禁じ手の自社届出、薄利多売、増税、そして「燃費不正」・・・もはやユーザー“度外視”の「軽自動車」(5/5)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
OEM車といえど自社で取り扱う商品には責任を持つべき
また三菱と日産はNMKVと呼ばれる合弁会社を設立して、三菱 eKワゴン/eKスペースと日産 デイズ/デイズルークスを共同開発した。となれば車両の実験や製造などを三菱が行ったとはいえ、日産の連帯責任も生じると考えるのが妥当だろう。
今回の燃費不正問題は、日産が次期型を開発する段階で改めて燃費計測を行って発覚したとされるが、もっと早い段階で気付くべきだったのではないか。少なくともユーザーは、日産のデイズ/デイズルークスを、日産の販売店から購入している。
三菱が燃費の走行抵抗を不正に計測したといった問題は、ユーザーにとっては日産側の事情に過ぎない。いわゆるOEM車を含めて、自社で取り扱う商品には責任を持つべきだ。
これは日産と三菱の関係に限らず、すべてのOEM車に当てはまる。
なお、現時点における新聞などの最新情報では、三菱自動車のプロダクト・エグゼクティブが「JC08モード燃費を29.2km/Lにしたい」と高圧的な言動を行ったとされる。
そこでekワゴンが発売された当初に行われた同プロダクト・エグゼクティブのインタビュー記事を読むと、「燃費に関しても日産のエンジニアと十数回の打ち合わせを行った」という記述がある。
ニュースソースがインタビュー記事だから断言はできないが、29.2km/Lの燃費公表に、日産がまったく関与していないとも言い切れないだろう。
今回の一件は燃費数値に対する信頼性を下げて、これをセールスポイントに発展してきた軽自動車全体のイメージダウンにも繋がっている。軽自動車の増税に燃費不正問題が続き、軽自動車が思わぬ受難を迎えることになった。
販売競争の激化、増税、そして燃費不正・・・問われる軽自動車の意義
これらの問題を考える時に見過ごせないのは、公共の交通機関が未発達な地域において軽自動車が不可欠な移動手段として機能していることだ。
軽自動車は佐賀県、鳥取県、島根県などで10世帯に10台以上の割合で保有され(東京都は最下位で1台少々)、これらの地域では、人口に占める高齢者の比率が30%前後に達する。つまり高齢者が通院や買い物のために軽自動車を使っており、概して古い車両が目立つ。
それなのに2016年4月からは、車齢が13年を超えた軽自動車は、軽自動車税が従来比で179%の年額1万2900円に高騰した。重量税も平成27年度燃費基準達成車は継続車検を受ける時の2年分が5000円だが、13年を超えると164%の8200円、18年を超えると176%の8800円まで高まる。
軽自動車は燃費数値を筆頭に商品力を幅広く向上させて売れ行きを伸ばした。その結果として販売比率が高まって激しい増税が行われ、競争の激化は三菱の燃費不正問題を引き起こす切っ掛けを作ってしまった。
自動車メーカー、政治、行政は、軽自動車を福祉の観点から改めて見直すべきだ。少なくとも、お年寄りに悲しい思いをさせる軽自動車であってはならない。
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