衝撃のエンディングで注目された「ル・マン」と最高峰と言われる「F1」どちらが凄い?(2/2)
- 筆者: 山口 正己
- カメラマン:トヨタ自動車/メルセデス・ベンツ
F1がドライバーズ選手権、対してWECはクルマの優秀性が競われる
例えば、ル・マンの前に行なわれたスパ-フランコルシャン6時間の予選のポールポジションは、ポルシェ919Hybridの1分59秒台。去年、同じスパ-フランコルシャンで行なわれたF1ベルギーGPのポールポジションは、ルイス・ハミルトンの1分47秒台だった。圧倒的にF1が速い。
これは重量も関係しているが、マシンの成り立ちから重量物が中央に集約されたF1マシンの運動性能が高く、コーナリングスピードが高い結果だ。しかし、長距離を走ることを考えると、WECマシンの勝ち。そもそもF1は2時間走ることしか考えていないが、WECマシンは、最大で24時間走る必要がある。
WECの耐久レースのマシンは元々プロトタイプと呼ばれ、将来的に生産車につながる流れの中に存在した。現在は、事実上一人しか乗れないが、昔は申し訳程度の助手席が着いていたのだ。
シリーズの考え方も異なっている。F1がドライバーズ選手権なのに対して、WECはクルマの優秀性が競われる。もちろん、ドライバーズ選手権も存在するが、重きがおかれるのはメイクス(製造者)に与えられる称号だ。
F1もドライバーズチャンピオンシップの他に、マシン製造者に与えられるコンストラクターズチャンピオンシップも存在するが、ドライバーズチャンピオンシップが中心。だから、ル・マンに勝ったのはポルシェと表現され、モナコGPに勝ったのはルイス・ハミルトン、と言われるのだ。
では、どちらが上かと言われるとこれはなかなか難しい。というのは、映画『栄光のル・マン』の舞台となった1970年頃のWECは、ポルシェやフェラーリが巨額の予算をつぎ込んだ闘いを展開していたことで、F1より高度で注目度も高かった。事実、次々に注目のマシンが登場してレースも面白かった。
WECとF1の注目度は時代と共に変化
その後、F1がタバコマネーを中心として巨額のスポンサーを集めるようになって注目度を高め、テレビの放映で5億人が観るようになり注目度を高めた。
要するに、メーカーがどれだけ本気で闘うかによって、WECとF1の注目度は時代と共に変化する、ということ。ここ数年の流れを観ていると、WECのポテンシャルがアップしている。特に今年のル・マンは、トヨタの最後の6分のドラマで注目を集め、WECが勢力を強めた感がある。
WECは、今年のトヨタが晒された厳しい現実が反対により多くの人にインパクトを与えて気になる存在になっている。来年のル・マン24時間は、さらに注目されるはずだが、その前に日本では、10月14~16日に富士スピードウェイで行なわれる第7戦を見物したいというファンが間違いなく増えたはずだ。
トヨタを讃えつつ、ポルシェは60年間持ち続けた夢を18回達成した。それでもまだ夢の継続を伝えるポルシェのメッセージをかみしめつつ、8月18日のWECジャパンのチケット発売に備えたい。
[Text:山口正己]
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