サーブ 9-3 スポーツエステート 試乗レポート

  • 筆者: 松下 宏
  • カメラマン:原田淳
サーブ 9-3 スポーツエステート 試乗レポート
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サーブ“9-3” 2008年モデル始動

サーブはボルボと並ぶスウェーデンの自動車メーカーで、航空機メーカーをルーツとする。現在ではヨーロッパGMの傘下にあり、オペルの基本コンポーネンツを使ったクルマ作りをしている。

ただ、単にオペルの姉妹車のようなクルマを作るのではなく、サーブならではの拘りあるクルマ作りをしている。9-3と9-5の2車種をラインナップするだけで、生産台数が極めて少ない自動車メーカーだが、それでも立派に生き残っている理由は、そんな所に要因が隠されているのだろう。

今回試乗した9-3 スポーツエステートはサーブのエントリーモデルに位置付けられるクルマで、Cクラスや3シリーズ、A4などと同じセグメントにある。現行モデルがデビューしたのは2003年1月で、モデルサイクルはやや長期化しているが、08年モデルではフロント回りのデザインを変更し、エンジンの動力性能を向上させ、バリエーションを整理するなどの改良を行った。

厳つさを増したフロントフェイスは、よりサーブの存在感を強調

2008年モデルでは外観デザインに手が加えられ、フロント周りの雰囲気が大きく変わった。クロームメッキの縁取りによって3つに分割されたフロントグリルはサイズが大きくなり、サーブならではの存在感を増す形になった。これと連続するヘッドライトも形状が新しくなり、フロントバンパーの形状変更と合わせて全体にダイナミックなイメージを強めている。

フロントはほかに、ボンネットフードを盛り上げる形で新しいプレスラインが加えられるなどの変更を受け、アルミホイールにも新デザインが採用された。また、リアバンパーも形状が新しくなった。アイスホッケーのスティックをイメージしたというテールランプのデザインはそのままだ。

インテリア周りのデザインは2007年モデルの段階で改良が加えられたこともあって、今回はカラーが変更された程度にとどめられた。インパネの中央部分を運転席側にやや傾けて配置するドライバーオリエンテッドのデザインは、サーブのアイデンティティーとして、今回の9-3にも受け継がれている。エアロにはワンセグ対応のカーナビが標準装備されている。蝶が羽を開くように展開するカップホルダーのデザインはサーブならではのものだ。

サーブならではの拘りを端的に示すのが、センターコンソールに設けられたイグニッションキーのシリンダーだ。ほとんどの自動車メーカーはステアリングコラムか、あるいはインパネ面にキーシリンダーを設けているが、サーブは航空機の設計から得られたノウハウに基づいて独自の位置を維持している。これは9-3と9-5共に設けられている特徴である。

サーブはやはり“ターボ” 高い実用性とパワフルな走りに改めて好感を持つ

メカニズム関係の変更は、エアロに搭載されるV型6気筒エンジンが改良を受けて、わずかながら動力性能が向上したことと、新たにスポーツモードを選択する機能が加わったことがポイント。

9-3には3種類のエンジンが搭載されていて、リニア用の2.0Lの低圧ターボが175ps、ヴェクター用の2.0Lの高圧ターボが209ps、エアロ用のV型6気筒2.8Lターボが255psを発生する。リニア用の低圧ターボは自然吸気エンジンにも似た滑らかな吹き上がりと燃費の良さで、高い実用性能を発揮する。

エンジン性能に関してはエアロ用のV型6気筒ターボが5psほどパワーアップしただけなので大きな変更ではないが、インパネ上のスイッチによって、走りモードを変更できるようになったのが大きい。

エアロ用のエンジンは従来からパワフルな実力を発揮する。FFの2輪で駆動力を伝えるので、発進時に大きくアクセルを開くと、ホイールスピンを起こしながら加速する。トラクションコントロールによってスピンはすぐに収まるが、パワフルさを感じさせるのがエアロ用のエンジンだ。

インパネに設けられたスイッチを押してスポーツモードを選択すると、エンジン回転を高めにまで引っ張ってから変速していくパターンに変わるため、より元気の良い走りが可能になる。2.0L車は5速ATだが、エアロには6速ATが組み合わされていて、より優れた変速レスポンスを実現する。

足回りはヨーロッパ車らしい硬めのチューニングで、コーナーでの安定感は十分。ややゴツゴツ感を感じるシーンもあったが、安定性の高い足回りは好感の持てるものだ。

メーカーの本質を知ってこそ“サーブ”を理解できる

エアロに設定される価格は500万円台中盤から後半。充実した快適装備や安全装備などを備えているものの、ちょっと高めの印象を受けるのは確か。ただ、販売台数の少ないクルマであることを考えると、他の輸入車と比べて頑張っている印象も強い。セダンのリニアなどは368万円(エステートは388万円)の価格設定なのだ。

リニアではカーナビはオプション設定になるが、ESPやサイド&カーテンエアバッグなどの安全装備は標準で装備されているし、快適装備もデュアルゾーンフルオートエアコンやインダッシュ6連奏CDチェンジャー付きのオーディオなどが標準。必要な装備は基本的に標準となるから、同クラスで競合する輸入車と比較しても納得モノの価格となる。

サーブは、メーカーのクルマ作りの姿勢に共感して買うクルマである。航空機メーカーに由来する独自のクルマ作りなど、共感を強く感じるユーザーが選べば良いと思う。そのように考えたら少々の価格差は問題ではなくなるだろう。

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松下 宏
筆者松下 宏

自動車そのものはもとよりクルマに関連する経済的な話題に詳しい自動車評論家。新車、中古車を含めてユーザーサイドに立った的確な購入アドバイスを語ることで定評がある。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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