IAAの真実/河村康彦のコラム(2/2)
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:菊池一弥/メーカー各社
ルノーのカンファレンスで感じた、欧州でのEVの期待度
一方、ちょっとネガティブな意味から興味深かったのは、大メーカーのCEOが演台に立ったにも関わらず、通常であれば大入り満員となるはずの取材陣を集めきれなかったルノーのカンファレンスの光景でもあった。
日産が出展を見送った事から、今回は“ルノー専属”となったゴーン社長がカンファレンスを行ったのは、事前に発表された予定通りのプレスデー初日の午前10時45分。
しかし、そんな時間になっても“観客席”に空席が目立ったのは、ここで発表される4台のコンセプトカーすべてが、「EVである」という事前の情報があった事と無関係ではないと思う。
「大小取り混ぜて4台のEVを一斉発表」というのが今回のルノーの売りのひとつ。が、皮肉にもそれが裏目に出た可能性があるとボクは思う。
日産のEVソリューションを活用し、最大レンジは160kmというルノーのEV。しかし、「高速道路を30分進めば、もう帰りには立ち往生」というそんな航続距離は、欧州の使われ方では「現実味がない」と一蹴されても仕方がないものであるのだ。
彼の地の報道陣は、そんなアイテムばかりのルノーのカンファレンスの内容を事前に知って“三行半”を付き付けたのではないか?――ドイツの電力会社であるRWE社と共に、ドイツ国内で電気自動車の普及に向けて協力関係を発表し、そんなREW社のCEOと共に演台上でゴキゲンのゴーン社長の姿とは裏腹に、何となく“醒め気味”という観客席の光景を前にして、自分はそう感じてしまったのであるが・・・。
ところで、そんなドイツから帰国をして溜まりに溜まった新聞やネット上のニュースに目を通していると、「フランクフルト・ショーが開幕。欧州でもEV化の流れが!」といったスタンスの記事が多かった事にちょっとビックリ。
確かに今回、多くのメーカーからEVのコンセプトカーが出展されたのは事実ながら、例えばVWのヴィンターコルン社長などは「電気自動車の時代が到来するのは世界全ての大陸で使用されるようになってから。その生産台数が現在のポロ・レベルに達するのも、早くとも2020年ごろ」と、むしろそれまではTDIやTSIといった最新テクノロジーを投入したエンジン車の活躍を明言しているのに・・・。
というわけで、「今はネットが発達しているので、日本に居たって情報はすぐ手に入る」というヒトも居るけれど、やっぱりこうして現場に行って見なければ分からない事もヤマほどあるというのも海外ショーの真実。
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