禁じ手の自社届出、薄利多売、増税、そして「燃費不正」・・・もはやユーザー“度外視”の「軽自動車」(1/5)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
販売好調な軽自動車であったが・・・
いま、“軽自動車”が様々な観点から「受難の時」を迎えている。
まず2015年4月以降に届け出された軽自動車では、軽自動車税が従来の年額7200円から1万800円に値上げされた(2015年3月以前の届け出は7200円を維持)。この影響もあって売れ行きが下がったといわれる。
また、先般の三菱自動車による燃費計測の不正問題により、「三菱 eKワゴン/eKスペース」「日産 デイズ/デイズルークス」が製造・販売を中止した。この4車種は三菱と日産が「NMKV」と呼ばれる合弁会社を設立して企画を行い、開発と生産は三菱が行っている。基本的に同じクルマなので、両車とも製造と販売を中止した。
軽自動車の売れ行きについては、過去の販売統計を長期的に見る必要がある。
クルマの販売にかかわらず売れ行きは「前年対比」で論じることが多いが、そのさらに前年の数字も見ないと正確な判断はできない。前年が伸びれば、翌年が相対的に減るのは当然であるからだ。
軽自動車の届け出台数を過去に遡って前年対比で見ると、東日本大震災の影響が収まった2013年は106.7%(小型&普通車は96.2%)、2014年は107.6%(同100.8%)、2015年は83.4%(同95.8%)となる。
小型&普通車は2013年がマイナス、2014年は横這いだったが、軽自動車は2年続けて7%前後の伸びを記録した。そこも含めて判断する必要がある。
そして2015年の軽自動車販売は、前年に比べて16.6%減ったが、新車市場に占める割合は約38%であった。この比率は軽自動車の年間届け出台数が初めて200万台を超えて大騒ぎになった時の35%を上まわる。長期的に見れば、軽自動車は今でも十分に売れている。
軽自動車の“異常”ともいえる売れ行きに潜む「問題」
では、なぜ2013~2014年にかけて軽自動車の売れ行きが急増したのか。2014年は新車販売されたクルマの41%が軽自動車と異常とも言える増え方となったのだが、ここに軽自動車業界の問題が潜む。
売れ行きが急増した背景には「2つの理由」があった。まず一つ目は、好調に売れる軽自動車の新型車が数多く発売されたことだ。
「スズキ スペーシア(2013年3月登場)」「三菱 eKワゴン&日産 デイズ(2013年6月)」「ダイハツ タント(2013年10月)」「ホンダ N-WGN(2013年11月)」「スズキ ハスラー(2014年1月)」「三菱 eKスペース&日産 デイズルークス(2014年2月)」といった新型車が、2013~2014年の売れ行きを押し上げた。
さらに従来から発売されていた「ホンダ N-BOX(2011年12月)」「スズキ ワゴンR(2012年9月)」「ダイハツ ミライース(2011年9月)」なども依然として人気を保っていた。
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