メルセデス・ベンツ Sクラス 海外試乗レポート(3/3)

  • 筆者: 松下 宏
  • カメラマン:ダイムラー・クライスラー日本株式会社
メルセデス・ベンツ Sクラス 海外試乗レポート
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フラッグシップカーに相応しい豪快かつスムーズなフィーリング

往路の270kmに加えて、翌日はサンモリッツからイタリアのコモ湖まで130kmほどの距離を走った。この間にS350、S500、S500Lの3モデルに試乗することができた。新型Sクラスにはほかに3.2LのディーゼルターボやV型12気筒の6Lエンジンが搭載されている。6Lエンジンを搭載したS600は遅れて登場し、来年にも日本に導入される予定だ。

S350は従来のS350に搭載されていたV型6気筒3.8LのSOHCではなく、すでにEクラスなどに搭載されているV型6気筒3.5LのDOHCで、パワーは大きく向上した200kW、またトルクはより幅広い回転数域で350N・mを発生する。このエンジンが7Gトロニックの7速ATとの組み合わせによって気持ちの良い走りを示す。新しいS350は装備や仕様の充実化もあって車両重量が100kgほど重くなり1,800kg台に達しているが、その重さを感じさせない走りが可能である。7Gトロニックとの組み合わせは絶妙ともいえるもので、滑らかで力強い走りを可能としている。

S500系に搭載されるV型8気筒エンジンも新開発の5.5Lで、排気量アップとヘッド回りのDOHC化によってこちらも動力性能を大きく向上させ、285kW/530N・mの圧倒的なパワー&トルクを発生する。もちろん7速ATの7Gトロニックとの組み合わせだ。

スタンディングの状態からアクセルを全開にして発進すれば、文字通り豪快そのものの加速フィールが味わえるし、高速道路でクルージングに入れば余裕十分な静かでスムーズな走りが楽しめる。時速100kmでのクルージングではエンジン回転数はわずか1,500回転程度。静かな走りも当然で、レクサスよりも静かな印象だ。また燃費にも好影響を与えるのは間違いない。

足回りは電子制御サスペンションのAIRマテックサスペンションが全車に採用されている。ドライバーが好みに応じてスポーティなSモードと快適なCモードを選べるような設定だが、全体を通じてSモードでの走りがバランスに優れた心地良いものだった。

ワインディングなどではロールを抑えた走りが可能だし、荒れた路面などもうまくいなしてショックを吸収し、乗り心地を悪くしないのだ。Cモードでは柔らかめの乗り心地で通常の路面では良いが、路面が荒れたところでは逆にショックを感じる印象だった。

サスペンション以外にもシャシー性能に優れるのがメルセデス・ベンツSクラスならではの特徴だ。ブレーキはコストの高いセンソトロニックブレーキシステムは採用されなかったが、踏んだときに確かな剛性感を感じさせ、ワインディングで相当に酷使しても簡単にはフェードしないものだった。また高速道路などで確かな手応えを感じさせるステアリングのフィールも十分に満足できるものだ。

インテリア回りではコマンドコントローラーの操作性が気になるところ。今回の試乗では走りを中心にしたので、コントローラーの操作性を入念にチェックすることはできなかったが、マニュアルを見ずに直感で操作でもけっこう何とかなる印象。使い勝手は相当に練り込まれたようだ。

試乗では試すべくもなかったが、今回のSクラスではプロセーフという総合的な安全システムを採用したのが大きなポイント。予見的ブレーキアシストPLUSなどによるプレセーフから衝突安全、事故後の緊急通報なども含めたボストセーフまで、総合的なシステムを作り上げている。特にプレセーフの部分には力が入れられており、メルセデス・ベンツは安全でまた新しい地平を獲得したといえる。今後、このSクラスはラグジュアリーカーのベンチマークとして世界中の自動車メーカーからターゲットにされるのは間違いない。来年にも登場する次期セルシオも、このSクラスを意識した対応をせざるを得ないはずだ。

日本では間もなく発表されることになるが、ドイツでの発表から間を置くことなく日本でも発表されるのは、メルセデス・ベンツがそれだけ力を入れていることを示すものでもある。一般のユーザーが簡単に買えるクルマではないが、大いに注目されるクルマであるのは確かだ。

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松下 宏
筆者松下 宏

自動車そのものはもとよりクルマに関連する経済的な話題に詳しい自動車評論家。新車、中古車を含めてユーザーサイドに立った的確な購入アドバイスを語ることで定評がある。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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