禁じ手の自社届出、薄利多売、増税、そして「燃費不正」・・・もはやユーザー“度外視”の「軽自動車」(2/5)

禁じ手の自社届出、薄利多売、増税、そして「燃費不正」・・・もはやユーザー“度外視”の「軽自動車」
日産 DAYZ/三菱 ekワゴン オフライン式(2013年5月) スズキ スペーシア 発表会にて ダイハツ タント スズキ株式会社 代表取締役会長 鈴木 修氏 スズキ ハスラー 発表会にて(2013年12月) スズキ ハスラー 発表会にて(2013年12月) スズキ ハスラー 発表会にて(2013年12月) (左)ダイハツ タント/(右)スズキ スペーシア ムーヴカスタム・ワゴンRスティングレー・N-WGNカスタム ホンダ Nシリーズ スズキ イグニス 画像ギャラリーはこちら

過熱していったスズキ・ダイハツの「販売合戦」

スズキ ハスラー 発表会にて(2013年12月)

2つ目の理由は、新型の軽自動車が続々と登場したことで「販売合戦が過熱」したことだ。

特に2014年1月に登場した「スズキ ハスラー」は大ヒットとなり、2014年には10万台を超えてスズキ 先代アルト&ラパンと並ぶほどの販売台数になった。当時はワゴンRやスペーシアにも勢いがあり、2014年のスズキは月別の軽自動車販売において対前年比「110%」前後で推移した。

一方、ライバルメーカーのダイハツの対前年比は「105%」前後と、スズキの伸び率におよばない。結果、スズキは2007年以来、ダイハツに奪われていた軽自動車の販売首位を取り戻せる可能性が高まった。

2014年1~7月の累計では、1位のダイハツと2位のスズキには1万3060台の差があったが、8月以降はスズキ車が好調に売れて、1~10月の累計ではスズキが852台の差で逆転してダイハツから1位を奪った。こうなると、ダイハツも負けていられない。

結果として、両社の泥試合に発展した。

トップの座を奪うため「禁じ手」まで使った両社

(左)ダイハツ タント/(右)スズキ スペーシア

販売会社が在庫車を自社で届け出して、実質的に未使用の中古車として中古車市場に卸した。届け出台数を粉飾するためとはいえ、新車として販売できる車両を価値の低い中古車にするのだから、非常にムダな行為だ。

未使用の中古車が増えると、中古車価格の値崩れに発展して、まっとうに使われた軽自動車の下取査定額も下げてしまう。なので悪しき商慣習とされるが、デッドヒートに陥り、両社ともこの「禁じ手」を使ってしまった。

特に凄かったのは2014年12月の届け出台数で、スズキの対前年比は152%、ダイハツも140%に至った。

ほかのメーカーの軽自動車販売は対前年比が75%前後で前年を下まわったから、両社とも1ヶ月に2万台近い自社届け出を行った可能性があった。

そして2014年の軽自動車届け出総数は、スズキが70万9083台、ダイハツは70万6288台。わずか2795台の差でスズキが首位になった。自社届け出の台数が少し違えば、ダイハツが首位になることもあり得た。

2015年には再びダイハツが首位に戻ったが、このような無理な売り方(正確には届け出の仕方)をすれば、後年の売れ行きが下がって当然だ。

「行儀の悪い売り方やめた」大きく方向転換を図るスズキ

スズキ株式会社 代表取締役会長 鈴木 修氏

スズキの鈴木修会長は、2016年5月10日の決算会見で「お行儀の悪い売り方をやめた」「1台1台を大切に売っていく考え方に大幅に方向転換する」と述べている。

「お行儀の悪い売り方」とは自社届け出を示した言葉だ。ただし自社届け出の自粛は今に始まったことではなく、長年の課題になっている。

鈴木修会長も以前から「お行儀の悪い売り方をやめる」と述べていた。今は以前に比べると自社届け出は大人しくなったが、依然として皆無ではなく状況次第で再燃する可能性もある。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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