消費税増税でクルマの税金は「こう変わる」!/渡辺陽一郎

消費税増税でクルマの税金は「こう変わる」!/渡辺陽一郎
燃費基準ステッカー ホンダの軽「ステップバン」[1972-1974]と初代「ホンダライフ」[1971-1974] 画像ギャラリーはこちら

消費税が8%になったらクルマの税金も変わるって聞いたけど・・・いったい、どう変わるの?

いよいよ、2014年4月1日から消費税が5%から8%へと引き上げられる。目の前に迫った増税は、読者の皆さんにとっても悩みのタネだろう。

自動車分野では、消費税増税前の駆け込み需要が発生した。税抜きの車両本体価格が「200万円」のクルマであれば、消費税が8%になれば負担が「6万円」も増える。自動車という高額商品では、例え数%であっても決して小さな金額ではないため、駆け込み需要が生じるのも当然だろう。

消費税は増税されるものの、自動車については減額される税金も多い

だが消費税が増える一方、自動車については“減額される税金”も多くあることを忘れてはならない。

まずは「自動車取得税」について。

2014年3月31日までに登録された小型&普通車は取得価格の「5%」だが、4月1日以降は「3%」へと減額される。また、軽自動車についても従来は取得価格の「3%」であったが4月1日以降は「2%」になる。

2014年4月、「エコカー減税」はこう変わる!

燃費基準ステッカー

また、「エコカー減税」も手厚くなるのはご存じだろうか。

エコカー減税では、各車の環境性能の達成度合いに応じて「自動車取得税」と「自動車重量税」が減税されるのだが、これまで「50%減税」であった対象車は「60%減税」へと拡大される。さらに「75%減税」であった減税車は「80%減税」へ減税率が拡大される。

ただし、今の売れ筋車種は大半が「エコカー減税対象車」であり、自動車取得税と自動車重量税が免税(100%減税)になるケースも多い。免税であればもちろん、さらなる減額はされずに消費税の増税分だけ負担が増えてしまうので、減税効果は乏しい。

以上が、自動車の購入に纏わる2014年4月1日の変更点だ。

古い軽自動車を所有しているユーザーは、増税のダブルパンチ

そして、自動車については今後も様々な税金の変更が検討されている。

まずは、マスメディアでも大いに騒がれたことから皆さんも既にご存じであろう「軽自動車税」の増税だ。

増税の内容は、1年後となる2015年4月1日以降に軽自動車を新車で購入すると、その後に納める軽自動車税が現在の年額「7,200円」から1.5倍の「1万800円」に増税されるというもの。

軽自動車は、公共交通機関が未発達な地域においては日常生活の移動手段として機能している。都市部に住んでいれば「シルバーパス」によって安価に移動できるはずの高齢者の方が、郊外のために通院や買い物のために仕方なく軽自動車を使っている、というパターンも多いであろう。

そんな高齢者の方にまで増税を課すのは許されない話ではあるが、軽自動車税の増税が税制改正大綱に盛り込まれた。さらに、2016年4月1日以降には、最初に届け出をしてから13年以上が経過した古い軽自動車については「1.2倍」の軽自動車税が課される。

ちなみに、現時点でも古いクルマの増税は自動車重量税に適用されている。小型&普通車は、エコカー減税車を除くと車両重量500kg当たり年額4,100円が基本だが、13年を超えると5,000円、18年を超えると6,300円に増税されてしまう。

軽自動車も同様で、エコカー減税車を除くと1台当たり年額3,300円が基本なのに、13年を超えると年額3,800円、18年を超えると4,400円に増える。

なぜ「自動車重量税」は廃止されないのか

古いクルマを増税する根拠は、「環境性能に優れた車種に代替えさせる」ことだが、クルマは生産/流通/使用/廃棄のすべての過程において、資源や化石燃料を消費して二酸化炭素を排出する。

本来であれば古いクルマを大切に使うことも立派なエコロジーと考えられるのだが、そこは全く考慮されていない、というのが現在の旧車に対する増税のあり方なのである。

そして何より、13年、あるいは18年を超えたクルマのユーザーがどのような人達なのか、政治家や官僚は少しでも考えたことがあるのだろうか。

ホンダの軽「ステップバン」[1972-1974]と初代「ホンダライフ」[1971-1974]

いわゆる「ヒストリックカー」所有者は、実際にはごく一部にすぎず、大半のユーザーは古い愛車を仕方無く乗り続けている。これでは「困っている人達を、さらに困らせるのが今の自動車税制」と捉えられても仕方が無いだろう。

2015年10月1日に消費税が10%になった段階で、自動車取得税を廃止することも検討されているが、これは“当たり前”だ。

そもそも、自動車取得税と自動車重量税は道路建設などの費用に充てるための「道路特定財源」として設けられたが、この制度は2009年に既に廃止されている。

つまり、自動車取得税と同重量税は課税する根拠をすでに失っているにも関わらず、税目だけが残って吸い上げた税金を都合良く使っている。そのため、本来であれば自動車取得税だけでなく「自動車重量税」も廃止しないと筋が通らないのだ。

以上のように、税金に関する問題は山積みである。

直近の2014年4月1日に行われるのは、消費増税/自動車取得税の減税/エコカー減税率の拡大だが、それ以降も消費税率10%を含めて増税が続く。

注意したいのは、先に述べた軽自動車、特に旧い軽自動車ユーザーへの増税だ。

社会福祉、高齢者福祉の観点に立てば減税すべきなのに、現実はまったく逆になる。政治家や官僚は、物事を霞ケ関だけでは考えず、日本のさまざまな地域、いろいろな人達に目を向けるべきだ。アベノミクス効果、賃金のベースアップを受けられるのも、ごく一部の人達にすぎない。

メーカーも、ロビー活動をもっと積極的に行って欲しい。車両価格が130~160万円に達する高額の軽自動車販売ばかりに力を入れず、軽自動車の本当の使われ方を政治家や官僚にアピールすべきだ。

維持費の安い軽自動車の本当の価値は、新車時ではなく、長く使われたり、安価な中古車になった時にこそ発揮される。

多くのユーザーにとって、軽自動車が「日常生活のライフライン」であることを、福祉に直結した移動手段であることを、メーカーが忘れたのでは困る。軽自動車を数多く売って儲けるなら、その責任も果たすべきだ。

今、困っている軽自動車ユーザーを守れるのは、その商品を扱う自動車メーカーしかないのが現状なのだから。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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