禁じ手の自社届出、薄利多売、増税、そして「燃費不正」・・・もはやユーザー“度外視”の「軽自動車」(4/5)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
“不可解な点”の多い三菱不正問題
この件については“不可解な点”が実に多い。
三菱側の説明では、JC08モード燃費の計測値を補正する走行抵抗に不正があり、その結果として記者会見などでは燃費数値が5~15%上乗せされたとしている。
しかし走行抵抗の不正だけで、燃費数値を5%以上も高めるのは困難だ。仮に15%の不正があって30km/Lに高めたとすれば、本当の数値は26km/Lまで下がる。となれば、ほかにも不正があったのではないかと疑う余地が生じる。
例えば、フォルクスワーゲンのディーゼル車排ガス規制不正問題のように、計測開始を検知すると別のソフトウェアを起動するとか、さらに妄想を膨らませると、燃費計測用の特別なエンジンを積んで試験を受けたのではないか、といったことだ。
また不正な操作をした部署が実験部だとか、下請企業の三菱自動車エンジニアリングだったと説明が錯綜しているが、基本的にJC08モード燃費の計測を行う認証部門は、商品企画/車両開発/実験部門からは独立した組織である必要がある。そうしないと中立な立場から排出ガスや燃費などの計測を行えないからだ。
記者会見では「ムーヴのJC08モード燃費が29km/Lを達成したので、eKワゴンとデイズは29.2km/Lに引き上げた」という趣旨の説明があったが、本当だとすれば認証部門の独立性が保たれていなかったことになる。
こういった数多くの謎を含んだ三菱の燃費不正問題により、冒頭で述べたように三菱 eKワゴン/eKスペース、日産デイズ/デイズルークスが製造と販売を中止した。
ユーザーがほかのメーカーに移ることはあっても、軽自動車の売れ行き低下は避けられない。2016年4月の時点でも、日産の軽自動車の届け出台数は対前年比が51%のマイナス、三菱も45%減っており、軽自動車市場全体では7.5%減少した。新車市場全体に占める軽自動車の比率も34%に下がっている。
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