あなたのお住まいには影響ある?地域によって軽自動車増税の負担が違ってくる!!/渡辺陽一郎(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
「軽自動車制度」は今でも尊重すべき
過去を振り返ると、「軽自動車」という規格が設けられたのは1949年。1950年には全長が3m、全幅が1.3mの規格が整った(後のスバル360やホンダN360もこのサイズになる)。
エンジンの規格も、数回の変更を受けた後、1955年に2/4サイクルともに排気量が360ccに統一されている。この時点で軽自動車の規格が確立された。そして1952年には「軽自動車免許」が新設され(1968年に廃止)、1958年には「自転車・荷車税」(昔は自転車や荷車も課税の対象だった)の後を受ける形で、軽自動車税が都道府県税から市町村税に切り替わった(自動車税は今でも都道府県税)。
この流れの中で築かれた軽自動車制度の目的は、自動車を日本に普及させ、なおかつ多くの人達が利便性を受けることにあった。だから軽自動車免許は16歳から取得が可能で、義務教育を終えて就職した人達が、軽自動車を運転して円滑に仕事ができるように配慮されていた。
つまり軽自動車は、ボディサイズやエンジンの排気量を小さく抑える代わりに、税金も安くして、誰もが自動車を持てるようにする制度として発足した。ちなみに1955年の軽自動車税は年額1,500円。1リッター以下の自動車税が1万6,000円だったから、軽自動車税は10%以下と大幅に安かった。
この考え方は今でも尊重すべきだろう。軽自動車制度の確立から約60年を経て、物価に対するクルマの価格は安くなったが、「交通インフラ」を見ると、軽自動車制度の必要性が依然として薄れていないからだ。
日常を支えているのは、数世代前の古い軽自動車
公共の交通機関が未発達な地域では、軽自動車が日常の移動手段として使われている。
都市部に住んでいれば「シルバーパス」によって安価に移動できる高齢者が、毎日の買い物や通院のために軽自動車を使っている現実がある。この場面で機能しているのは、「価格が高まって小型車との差が縮まった」新型の軽自動車ではない。2~3世代前の古い軽自動車が、日常の移動を支えている。
県別の軽自動車普及台数を見ても、佐賀県や鳥取県では、10世帯当たりの普及台数が10台を超えた。島根県、山形県、長野県なども9.8台だ。贅沢をするために所有しているのではなく、公共の交通機関が使いにくいことが原因だ。
一方、東京都は10世帯当たりの普及台数が1.1台、神奈川県と大阪府も2台少々にとどまる。都市部では、日常生活を送る上でクルマが不可欠の移動手段ではないからだ。なので霞ケ関や永田町からは、軽自動車の本当の姿は見えない。
以前、ガソリン価格が高騰した時、「街中を走るクルマが随分減りましたねぇ」と呑気に言っている国会議員がいた。佐賀県や鳥取県では、ガソリン価格が高騰しても、クルマはいつもと変わらずに動いている。「ガソリンが高くなったから電車で移動する」などと悠長なことはいえず、高額な燃料代を支払って軽自動車を使っている。
つまり軽自動車は「ライフライン」なのだから、公共の交通機関に準じたとらえ方をすべきである。
高齢者が増えた現実を考えれば、福祉車両の役割も担う。軽自動車の増税は、電車やバスの運賃を値上げしたり、福祉車両の税金を増やすのと等しい。
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