製造した部品やユニットに問題が生じると、膨大な数の車両に波及してしまう。それが今回発生したエアバッグの大量リコールだ。自動車産業の成長と肥大化、大手サプライヤーが台頭する自動車の製造方法によって引き起こされた問題でもあるだろう。開発段階と製造段階の両方で、自動車メーカーがサプライヤーの供給部品を精査できるチェック体制が求められている。

[レポート:渡辺陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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