ジャガー、「Eタイプ・ライトウェイト」プロトタイプを公開 -“幻の6台”の生産を開始-
最高水準のスキルをもつジャガーの職人が手作業で製造
ジャガーは2014年5月に、6台の「Eタイプ・ライトウェイト」を新たに再生・生産すると発表したが、9月1日、「Eタイプ・ライトウェイト」のプロトタイプを公開した。
製造は、ジャガー・ランドローバーに新設されたスペシャルオペレーションズ部門の事業ユニットであるジャガーヘリテージチームが担当する。
6台は、1964年に製造された最後の「Eタイプ・ライトウェイト」のオリジナル仕様に忠実に従い、その誕生の地、英国コベントリーにあるジャガーのブラウンズレーン工場にて、手作業で作られる。ヴィンテージカー競技用車両として販売し、ヒストリックモータースポーツでの使用を目的とした国際自動車連盟(FIA)の認証を取得することも可能だ。
1963年2月に始動したプロジェクトで生産されなかった「幻の6台」がいま…
新たに製造されるのは、1963年2月に始動した「スペシャルGT Eタイプ」プロジェクトにおいて、当初計画されていた18台のうち、生産されなかった「幻の6台」である。アルミニウムボディの「Eタイプ・ライトウェイト」は12台完成していたが、残り6台に関しては割り当てられた車体番号が現在まで使用されずにいた。今回製造される6台には、これら「Eタイプ・ライトウェイト」のオリジナル車体番号がつけられる。
「Eタイプ・ライトウェイト」の再生・生産プロジェクトを始動するにあたり、ジャガーヘリテージチームは、最高水準のスキルと経験を持つ多くの才能豊かなエンジニアや技術者を、社内の様々な部門から召集している。
この再生・生産プロジェクトには膨大な専門的ノウハウや注目が注がれた。新しく作る6台は、当時の仕様に忠実な正真正銘本物の「Eタイプ・ライトウェイト」であるというだけでなく、ジャガーのリソースを最大限活用し、最高の品質基準に従って製造される。
6名の選ばれたオーナーは、希少価値の高い車を手にするということになる。ブラウンズレーン工場にて手作業で作られる全く新しい「Eタイプ・ライトウェイト」は、オリジナルの12台と同様の魅力を備えている。
ジャガー・ヘリテージ・ビジネス担当ディレクター、デレク・ウィール氏のコメント
「このたび、ブラウンズレーン工場に新しいワークショップがオープンし、お客様の車のレストアやアフターサービスができるようになりました。ジャガー・ヘリテージ・チームは、ヴィンテージカー競技用車両『Eタイプ・ライトウェイト』を、細部まで忠実に再現します。こうした車作りは、チーム内に独自の技術があることの証となります。同じ技術を、現存するジャガーのクラシックカーのお客様のためにも使えるようになったことに、ジャガー・ヘリテージ・チーム一同、心を躍らせています。」
「Eタイプ・ライトウェイト」概要
<ボディ>
「Eタイプ・ライトウェイト」の核となるコンポーネントはアルミニウム製ボディシェル。量産型「Eタイプ」に使用していたスチールの代わりにアルミニウムを採用し、標準モデルと比べ、114キロ(250ポンド)もの軽量化に成功している。
同車のオープントップの2シーターボディを構成するコンポーネントについては、最高品質でありながら、これ以上ないほど忠実に再現するために最新のスキャン技術を用いて、ボディシェルの内外をデジタルマッピングするなど、今日における先進技術を投入している。
また、エンジニア・チームは、「Eタイプ・ライトウェイト」プロジェクト用に、ジャガーの新型車の開発段階で使用した型式が記載されている「グレイブック」を制作。この社内文書により、ボディシェルの組み立てと仕上げにおいて求められる品質基準を規定し、新しく製造される6台の「Eタイプ・ライトウェイト」の品質における一貫性を確保している。
<エンジン・パワートレイン>
オリジナル仕様の「Eタイプ・ライトウェイト」は、「XK」の直列6気筒高出力エンジンを搭載していた。チェーン駆動式ダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)にアルミニウムヘッドと半球型燃焼室を備えたこのエンジンが最初に登場したのは、「XK120」に搭載された1948年まで遡る。
このエンジンが、1950年代に「Cタイプ」と「Dタイプ」に搭載され、ル・マン24時間レースで5度の勝利に導いた。「Eタイプ・ライトウェイト」用エンジンは、「Dタイプ」に搭載され1957年にル・マン24時間レースで優勝を飾った3,868cc(236cu in)のエンジンをベースにしている。また、類似の大バルブを備えた「広角」シリンダーヘッドを使用し、「Dタイプ」の鋳鉄製ブロックに代わってアルミニウム製ブロックを導入しフロントホイールへの重量を大幅に削減した。これは、圧入鋼製ライナーとともに、昨今の車両と比較しても大きな特徴といえる。
「Dタイプ」から受け継がれたもうひとつの大きな特徴は、ドライサンプ式潤滑システムだ。このシステムはスカベンジポンプを使ってオイルパンからオイルを集め、ボンネットの下にあるオイルタンクに戻すもの。これにより、高速コーナリング中のオイルの片寄りを解消し、エンジンのベアリング類を痛めるリスクを排除するとともに、より大量のオイルを使用することが可能になる。
圧縮比は10:1で、ウェーバー製の3連キャブレター45DCO3を装備。これらは、ルーカス製の機械式燃料噴射装置に加え、ジャガーが「Eタイプ・ライトウェイト」用に認証したもので、追加装備オプションとしてユーザーに提供する予定(Car Zeroには装着)。エグゾーストマニホールドはスチールを加工したもので、排気ガスをツインパイプの中に誘導した後、センターサイレンサーボックスを経由して後部へ流し、最終的に排気システムはポリッシュ仕上げのツインテールパイプで完結する。
キャブレターとフューエルインジェクション、どちらの仕様でも馬力は300bhpを超える。トルクは4500rpmで380Nm(280lb ft)を発生し、比較的低い回転域からクイックに加速する。これは、ジャガーのレーシングエンジンの伝統的特徴でもある。
電気系統には12ボルトのマイナスアース仕様が使われ、エンジンは現代的なイナーシャ式スターターモーターの恩恵を受けている。ラジエーターは、オイル用、冷却水用ともにアルミ合金製で、冷却剤用にアルミニウム製エクスパンションタンクを備えている。燃料タンク内は安全性を考慮し、メッシュで埋められている。
当時の「Eタイプ・ライトウェイト」と同様に、低慣性の軽量フライホイール、シングルプレートクラッチ、そしてクロスレシオのジャガー製4速フルシンクロメッシュ式マニュアルギアボックスを通じて、パワーが路面に伝達される。バラエティに富んだ最終ギア比が選択でき、どれもPowr-Lokリミテッドスリップディファレンシャルを装備しているが、標準のギア比は3.31:1となる。
<デザイン>
1960年代のジャガーに使用していたレザーと同じ仕様で生産される、ジョナサン・コノリーが供給するコノリーレザーを、競技タイプのアルミニウム製バケットシートの座面のトリムに採用している。センターコンソールのカバーリングにも本革レザーを使い、トリムカラーは7色から選択できる。
あらゆる面で軽量化が求められるGTカーのサラブレッドにふさわしく、インテリアトリムは最小限にとどめているが、ユーザーの要望に応じてさらにトリムを施した車にすることも可能。
プロトタイプ「Car Zero」のインテリアの大部分(フロアパネル、シル、リア部分)は、アルミニウムのボディワークを強調するために、意図的に塗装をしていない。
デザインスタジオは、お勧めのエクステリアカラーとして、「カーマインレッド」、「オパールセントグレーメタリック」、「シルバーメタリック」、「オパールセントブルーメタリック」、「ブリティッシュレーシンググリーン」、「オ-ルドイングリッシュホワイト」という、6色のヘリテージカラーを選定したが、カラーやトリムにはその他にも多彩な選択肢が提供される。
「Eタイプ・ライトウェイト」主要諸元
全長×全幅×全高:4,453mm×1,700mm×1,181mm/エンジン:アルミニウム製6気筒シリンダーブロック、広角シリンダーヘッド、ドライサンプ式潤滑システム、低慣性軽量フライホイール/総排気量:3,868cc/ボア/ストローク:88.0mm(3.46in)/106.0mm(4.17in)/バルブ:2バルブ/気筒、DOHC/圧縮比:10:1/キャブレター:ウェーバー製3連キャブレター45DCO3/最高出力:340hp/253.5kW@6500rpm/最大トルク:380Nm/280lbs ft@ 4500rpm/トランスミッション:ジャガー製4速フルシンクロメッシュ式(クロスレシオ)ギアボックス
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